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「スラムダンクはできないけれど」第88話

第88話「守る」

「前田を止めちゃったよ……!」

高橋は開いた口がふさがらなかった。
後ろからボールを弾くという形ではあるが、前田の得点にならなかったことは事実。
止めたことには変わりない。

「ということは、彼女も……?」

そしてそれは珠理奈も前田と同じ領域に足を踏み入れたことを示していた。
前田と同じ、極限の集中状態へ。

「3点だよ、3点差」

残りは1分15秒を切っていた。
確かに時間は無い。
しかし、まだ点が動く時間は十分ある。

「どちらにしろ、決められたら終わりだけど」

帝桜はボールを回す。
時間を使って一本、という作戦は変えない。

「もう一度……前田を止められるか?」

観客の目は、前田と珠理奈に集中した。
前田が突き放しては、珠理奈がそれに追いつく。
この試合の2人の対決を誰もが楽しんでいた。

「優子!」

それは、前田がパスを要求したときだった。
十桜、全員の目が前田に逸れたのを大島は見逃さなかった。
パスは逆に飛んだ。

「山本だ!」

増田とスクリーンをかけあっていた山本がハイポストへ飛び込んでくる。
フリーでジャンプシュートを狙う。
ディフェンスは完全に遅れていた。

(躊躇なく、出てくるやと?)

その遅れを珠理奈が取り戻す。
圧倒的な運動量で山本のシュートをチェックする。

(だったらパスするに決まってるやろ!)

今の前田を止められる唯一の選手は珠理奈だ。
山本のチェックに出るということは当然、その間、前田のマークはいない。
パスを裁く選択肢が山本にはある。
しかし、同時に、山本は気付く。

(『決まってる』……?)

既に体は前田へのパスを裁こうとしていた。
止められない。
その動きに合わせて珠理奈の手が動く。
前田へのパスコースを塞ぐように。
パスを出すしかない、と『決まっていた』かのように。

「コースが逸れた!」

珠理奈の手に当たったパスは大きく曲がる。
ボールは前田の指先に当たって弾かれた。
そのままコートの外へ出ても、十桜ボールになる。
しかし、秋元はボールめがけて飛び込んだ。

(ディフェンス堅められてからじゃ、遅い! 今、この瞬間しかない!)

空中で、コートの中を見る。
右手に収まったボールを、貰いに来る指原へと投げつけた。

「走れえ!」

同時に珠理奈がスタートし、速攻の形をとる。
指原からのパスを受け取り、ゴールへ向かう。

「やらせるか」

しかし、前田、さらには大島が回り込んでくる。
この2人相手に強引な突破は余りにリスクが高い。
珠理奈のドリブルが止まる。

「逆サイ!」

大きな声がした。
チームメイトが走り込んでくるのが、珠理奈には見えた。
パスを飛ばす。
逆サイド、スリーポイントラインの外で受けたのは、松井玲奈。

「スリーが決まれば同点……!」

点差は3点、一気に追いつける。
この状況でスリーポイントシューターである玲奈が受けたのだから、歓声が上がる。
玲奈がシュートを構える。
遅れて山本がチェックに戻ってくる。

「いや、スリーじゃない!?」

玲奈はドリブルを突いた。
スリーポイントラインよりさらに内側へのドリブルだ。
山本のチェックをかわして、ストップ、ジャンプシュート。
ボールは綺麗な弧を描く。

「美しい。良いシュートだ」

放たれた瞬間に、それが決まることを確信させるようなシュート。
この玲奈の一連の動きを見て、柏木由紀は、深く頷いた。

「スリーを打っていたら、終わりだったかもしれない」

『良いシュート』はシュートフォームが綺麗なだけではない。
その選択も含めて、『良いシュート』は生まれる。
この時間が無い中で、玲奈はしっかりと選択していた。
自分の体力、残り時間、ディフェンスの位置を考えていた。
得意と言えど、スリーポイントシュートは、体力が無い自分にとってリスクが高すぎる。
まだお互い1回ずつは攻める時間がある。
より確実にディフェンスをかわして得点できるシュートを、玲奈は選択した。
シュートを放った右手の直線状にボールとリングが見える。
リングへ吸い込まれていくボールを見て、玲奈はその右手の拳を振り下ろした。

