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「マジすか学園2.5」第8話

第8話「平らな天秤」

街中を走るツリは半ばパニックだった。
寒ブリを救うには彼女を探さなければならない。
しかし、そうすれば、今朝の恩人である彼女をナン女に差し出す形になる。
どうしていいか分からなかった。

「見つかるわけないよな……」

向かうは今朝の出来事が起きた場所。
正確に言えば、その近くの公園へ向かっていた。
見つかるわけない。
どこの誰かも知らない人間を広い街から見つけ出すなんて不可能だ。

「でも、見つけないと寒ブリが……」

相反する気持ちがぶつかり合う。
息が切れる。
その精神状態が余計に自分を疲れさせているのが分かった。
公園に差し掛かったところで、ツリは立ち止まった。
入り口近くのベンチに、見覚えのある少女が見えたからだ。
見なかったことにしようとも思った。
しかし、確実に、それは今朝の彼女なのだ。
ツリはゆっくりと近づいていった。

「あんたは……朝の……?」

足音に気付いて、ベンチに座る彼女はツリを見上げた。
そして息を切らすツリを見て、疑問の表情を浮かべた。

「あ、あのー、今朝はありがとう。……でさ。いやー、今からちょっとついてきてくれないかな?」

少女は黙ったままだった。
呆れたような溜息をついて、ツリを視界から外すように再び前を向いた。
ツリは慌てて、気を引こうと声を出した。

「ちょっとでいいんだよ、すぐそこの廃倉庫。今朝のことで、ホントにちょっと、揉めちゃってさ」
「今朝のことはもう終わったことだ。知らない」

何となく雰囲気で分かってはいたが、それでも自分を助けてくれたということを忘れるくらいに、彼女の態度は冷たかった。
まるで自分とは関わってほしくないようだった。
このままでは無理だ、とツリは正直に話すことに決めた。

「えーと、分かった、簡潔に言う。お前にそっくりな奴がいるんだ。そいつがお前と間違えられて報復されてる」
「そっくり?」

その突拍子もない話には、流石の彼女も、もう一度ツリに向き直って聞き返した。
ツリが頷くと、少女は少し間を持たせた後、首を振った。

「事実だとしても、もう一度言うけど、知ったことじゃない」
「ご、誤解を解いてくれればいいんだ」
「私はやることがある。そんな余裕はないんだ」

公園で座っているのに余裕が無い、という彼女の言葉が引っかかったが、ツリにとってはそれどころではない。
来てくれなければ困る。
しかし自分でも無茶を言っていることは分かっていた。
騙すような形にはなるが、どうにか、どうにかして連れて行かなければならない。
そんな考えを巡らせるツリに追い打ちをかけるように少女は続けた。

「要は、代わりにやられて来いってことだろ? そんなのにわざわざ行く奴はいねえ」

ツリの心は折れた。
大体の状況を少女は察している。
言いくるめるもくそも無い。

「や、やっぱり無理か……」

ツリはため息をついて、うなだれた。
かと言ってそのまま帰るわけにもいかず、しばらく立ち尽くした。
お互い黙ったままの時間が流れる。
そんな様子を見て、少女は呆れたように言葉を投げかけた。

「……大体、お前はその仲間を助ける気があるのか?」

なんだと、とすぐに言い返そうとしたが、声にはならなかった。
少女がさらに続けた言葉がツリの声を押し返したからだ。

「さっきから歯切れの悪い頼み方して。そんなに大事な仲間ならあたしを殴ってでも連れて行こうとするのかと思ってたよ」

少女の言葉は図星だった。
何の反論も出来ない。
ツリは唇をかみしめた。

「大した仲間じゃないんだろ?」

思わずツリは掴みかかった。
その言葉だけは黙って聞いているわけにはいかなかった。
頭の理解と行動がちぐはぐだったが、それでも抑えきれなかった。

「ふざけるな! 寒ブリは大事なチームの仲間だ! ダチだ!」
「じゃあどうしてだ? 何が引っかかってる?」

ツリは一瞬、迷った。
その本心を口にすれば、自分の言葉が軽くなりそうだったからだ。
それでも、言うしかなかった。

「お前に……悪いからに決まってんだろ」
「えっ?」

ツリのその答えに、少女は目を丸くした。
見通したかのように問い詰めてはみたが、彼女にとってそれは意外でしかなかった。
少女の胸倉を掴みながら、ツリは続けた。

「考えれば考えるほど、もうお前を赤の他人として見られねえんだよ! お前は、助けてくれた恩人だ!」

今朝、偶然にも出会ったばかりの人間と、ずっと一緒に行動してきた友人を天秤にかけて、傾かない。
そんな自分にツリは戸惑っていた。
寒ブリは大切な仲間であるはずなのに、目の前の他人を見捨てられない。

