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「スラムダンクはできないけれど」第89話

第89話「最後の攻撃」

タイムアウトでコートから選手が去っても、応援の声は鳴り止まなかった。
点を決めるのか、決められるのか、その不安を忘れるためのようだった。

「あー緊張するねー。どうすんのかなー」

点差は1点、残り50秒。
決めれば逆転。
落ち着きがないのは小嶋だけではなかった。
篠田は首をひねった。

「相手はきっちりディフェンス組んだ帝桜だからね……」

それは大島のファウルによってもたらされた状況。
十桜は全員が自陣に戻った帝桜ディフェンスを崩さなければならない。
この数本の猛追は、全て速攻からの得点であった。
セットオフェンスで帝桜から得点を奪う難しさは言うまでもない。

「もっと言うなら……そのあとのディフェンス」

残り時間から、余程のことがない限り、帝桜の攻撃時間がまだ残る。
十桜が、次のオフェンスを成功してもしなくても。
まだ一回、帝桜からゴールを守らなければ十桜に勝ちは無い。

「……ま、策としてはこんな感じです」

安西が説明を終えた。
選手はそれを頭の中で確認するように頷いた。
出来る、と自分自身に言い聞かすように頷いた。

「決まった後、戻り早く、ね」

秋元が全員に声を掛けた。
珠理奈の鼓動は高鳴った。
妙な汗が出た。
しかし、それは珠理奈だけではない。
全員だ。
コートに向かう5人も、ベンチに残る4人も、監督である安西も、全員だった。
緊張が張りつめていた。
優勝確実と言われる王者に1点差で追いすがる状況。
信じられない、想像もできなかった、状況に心臓はさらに鼓動を早めた。
血液が沸騰するように気分が高まった。

「よし……最後まで。集中しよう」

最後に円陣を組んで、都立十桜の選手がコートに出てくる。
帝桜の選手も同時だった。

「ああ、出てきた。始まっちゃうよ」

壮絶な接戦、という結果だけを残してここで試合を終えてしまいたい。
しかし1分足らずを待った先にある結果を、この目で見たい。
観客の声には相反する気持ちが混ざった。
都立十桜、最後のオフェンス。
そのボールが玲奈の手に渡された。
そして、ボールがその手から空中を渡り、指原の手に収まった時。
タイマーの時間が再び減りだした。

「始まった」

会場はもう一度、応援の歓声に包まれる。
もはや、両校の関係者であるかどうかも関係ない。
全く無関係の人間までもが必死に声を張り上げている。
外から見れば異様な雰囲気であるかもしれない。

「セットプレーで来るぞ!」

大島が声を上げた。
指原の指示で、全員が動き出した。
最後のボールを託す、ターゲット。
ツインタワー、珠理奈か玲奈、その裏をかいて指原なのか。

(どの可能性もある……しかし)

大島含め、帝桜5人の考え。
それは一致した。
逆サイドから回り込んできた玲奈にパスが落ちる。
同時に秋元と宮澤を壁にして、珠理奈がハイポストへ上がる。
玲奈から珠理奈へのパスコースが見える。

(やっぱり松井珠理奈か……!)

分かっていても、止めきれない可能性がある。
その松井珠理奈にボールが入ってしまえば、シュートが打てなくとも、ディフェンスに枚数を使わざるを得ない。
それを起点に、ツインタワー、または外の玲奈と指原で崩せる。
ベターであり、ベストな選択。

「来る……!」

帝桜が身構えた時。
ドン、と音がした。
まだ、珠理奈にはボールが入っていない。
そのドリブルは、珠理奈では無い。

(ここでドライブ……だと……!?)

玲奈がゴールへと突っ込んでいく。
誰もが珠理奈へのパスを予想していた。
帝桜にとって、玲奈のドライブは完全なる虚であった。

「残念ながら、今の我々には、奇襲の類しか残されていない」

正攻法での、正面からの突破は無理。
安西はそう判断した。
まさかの奇襲で相手をかき乱すしか方法は無かった。
結果として、それは帝桜を混乱させた。

(ボールも持っていないのに……結局引き付けられちまったってわけか)

珠理奈へのパスを意識していた為に玲奈へのヘルプは遅れる。
すでに玲奈には多くの選択肢が広がっていた。
ストップジャンプシュート、ゴール下で秋元へのパス、強引に突っ込んでファウルを狙う。
どう攻めてくるのか、帝桜はこの時点で完全に後手に回るしかない。

「行け、玲奈―!」

パスをしない、止まってシュートもしない。
玲奈はドライブシュートを選択する。
帝桜ゴールへ迫る。

「崩せると思った? そんな易々と。うちのゴールを」

しかし、目の前に、前田が現れる。
誰もが珠理奈に気を取られていた中、マークの相手である前田は、素早く玲奈に対応した。
高く上げた左手で玲奈のシュートを阻む。

(パス……!)

ほんの一瞬、早かった。
前田に抑え込まれ身動きが取れなくなるよりわずかに先に、玲奈はパスへと移行した。
宮澤がハイポストへ上がっているのが見えた。
パスが通れば、宮澤の得意な距離。
前田を正面に捉えつつ、パスを出す。

「させない」

バチッという音が鳴る。
玲奈のパスの軌道は大きくそれた。
前田の右手が伸びていた。
パスに触られた。

(捕らなきゃ……捕らなきゃ終わるぞ……!)

目の前でコースが変わったボール。
手が届く距離ではある。
体を反応させる。
手を伸ばす。
しかし、無情なことに、キャッチするには距離が近すぎた。

「ルーズだ!」

宮澤はボールを弾いた。
後ろに逸れたボールが宙に舞う。
誰もがボールを目で追う中、一人の選手の手に収まる。

「松井……珠理奈……」

宮澤がギリギリで弾いたのが功を奏した。
大きく上へと飛ばされたボールは外に広がっていた珠理奈の手に渡った。
そしてその珠理奈の一番近くにいるディフェンスは、大島。
その身長差は明らか。
前田が見つめる中、シュートは放たれる。

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

そうか…

きっとそうなるんだな…

Re: タイトルなし

> キラさん

コメントありがとうございます。
読めちゃいましたかね(笑)
こうご期待です
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ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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