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「スラムダンクはできないけれど」第85話

第85話「じゃんけん」

「3点プレーで返したとはいえ、まだ4点差だからね」
「やばいよー。時間ないし」
「とにかく十桜はずっと死守の時間帯だわ」

峯岸と小嶋がそう話している間にも時間は減る。
十桜は時間を使われたくない。
それでいて失点も許されない。

「ボールを取りに行くのは厳しいか……」

本来ならば積極的なディフェンスでボールを奪いたい状況。
しかし、それだけディフェンスが前に出れば失点のリスクも伴う。
時間をかけて攻めてくる帝桜のオフェンスを、とにかく耐えるしかない。
粘って耐えて守り切って、すぐ決める。
これが今の十桜に残された唯一の道であった。
帝桜は変わらず山本がポイントガードの形。

「帝桜にとっても大事なところだ。確実に点を取りたい」

篠田が見つめる先、大島が動く。
山本からパスを貰い、前田にボールを回した。

「やっぱり前田で来るじゃん!」
「確実性は一番高い」

前田がディフェンスを引き付けてからパス。
帝桜が最も多く点を取ってきたパターン。
完璧にそれをこなされたら、見てからの反応ではまず止められない。

「いや、まだ分からない」

前田が内側へドライブを仕掛ける。
しかし珠理奈を抜ききれない。
前田の横に張り付いて粘る。

「前田のドライブに反応した!」

珠理奈のディフェンスで、ヘルプはそこまで出なくてもよくなる。
インサイドの宮澤と秋元を引き付けきれない。
それでも前田はパスを出す。
ゴール下に切れ込んできた大島へのパスだ。

(いつの間に……!)

ゴール下で陣取っていた秋元にとっては、大島が突然現れたように感じた。
自分よりずっと小さい選手にゴール下の侵入を許す。
そして、そのパスが通ると同時、大島からのパスコースが一気に増える。
中は光宗、外は山本、さらに前田へのリターン。

(パスがどこに出ても、フリーで打たせなければ……!)

パスの距離はそこまで離れていない。
出てからチェックで追いつける。
自分のマークマンへのチェックを備えた。
いよいよ大島からパスが裁かれようとする。

「確実に点を取る……だったら、ドフリーじゃなきゃ意味ないでしょーが」

パスを出す瞬間、大島はニヤリと笑った。
そのパスは、全員が虚を突かれた。
前田、光宗、山本、じゃない。
チェックに出ようとしていた相手へのパスは出なかった。
完全な逆サイド、外で待っていた増田へのパスが飛ぶ。

(届かない……!)

珠理奈が反応する。
しかし、ギリギリ届かないところをパスが通過していく。
見事なパスが、増田に渡った。
こればかりは十桜も仕方がなかった。
1対1だけで守り切れる相手ではない限り、1人に対してディフェンスが寄るのは当然。
大島から距離の近い3人を警戒してディフェンスが収縮するのは正しい判断だった。
ただ、敵に囲まれたゴール下から、速く正確なパスを、それも逆サイドに飛ばす選手がいるのが仕方がないのだ。

「有華! シュート!」

増田がシュートモーションに入る。
スリーポイントの決定率はここまでで充分知れている。
フリーで打たせれば、間違いない。
指原が苦し紛れのチェックに出る。

(大丈夫、指原は間に合わな……)

大島の思考が途中で止まった。
前田が抜ききれなければ自分が受け取る。
そして逆サイドの増田にパスを出す。
イメージ通りの、理想の展開で進んでいた、はずであった。

(ちょっと近くないか、指原)

そこで初めてイメージと実際が狂う。
指原のチェック、苦し紛れのはずのチェックがあまりにも早すぎる。
珠理奈のような超がつく運動量、ではない。

「読まれたのか!? このパスが!」

パスが出るのを見てから動いたのでは追いつかない。
最低でもパスが出ると同時に走り出さなければその位置にはいられない。
指原はパスを全て読んでいたのか。

(指原は、多分、この人にほとんどのことで敵わない。……でも、じゃんけんなら勝てる)

否、指原のこの読みは論理的な根拠に基づいての行動ではない。
もっと感覚的な、ただの勘と言っても過言では無かった。
堅実的に近い距離の合わせなのか、勝負の逆サイド長いパスなのか。
どっちかを選んだに過ぎない。

「じゃんけんでも、勝てば『読み勝った』って言える!」

すでに増田はシュートに入っている。
指原が距離を縮める。
リリースの瞬間、指原の右手が、増田の、プレッシャーを感じる範囲、に届く。
シュートは放たれた、チェックもボールに触れるまでには届いていない……しかし。

「外れたー!」

リバウンド、秋元の横から光宗が弾く。
宙に舞うボールに、珠理奈が飛びついた。
前を走る指原にパスを出し、自分も走り出す。

「10番は早めに止めろ!」

後を追う大島の声が飛ぶ。
珠理奈が走り込んでくるのを、増田がマークする。

「もう一枚!」

その珠理奈が走り抜けた後。
必死に走ってきた秋元がインサイドでパスを受ける。
光宗との1対1。
ロールターンで光宗をかわしにかかる。

「やらせるか!」

体を反転させた先、増田が立ちふさがる。
光宗をかわした先を塞ぐ形の2枚目。

(パス……!)

すぐに秋元がパスを見たのを、増田は見逃さなかった。
同時にこの状況に違和感を感じた。
相手は秋元、インサイドでの合わせをしてくるはず。
にもかかわらず、宮澤がいない。

「いくら有華と彩佳でも知らないはず……なんせ初めて使うパターンなんだから」

パスは外に飛んだ。
宮澤が完全なフリーで待ち構えていた。
今度は逆に、帝桜が全員、虚を突かれた。
宮澤がゆっくりとシュートを放つ。
綺麗な弧を描いたボールは、リングを貫いた。

「スリー……ポイント?」

ベンチで祈る思いで手を組んでいた高柳は、余りのことに一瞬声が出なかった。
しかし、3点追加されるスコアボードと、拳を、1回、そして噛みしめるようにもう一度振り下ろした宮澤を見て、分かる。
シュートは決まったと。
高柳はその場で飛び上がった。

「さ、さえちゃん先輩いいいー! イケメンすぎるうううー!」

ついにその背中を捕らえる。
初出場の、どこぞの都立高校が、王者を追い詰める。
奇跡が起きようとしていた。
冷静に見ていられる観客はいないと言っても過言では無い。
会場は大歓声に包まれた。
残り時間は2分と15秒ほど。
しかし、スコアボードに刻まれた両者の得点の差はわずか。

―1点。

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

息を飲む戦いですね


さぁ、このあとはどうなっていくのか…
推しのちゅりが試合に出ることはあるのだろうか…

Re: タイトルなし

> キラさん

コメントありがとうございます。
ちゅりの活躍が少なくてすいません。
更新お待ちください。
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ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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