「1点差……これで1点差ー!」

歓声はもう鳴り止まない。
帝桜サイドも、十桜サイドも、声を張り上げていた。
お互いの選手の背中を押すような大歓声がぶつかり合う。

「1分切った! これで決められたら終わりだ!」
「絶対守りきれ! 死守―!」

篠田は外聞もなく汗をにじませながら身を乗り出した。
渡辺はいつも整った前髪を振り乱していた。
十桜のディフェンスを応援する全員が手に汗を握る。
ボールは前田に渡った。

「……ぶち抜く」

フェイクも何もなしのドライブ。
前田が珠理奈を抜き去る。

「打たせるかあ!」

秋元がヘルプに出る。
その足止めの間に、後ろから珠理奈が追いつく。
前後からシュートコースを奪った。
直後、前田の手元からボールが消える。

「パスだ!」

光宗が合わせに飛び込んでいた。
ボールを受けてシュートを狙う。

「ゴール下は死守だ!」

宮澤がブロックに飛ぶ。
その高さは光宗のボールとゴールのラインを塞いでいた。
しかし瞬間、宮澤は自分が冷静さを失っていたことに気付いた。
光宗はまだシュートへ飛んでいない。

(フェイク……か!)

宮澤を飛ばせた光宗がさらに内側へ足を入れる。
シュートを遮るものはもう無い。

「うあああああああーっ!」

ベンチが、アリーナが、十桜サイドの人間が、悲鳴にも近い声を上げた。
シュートが決まったならば、3点差。
3点を取られないディフェンスのしようはいくらでもある。
ましてや帝桜がそれをするならば、攻略は不可能と言っても過言ではない。
いよいよ光宗がシュートを放とうとする。

(指原……玲奈……珠理奈……佐江……皆……今まで私は何度も助けられてきた……今ここで助けてやれなくてどうする)

連日、そしてこの試合も出場し続けた足はもう限界に近い。
それでもその足をもう一度曲げる。
力を入れる。
飛ぶ。

(ゴール下は……このチームは私が守る……!)

光宗のボールへと届いた秋元の右手は、ゴール下でボールを挟んで押し合う形になる。
一瞬ボールが静止した直後、大きく後方へ弾かれる。
観客は、すぐにこの状況を理解した。

「止めたあーっ!」

こぼれ球に指原が飛び込む。
珠理奈が走り出す。
速攻の、逆転へのパスコースが見えていた。

「ファウル! 白4番!」

大島がボールを指原の腕ごと叩き落した。
当然ファウルになる。
速攻を防ぐための故意のファウル。

「ああー! 今、絶対逆転できたのにー!」

小嶋が頬を膨らませた。
ファウルは通常の個人ファウル。
明らかな相手の得点チャンスを故意に妨害したファウル、とは判定されなかった。
時計が止まり、帝桜はディフェンスを組みなおせる。
大島の判断は正解であったとしか言えない。
しかしそれは、十桜にとってマイナスだけでは無かった。

「タイムアウト! 赤!」

安西が作戦盤を持って選手をベンチへ向かい入れる。

「このときのために、残しておいた時間です」

都立十桜高校、最後のタイムアウト。
どんなに状況が悪くても、点差が開いても、最後の一手を残しておく。
必ず使うべき状況まで選手が持ってくると信じて。
ここ一番、最後の手を安西は選手に授ける。

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

1点差……

そして出てくる選手は…

Re: タイトルなし

> キラさん

コメントありがとうございます。
いよいよです。
ご期待ください。
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Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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