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「マジすか学園2.5」第9話

第9話「マジを舐めるな」

「何だ、てめえは!」

何も考えていない、ただ興奮に身を任せただけのナン女の1人が殴りかかった。
その拳が空を切ると、次の瞬間には逆に殴り飛ばされている。
頬を押さえて倒れるナン女、殴った本人、そして、寒ブリ、とそれを見ている者の目は動いた。
強い、突然現れた、顔は寒ブリ、どこの高校か分からない。
一気に与えられた情報に処理が追いつかず、ただポカン見つめるしかなかった。
ボスですら、寒ブリと少女の顔を何度も見比べている。

「この野郎!」

今度は3人同時、目の前で1人が倒された光景による恐怖を拭うかのように声を上げて走り出した。
冷静に少女は3人を待ち構える。
1人目、2人目、の拳を紙一重でかわす。
そして、3人目は相手の拳に合わせてカウンターのボディを突き刺した。
残った2人が、前のめりに倒れる人間に怯んでいるうちに、踏み込んで、殴る。
1人ずつ順番に、鈍い音と共に倒れる。
あっという間に、少女の周りに4人の少女が倒れている、という絵が出来上がった。
流石にこれに続いて飛びかかる者はいなかった。

「な、何で……お前……」
「来いって言ったのはあんただろ?」

ただ1人、他の者よりいくらかその光景に慣れていたツリが、始めに口を開く。
それを見て、固まっていたチームフォンデュの4人も口が動く。

「う、嘘だろ……ホントに寒ブリじゃねえか」
「マジにそっくりかよ……」
「や、やべえ! 寒ブリ死んじまうのか!?」

その感想は、まずは顔のことしか出てこない。
話に聞いていたし、写真も見たが、実物を見るのは衝撃が違う。
完全に瓜二つだ。

「お、俺だ……本当に」

それは寒ブリ本人も認めるしかなかった。
面白くもないタレントと似ていると言われて認めたくないだとか、そんなレベルでは無い。
気持ち悪さすら覚えるほど。

「どうやら……人違いだったってのは本当らしい」

服装、そして一撃で相手を倒すほどの強さ。
話に聞いていた本当の敵討ちの相手で間違いない。
このときボスには、勘違いだったという恥は少しも無かった。
まさか本当に写真で見ても間違うほどの人間がいると思う方がおかしい。

「用があるのはあたしだろ……こんなにまで痛めつける必要は無かったはずだ」

傷だらけの5人を見て、少女はボスを睨みつけた。
向けられた怒りをかわすように、フン、とボスはそれを鼻で笑った。

「確かに『必要』は無かったね。でも、ストレスの発散にはなったよ」

敵討ち、という名目はもはやボスにとってどうでもいい。
喧嘩なんて所詮は暇つぶし。
相手が自分より遥かに弱いとなれば、それはもう暇つぶしにすらならない。
時間を無駄に消費したことにたいする八つ当たり。

「許さない……」

少女は静かに呟くと、ポケットから黒い髪留めを取り出した。
今朝、ツリが見ていた時と同様にそれを、バンテージ代わりに右手に巻く。
余裕で笑うボスを静かに見据えながら、拳を構えた。

「来いよ」

ボスがそう言い終わると同時に、少女はボスに向かって走り出した。
足を踏み込んで、構えた右手を打ち出す。
その拳がボスの顔面を捕らえる直前、先に痛みを感じたのは少女だった。
ボスの長い脚による蹴りが、腹部に突き刺さる。

「うっ」

苦痛の声が漏れる。
それを聞いてか聞かずか、ボスはさらに1発、2発、と腹部へ膝蹴りを入れる。
痛みで倒れようとする上半身を無理やり引き上げると、今度は顔面への拳。
1発では終わらせない。
左手で相手を引き寄せ、右手で2発、3発、何度も殴る。
コンクリートの床を叩く足音に混じって鈍い音が響く。

「おらあ!」

掴んでいた手を離してボスが拳を振りぬくと、少女は大きく後ろへ倒れた。
あっという間だった。
4人を倒した少女より、さらに圧倒的に強い。
チームフォンデュの5人は絶句した。
当然勝ち目は無いほどの強さだとは思っていたが、ここまでの相手だとも思っていなかった。
何の関係ない少女を、勝手な争いに巻き込んでしまっただけだった。

「大したことねえなー。ラッパッパだっけ? それ連れて来いよー」

軽い口調とは逆に、ボスは倒れた少女にさらに蹴りを入れる。
その度に、少女の口から苦悶の声が漏れる。
そしてその蹴りは、少女からその声が聞こえなくなるまで続いた。
散々に蹴った後、振り向いたボスに、5人は恐怖を覚えざるを得なかった。
本気でヤバい、と。

「分かったでしょ? さっさとウチのスカーフつけて、この場は終わりにしよ?」

反論できるわけが無かった。
ボスの笑顔に見えるその表情は、口角が上がっているだけで、目の奥は笑っていない。
差し出されたスカーフを手に取るしかない。

「そうそう。始めから素直にしとけばいいんだよ」

悔しさは当然ある。
しかし、それ以上に、今は完全降伏してこの場を終わらせるしかない、と5人とも悟っていた。
寒ブリは、奮うことのない拳を握りしめた。

(ちくしょう……)