「どうすりゃいいんだよ、くそ」

少女が口を開く前に、ツリは掴んでいた手を離すと、その場から走り去った。
その後ろ姿を少女は黙って見つめていた。
そして小さく呟いた。

「チームの仲間……」


廃倉庫には、すでに全身傷だらけの姿になった、どっち、年増、レモンがいた。
ナン女も何人か怪我をしているが、ボスは全くの無傷。

「いてえ……やっぱ無理か」
「相手多すぎんだろ」
「流石に俺の頭も割れるぜ……」

寒ブリ救出のために乗り込んだ3人であったが、多勢に無勢、おまけに喧嘩も弱い。
あっという間に返り討ちの状態。
それでも倒れない。
寒ブリが半分、泣いているような声で言った。

「お前ら、弱いんだからもう逃げろよ!」
「人のこと言えねえだろ。お前こそ寝てろよ、立ち上がるな」

4人全員、立っているのもやっと。
はたから見れば、これ以上の怪我を負うよりも、さっさと倒れてしまった方が賢明に思うだろう。
それでも誰一人、諦めなかった。

「ツリはちゃんと約束守ってんだぜ?」
「約束?」

3人と1人で別れる直前のこと。
どっちはツリに告げていた。

「さっき言ったんだよ。『あいつを連れてこれなかったらお前は来なくていい』って」
「なるほど。わざわざやられに来ることもねえもんな」

どっちは、ツリの煮え切らない表情も含めて、察していた。
『多分、ツリは無理やりにでも連れては来る気が無い』と。
自分がその立場であったらそうなってしまうからだ。
巻き込んで、助けてもらったのに、また巻き込む。
罪悪感でそんなことは出来ない。
そして、さらに。
『連れてこられなくても、駆けつけるだろう』とも考えた。
だから、止めた。
全滅する必要は無いのだ。

「なんだよ、助けに来たのかと思ったら、お前らもてんで強くない。何しに来たんだ?」

ボスは大きなため息をつき、けだるそうに頭の後ろを掻いた。

「もういいや。さっさとトドメ差して今日は帰ろ」

ボスの指示で取り巻きが4人に少しずつ迫る。
ジリジリと距離が狭まっていく中でも、4人は退かない。
相手を睨みつける。
覚悟を決めていた。
そのときだった。
また、倉庫の扉が開いた。
全員が一斉に扉へと目を移すと、そこには1人、影が見える。
それは4人が良く知る影。

「悪い。連れてこられなかった」

ツリが顔の前で手を合わせて謝っている。
すぐにどっちが叫んだ。

「何で来たバカ!」

来るな、と言ったのに。
1人で来てもどうにもならないと分かっているはずなのに。

「このまま逃げたら……お前らにどんな顔して会えばいいんだよ、バカ」

わざとらしく笑うツリを、4人は不安の表情で見つめた。
勝ち目は無い、どっちが言った通り、やられに来たようなものだ。
当然ボスも、たった1人の助太刀に警戒する素振りは無かった。

「何だ? また助っ人か?」
「こいつ、今朝、始めに絡んだ奴です。こいつの助太刀にあの写真の奴が現れたんですよ」
「なるほど。じゃ、お前知ってんだろ? どういうことか説明してくれ。何であいつは仲間がやられてても弱いフリしてるんだ?」

そう言って、ボスとツリの視線は寒ブリへと移った。
ボロボロになった寒ブリが、違う、と首を振る。
分かってる、とツリは頷いた。

「そいつは人違いだ。俺を助けたのは全く関係ないそっくりな奴なんだよ」
「お前もそれかよ……。じゃあ何だ? 写真に撮っても見間違う双子みてえな奴の仕業だっていうのか?」

そう言ってボスは、もう一度懐から写真を取り出した。
そして寒ブリの襟首を掴んで引き寄せると、顔のすぐ隣まで写真を近づける。
これでもか、と言わんばかりに。
全てを知っているツリに動揺は無かった。

