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「スラムダンクはできないけれど」第84話

第84話「近づく音」

「残り3分7点差……ここを止めればまだ可能性は残る」
「そのためには大島と前田……どちらか」

渡辺と菊地は息を呑んで帝桜のオフェンスを見守っていた。
この数分を見れば、点の取り合いが出来るようになったのは明らかだ。
あとは大島と前田による2対2。
この高火力な攻撃を止めれば点差が縮まる。

「指原じゃあちょっと厳しい。やるなら松井珠理奈しかいない」

指原には大島を止められない。
それは指原自身も分かっていること。
可能性があるのは、この終盤で前田に迫るプレーを見せている珠理奈。

(1人抜かれるならヘルプで何とかなる……でも2人ともやられたら追いつけない可能性が高い)

ヘルプを構える秋元と宮澤も考えていることは同じだった。
1人ならカバーできる。
しかし、そこからさらに攻め込まれると守り切ることは困難になる。
どちらか片方は、1対1である程度抑える必要があった。

「帝桜もそれを十分分かってると思うけど」

ボールは山本から大島へ渡った。
今度はスクリーンが無い。
前田も外に広がっての2対2。

(大島が指原を抜いてくる。そっから先の勝負か)

インサイドのツインタワーは、決して自分のマークマンに裏を取られないように、ヘルプの準備をする。
大島が腰を落としてドライブの姿勢に入った。
まさに一歩踏み出そうとする。

(来る……!)

しかしそれは違った。
指原が反応して大島との間合いが空いた瞬間、大島は前田にパスを出した。
大島がドライブする、そう思わせたフェイクでディフェンスの思考は全員が一瞬遅れた。
前田がすかさずドライブで珠理奈を抜く。

「前田だ!」

秋元がヘルプに出る。
それと同時、光宗が動く。
インサイドの合わせならば宮澤がカバーに入っているが、そうでは無かった。
もっと上のポジション、大島をマークする指原に向かって動いていた。

「スクリーンだ!」

宮澤が指原に伝えるも、もう遅い。
光宗に引っかかった指原を大島が置き去りにする。
一瞬の出来事だった。
前田、大島、さらには光宗までがペイントエリア内に侵入する。
あっという間にディフェンスは崩された。
ヘルプに出ようとしていた秋元はゴール下まで引くしかない。
光宗を視界に入れつつ待ち構える。
前田がパスを狙う動きを見せる。
秋元はそれに合わせて半歩動いた。
その半歩を前田は見逃さない。
さらに加速して踏み込むと、秋元をかわしながらバックシュートに行く。

(速い……やられる……!)

秋元がかわされ、前田がシュートするのを宮澤は見ていることしかできなかった。
インサイドのおとりに釣られて前田のチェックには届かない位置に誘導されている。
見事にディフェンスを破られた敗北感は強かった。

(あれ……高い……こんなに?)

前田が余裕のシュートを決める、と外から見ている感覚とは逆に、前田は戸惑っていた。
バックシュートのチェックについたのは、抜かれた後に追ってきた珠理奈。
完全に抜き去って置き去りにした。
加えてバックシュートはボールとディフェンスの間に自分の身体が入る形になるのだからチェックは難しいはず。
しかし前田は、珠理奈からチェックを受けていた。
あまりにも高い、ボールに触れるまではいかなくとも、プレッシャーを感じるほど。

(……嘘でしょ)

シュートはこぼれた。
秋元がリバウンドに飛び込む。
すぐに指原がボールを繋ぐ。

「速攻!」

玲奈が前を走る。
指原からパスを受けてボールを運ぶも、山本が回り込んでくる。
すでに指原には大島が、あとから走ってくる宮澤には増田のマークが付いていてパスは出せない。
しかし、1人、フリーで走り込んでくる。

「玲奈!」

ゴール下で前田をチェックしていた珠理奈が走り込む。
パスを貰った珠理奈はそのまま光宗と増田が待ち構えるゴール下へと突っ込んだ。
飛び上がった光宗のチェックが珠理奈を襲う。
しかし珠理奈はそのまま強引に体をぶつけてシュートコースが開けるのを待つ。
光宗は不思議な感覚に陥った。

(私より高いなんて……!)

シュートを狙う珠理奈を、光宗は見上げる形になっていた。
いくらなんでも実際、到達点で光宗が見上げるほどに珠理奈が上を行くことはない。
それでも珠理奈が上にいると彼女が感じた理由がある。
それは、滞空時間の違い。
光宗の方が先に落ちていたのだ。
ブロックが下がってから、珠理奈がボールを放る。
リングの上を数回跳ねたボールは、コロンとリングの中へと落ちていく。
審判がファウルを示す手を上げていた。

「バスカン取ったー!」

光宗のファウルでバスケットカウントワンスロー。
会場が歓声に包まれる。
すでに帝桜との歓声の差は気にならないほどになっていた。

「前田をチェックして、そのあとダッシュでぶっちぎって。さらには光宗からバスカンとか、とんでもないな」

フリースローに入る珠理奈を見ながら、菊地は苦笑いを浮かべた。
試合終盤、1人だけ動きが違う。
その身体能力は、前田をしのぐほどであった。
珠理奈のフリースローが決まって4点差。

「あの女子離れした身体能力。観客を惹き付ける爆発力。天性のものとしか思えない。敦子や優子と同等……いや、それ以上の」

決まったフリースローにさらに沸く会場の雰囲気を感じながら、篠田は息を呑んだ。
すでに偶然や幸運だけでは説明できない。
間違いなく、珠理奈には前田や大島を上回る部分がある。
この終盤になって、より色濃くそれが表れている。

(始めは何とも思ってなかったんだけどね)

もちろん上手いとは思っていた。
それでも前田の敵ではない、大島はそう結論づけていた。
前田とマッチアップすれば封殺することが出来ると。
今思えば笑えるほどに自分の見る目は無かった。

(気づけば焦らされてるはこっちか)

音が確実に迫っているのを大島は感じていた。
試合が始まるまでは、自分や前田の遥か下に珠理奈はいたはずだった。
しかし、どんどん音は大きくなる。
近づいてくる姿も大きくなる。
一歩ずつなんて生ぬるいものではない。
何段も飛ばしながら、階段を、珠理奈は登ってきている。

続く

訪問者6万人突破ありがとうございます。
そして指原さんおめでとう!
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

やっぱり惹きつけられますね!


試合の感じとかもう最高です!

クライマックスどうなる!?

Re: タイトルなし

> キラさん

コメントありがとうございます。
試合の描写の細かさは意識をして書いています。
素人の方にとっては分かりにくいかもしれません。
次回もご期待ください。

No title

終盤になりましたね~

珠理奈の活躍が止まりませんね。

早く続きが読みたい!!

Re: No title

> 名無し様

コメントありがとうございます。
ようやくの終盤です。
次の更新、ご期待ください。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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