こぼれた涙で傷口が痛む。
自らの赤いスカーフをほどこうとする。
その時だった。

「……負けない」

ジャリ、という足音と、小さな声がボスの後方から聞こえた。
ボスが振り向いた先には、少女が立ち上がっている。

「タフな奴だな……でも、今立ち上がるってのは、そのタフさを無駄遣いしてるだけだ」

フラフラの少女をボスは冷たく睨みつけた。

「もういいよ! 止めてくれ!」

これ以上の抵抗は無駄でしかない。
チームフォンデュの5人も目を塞ぎたい気持ちであった。

「人のマジを馬鹿にする……てめえに負けるわけにはいかねえんだ」

再び少女は、力強く握った拳を顔の横で構えた。
その目はまだ、怒りに燃えていた。

「どうなっても知らないからな」

ボスの鋭い蹴りが少女の顔面めがけて飛んだ。
言葉とは裏腹に少女は冷静に足を一歩引いてその蹴りをかわす。
間髪入れず繰り出された左フックは、少女の鼻先をギリギリで通過する。

「避けてるだけか!」

一歩踏み込んでの右フック。
その身長差で、上から覆いかぶさるほどの迫力。
今度は引かなかった。
逆に踏み込み、左手でそれをガードする。

「なに!?」

お互いが踏み込んだことにより、両者の距離は縮まっていた。
瞬間的にリーチの差が埋まる。
拳の届く距離。
少女の右肩から拳が打ち出された。

「おらあ!」

右拳がボスの左頬へめり込む。
そのまま拳が振りぬかれると、ボスの大きな体は後ろへと飛んだ。
倒れたという表現では足りない、後ろへと吹っ飛ばされたのだ。

「うぐっ……」

うつ伏せに倒れたボスは驚愕の表情で少女を睨んだ。
口元からは血が流れ、殴られた頬にはすでにあざが出来ている。
立ち上がろうとするが、中々立てない。
言うことをきかない体に対して、今度は焦りの表情が浮かぶ。

「す、すげえ……」

寒ブリの口から声が漏れる。
ボスは立ち上がるのもやっとの状態。
たったの一発であそこまでのダメージを与えるほどの威力。
あんなにフラフラだったというのに、どこからその力が湧いてくるのか不思議にすら思える。

「てめえ……やりやがったなあ!」

怒りの声と共に繰り出されたボスの拳は少女によって受け止められる。
ダメージで冷静さを失ったのか、大振りな攻撃、受けるのは容易い。
がっしりとボスの拳を掴んだまま、少女は振りかぶる。
すかさずボスは顔をガードした。
わずか数十秒前の、顔面めがけて飛んでくる拳を思い出す。

ズドン。

拳が突き刺さったのは、がら空きになったボスの腹部。
体がくの字に折れる。
余りの痛みに顔をガードしていた腕が下がる。
再びがら空きになるのは、頭部。
もう一度少女の拳がボスの顔面めがけて振りぬかれた。

「マジを……舐めるな」

そのまま大の字に倒れたボスは、もう起き上がれなかった。
それを見て少女は、フラッとその場に座り込む。
すぐにチームフォンデュの5人が駆け寄った。

「すまねえ、私のせいでこんな目に遭って」

息を切らしながらも謝る少女に、寒ブリは首を振った。

「何言ってんだよ! 謝るのはお前を巻き込んだうちらだろ!」

傷をいたわるように、少女の頬に手を当てると、少女もまた寒ブリの手を握る。
自分を見つめるその眼差しは力強く、同じ顔であるはずなのに、自分とは全くの別人に思えた。

「さ……ここを出よう」

お互いに肩を貸しあい、何とか立ち上がる。
ボロボロ、だが、まだ歩ける。自力でここから出られる。
ようやくチームフォンデュ、そして少女に、安堵の表情が見える。

「ちょっと待て」

その声に6人の足はピタリと止まる。
恐る恐る振り返ると、そこには、取り巻きにいたわられ、苦しそうに身体を引き起こしたボスがいた。
流石にもうお互い戦える状態では無い。

「何だ、まだなんかあんのかよ」

もう喧嘩は無い、という状況を見てか、ツリは少し強気だった。
そんな様子を少し笑いながら、ボスは自分を倒した少女を見た。

「名前、教えてくれ。こんな強い奴の名前を知らないまま逃がすわけにはいかねえ」

これだけのことをしたにもかかわらず、思えば、誰も少女の名前を聞いていない。
初めて名乗る少女に、チームフォンデュ5人も含め、その場の全員が興味津々だった。
少し黙った後、少女は強い口調で名乗った。

「……パルだ。私の名前は、パルだ」

それを聞いたボスはニヤリと笑うと、満足したようにもう一度自分の身体を倒して天井を見上げた。

「……覚えておく」

チームフォンデュの壮絶な一日が、ようやく終わった。

続く

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
そして、訪問者数7万人突破ありがとうございます。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

No title

明けましておめでとうございます!(少し遅いかもですが)
今年がウロマムさんにとってより良い1年となりますように心から祈念致します。

パル、強い…絶句ものです。(笑)
全盛期の大島優子とどっちが強いんだろうな~とか考えつつ読んでました。
さて、これからパル以外のマジすか3の登場人物の登場はあるのか?
それを個人的には楽しみにしています。

Re: No title

>凛九郎さん

コメントありがとうございます。
作中では見られなかった優子さんの本気タイマンみたいですね。
前田やパルとも互角以上の戦いでしょうね。
マジすか3からまだ登場させたいキャラもいるのですが、中々難しいですね。
つじつまだとか現実性だとかを深く考えずに書きたいと思っています。

No title

熱くて強い、でも優しいパルに脱帽です。今回も楽しく読ませていただきました

Re: No title

> 鷹紫さん

コメントありがとうございます。
中々更新できませんが、頑張ります。

No title

面白い早く続きが読みたいです。

Re: No title

> バーさん

コメントありがとうございます。
早く更新できるように頑張ります。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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