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「スラムダンクはできないけれど」第86話

第86話「残り2分」

「一点差! マジでやばくない!?」
「ホントにここまで来るとは」

篠田の腕を掴んで小嶋は揺すった。
応援していたとはいえ、淡い期待。
まさか本当に逆転圏内まで追いつくとは思わない。

「これはタイムアウトしか……」

ゴールが決まると同時に秋元康は立ち上がった。
誰もが思った通り、それはタイムアウト要求のためであった。
しかし、途中で足が止まる。
1人の選手が、秋元康を制止したのだった。

「お前がそこまで言うなら、信じようか」

先生、という声と共に、大島優子が首を振ったのだ。
その真っ直ぐな視線を見て、秋元康は頷いた。
帝桜のタイムアウトは取られずに試合は続く。

(普通だったら取るんだろうけどなー)

どう考えてもタイムアウトを取るべき、この最悪の流れでそれを拒否した理由が当然大島にはあった。
流れを切るべきではない、という根拠があった。
それはこのとき、大島だけが気付いていたことだった。

「ここ絶対止めるぞ!」

秋元の声が飛ぶ。
あと1点、ここを止めて決めれば逆転できる。
十桜のディフェンスに一層の気合が入る。

「珠理奈、スクリーン右!」

大島が珠理奈の横に立って壁になる。
スクリーンを使ったプレーは何度も見せられている。
しかし、このときのスクリーンは少し性質が違った。

(大島はそのまま切れて逆サイド……?)

スクリーンをかけた大島はその場から離れて逆サイドへ移動した。
ディフェンスを崩すためのスクリーンでは無かった。
前田が山本からパスを受ける。
その位置は綺麗な右サイド45度の位置。

(大島はオフェンスに絡んでこない? じゃあこのスクリーンは前田がボールを受けるためだけ?)

大島を追った指原はすぐに理解した。
そのスクリーンは、ボールを持たさんばかりの厳しいディフェンスをする珠理奈のマークを外すため。
一番いい状態で前田にボールを受け取らせるためのもの。
さらには大島も逆サイドへいなくなったことで、前田は右にも左にもスペースが出来る。
要は、帝桜のオフェンスの選択は前田の1対1ということ。

(だったら……珠理奈は負けない。今の珠理奈ならば!)

前田がボールを振る。
シュートフェイクから右へ。
そして左側へのドライブ。
その突き出しに、珠理奈はついていく。

「間違いない、反応してる! リズムの隙を突く敦子のドライブに!」

篠田は驚愕せざるを得なかった。
始めは全く前田のドライブに歯が立たなかったはずであるのに。
この場面、珠理奈は前田を止めた。
その成長速度は、自らのブロックにどんどん追いついて、最後にはかわしてきた試合を思い出させた。

「内側にはもう宮澤が待ち構えてる! そのまま挟める!」

珠理奈を抜ききれないまま、ズルズルと前田はフリースローライン辺りまでボールを持ち込む。
スペース確保の分、孤立した状態からの1対1であった為に、ゴールへ向かうパスコースは無い。
止まって後ろにパスを戻すくらいしか選択肢は無かった。

「シュート打たすな!」

それでも前田は強引にボールを抱え、膝を曲げてシュート体勢に入る。
すかさず珠理奈と宮澤がチェックに出た。
シュートを打つにはあまりにもディフェンスとの間合いが小さすぎる。

(チェックできる……! これを止めれば……!)

点差は1点、止めれば逆転が見えてくる。
珠理奈の右手が前田が構えるボールに迫った。
しかしそれは、突然の出来事だった。

(ボールが……遠ざかって……?)

右手の指先、触れんばかりだったボールが離れた。
その距離はどんどん開く。
右手のチェックが届かないほどに。

(フェイドアウェイ……にしてもその体勢……!)

体を投げ出さんばかりに前田は後ろに飛んでいた。
上体をそらして、珠理奈と宮澤のチェックをギリギリでかわす。
2人のチェックは追いつかない。
シュートが放たれる。

「まさか……!」

高い弧を描いたシュートが珠理奈と宮澤の頭上を越えていく。
ボールはまず正面からボードにぶつかり、そしてリングの中へと叩き込まれる。
尻餅をついた前田を大島が引き起こした。

「ナイッシュ! あっちゃん!」

宮澤のスリーポイントが決まった時と同じくらいに、再び歓声が沸き起こった。
ディフェンスを2枚かわす、自分が倒れるほどの、フェイドアウェイシュート。
その強引さが正しい判断だったのかは別として、とにかく会場は沸いた。