「そうだ。そっくりな奴だ」
「……あ、そう。で、お前はどうしたいの?」
「皆を……助ける」

ツリは拳を構えた。
ボスは余裕の笑みを浮かべながら睨み返したが、ツリは目をそらさなかった。
策は無い。
本気でこの状況を1人でどうにかしようとしている。
しばらくお互い黙って睨みあった後、ボスは呆れたように言った。

「あーもう、分かった。分かったよ、はいはい」

写真を懐にしまい、寒ブリを掴んでいた右手を離す。
えっ、と周りの取り巻きは顔を見合わせた。

「今朝の件はこいつのそっくりさん。それでいいよ」
「ボス、いいんですか?」
「もうめんどくさくない? こいつらは『そっくりさん』の一点張りだしさー」
「いや、でも……」

それ以上は何も言わなかったが、やはり取り巻き達は困惑した。
確かに、写真まで用意しても『人違い』で押し切られては、いつまでたっても話は終わらない。
面倒くさいというのも頷ける。
だからと言ってこのまま許して帰してしまうのか。

(まじか、これ)

思わぬ展開にチームフォンデュ5人は目を合わせ、その瞳の奥の笑みを確認し合った。
ツリのおかげで、なんとかなる。
許してもらえる。
5人が安堵の表情を見せたその時だった。
ボスの拳が、寒ブリの顔面を襲う。

「だからこっからはただのマジ女狩りだ。スカーフ付けさせて帰してやるよ。お前ら、やっちまえ」

ボスの指示で、取り巻き達がまずは近くにいたツリ以外の4人に襲い掛かった。
すでに力尽きる寸前であった4人は成す術なかった。
羽交い絞めにされ、好き勝手に殴られる。
倒れても、容赦なく蹴りを入れられる。

「てめえ! ふざけんな!」

ツリはボスに飛びかかった。
しかし、ボスは容易くツリの拳をかわして、逆にツリを殴りつける。

「せっかく朝逃げ延びたのにな……マジ女は頭が悪い」
「くそ……!」

何度もツリは拳を奮うが、全て空を切る。
反対にボスの拳は、全て的確にツリに突き刺さる。
喧嘩の慣れ方が違う。
すぐにツリも他の4人同様、袋叩きにされてしまった。

「記念すべきマジ女狩り1回目だ。パーッと全員病院送りにしてやれ」

既に5人とも、立ち上がる力は無かった。
痛みで動けない体に、さらに痛みが襲う。
想像できる痛みの限界が今だと感じた。
それでも、蹴りが降ってくる。

「何が、チーム、だよ! 全員こんな目に遭ってバカじゃねえか!」

ぎゃはは、とボスは寒ブリたちを殴りつけながら笑った。
さっきまでの冷静な様子からは想像できないほどの笑い声だった。
取り巻き達も同様に、動けない相手を笑いながら、蹴る、殴る。
5人にとって屈辱でしかなかった。
反論したい、救いたい、思いがあっても、無力だった。
自分たちの情けなさに、涙が出た。

どうにもならない絶望の中、ふと、痛みが止んだ。

「何だ……?」

ボスが拳を止めたのは、音がしたからだ。
突然、雷が落ちたかのようなけたたましい音が倉庫内に響いた。
音の先には、先ほど自分が入ってきたはずの扉が、突っ伏している。
雷のような音は、扉が地面に叩きつけられた音だった。
さっきまで壁に張り付いていて、開け閉めできた扉が、倒れている。
扉が、蹴破られている。

「マジを……」

扉があった場所には、代わりに人影が見える。
その影は、ツリにとっては見慣れた、他の者にとっては信じられない姿。
汚れたつなぎに、髪は肩ほどまで。
しかし、顔は寒ブリにそっくり。
怒りの表情で、ボスを睨む。

「……人のマジを笑うんじゃねえ!」

続く

更新遅くてすいません。
色々と大事な時期で中々書けないです。
どうか気長にお待ちいただけたら嬉しいです。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

Secre

No title

双子…ですかねぇ?いえ、ただのそっくりさんならそれでも納得ですが

気になるのは、寒ブリのそっくりさんが一人でいる理由と一部記憶がないように見えることですかね

今回も楽しく読ませていただきました。忙しく体調を崩しやすい時期なのでお気を付けて

Re: No title

>鷹紫さん

コメントありがとうございます。

そのうち色々と明かします。
しかしながら、マジすか2と3をコラボさせたかっただけなので、大したことではないです。
強引に納得していただけたら幸いです。
お気遣いありがとうございます。
次も楽しんでいただけるように頑張ります。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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