「時間はある。落ち着いて取り返していけば」

残り2分、3点差。
十分、逆転できる点差と時間。
指原は冷静に、珠理奈を起点にオフェンスを組み立てる。
珠理奈がボールを受けて、前田との1対1を狙う。
その間に、指原は逆サイドの玲奈とのスクリーンプレーでディフェンスを崩しにかかった。
そのときだった。

「え……?」

バチン、というボールが弾かれる音を指原は聞いた。
音のする方を見た時にはすでに前田がドライブで迫っていた。
何が起きたのか分からなかったが、とにかく、ボールは奪われている。
前田を止めなければならない。

「今、スティールしたの?」

小嶋は動揺した。
外から見ていても、前田のスティールは見事すぎてスティールに見えなかった。
右、左、とフェイク。
そしてドライブを狙う直前。
珠理奈がシュートフェイクを構えた一瞬の隙。
普通だったらまずスティールなど考えられない。
前田が手を出した場所に珠理奈がボールをぶつけてしまったように見えた、と言っても過言では無いほどだった。
慌てて戻る指原をクロスオーバーで、さらに待ち構える玲奈をロールターンで前田はかわす。

(させるか……!)

スティールされた珠理奈が追いついた。
前田はそのまま正面からドリブルで突っ込んでいく。

(ジャンプシュートか、かわしてくるか)

珠理奈の頭には2つの選択肢があった。
ここまで何度も見せているミドルレンジで止まってのジャンプシュート。
または、珠理奈をかわしてレイアップ。
すぐに選択肢が1つ消える。
距離がつまっても前田が止まる気配は無い。
すでに珠理奈の守備範囲に入っている。
ここからジャンプシュートを狙うことは出来ない。

(突っ込んでくるか)

珠理奈はゴール下で前田を待ち構えた。
ブロックの高さなら負けない。
ファウルしないことだけを気を付けた。
しかし、前田は、珠理奈がブロックに飛ぶ前にシュートを放った。

「なっ……!」

そのシュートのリリースは、珠理奈が考えていたタイミングより早かった。
レイアップよりも手前、しかしジャンプシュートではない。
中途半端な位置で踏み切って、シュートを放られた。
ボールはふわりと高い弧を描いて、珠理奈のブロックを超えていく。
リングのほぼ直上を最高到達点として、妙な間を持たせて落ちてくる。
そして垂直に、真上からゴールリングを貫いた。

「っしゃあ! ナイスあっちゃん!」

大島が前田の手のひらを叩いた。
またも沸きあがる大歓声は、十桜にとって重いものとなった。
1点差が5点差、希望が焦りに変わる。

「まだ5点差だ! 取り返せる!」

再びボールを珠理奈が受けた。
鋭いドライブで帝桜のゴールへ迫った。
前田がブロックを狙ってくるのを見て、得意のダブルクラッチでかわしにかかる。

「甘い。今のあっちゃんはかわせない」

敗因は、この5点差で冷静になりきれなかったことだ。
大島だけが気付いていたそれに、気付けなかった。
何度も経験したはずの、あの独特な雰囲気を前田から感じ取れなかった。
珠理奈の手からボールが叩き落される。
ダブルクラッチでボールを引いた瞬間を狙ったスティールだった。
ファウルの笛は無い。
審判の目の前、前田は正確にボールだけを捕らえていた。

「へい、あっちゃん、頂戴」

前田が保持したボールを大島が受け取りに来る。
すでに山本はフロントコートへ上がっていた。
ディフェンスが下がるのを確認して、大島がボールを突き始める。
篠田が落胆しながら言った。

「優子がガードに戻った……もう無理に点を取らなくてもいいってことか……」

元々十桜の攻撃に対抗するための大島のフォワード起用だった。
安定感を優先するならば、やはり大島のポジションはガード。
そして今、大島は自分がガードポジションに戻るべきだと判断した。

「残り1分40秒。5点差。相手ボール。決まったね……」
「まだ……まだ決まってない!」
「よくここまで頑張ったと思うよ」

篠田の言葉に小嶋は唇を噛んだ。
口では十桜の負けを否定するものの、本気で信じられない自分がいた。
時間と点差、そして相手は帝桜。
この状況からの逆転はどう考えても無理だった。

「奇跡は……間に合わない」

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

やっぱり間に合わないのか……

Re: タイトルなし

> キラさん

コメントありがとうございます。
決着も近いです。
この続きをこうご期待ください
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ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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