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「スラムダンクはできないけれど」第83話

第83話「抜かれるんで」

「よしよしよし! こっからだぞ、こっから!」

宮澤が手を叩いてチームメイトを鼓舞した。
十桜ベンチの雰囲気は、少し前の葬式ムードとはまるで違っていた。

「この3分間……間違いない。うちらが押してる! 誰が何と言おうと!」

秋元の言葉に全員が頷いた。
十桜のメンバーはこの局面で自信を大きく取り戻していた。
実際、秋元の言うとおりこの数分間、優勢なのはどう見ても都立十桜であった。
相変わらず声援が多いのは帝桜であることに変わりないが、それでも、観客が試合に楽しみを感じているのも事実だった。

「よし、みんな集まって」

秋元を中心に円陣を組む。
今まで、この試合でも、何度もやってきたが、一回一回意味は違う。
同じ円陣は一つもない。

「ここから逆転すれば、多分ほとんどの人が『奇跡だ』って言うと思う。『実力は帝桜だ』って」

格上相手に逆転勝利。
なくはないが、よくあることではない。
所詮はただの奇跡。
とても確率の少ない出来事を引き当てただけ。
実力かどうかなんて関係ないのだ。

「それでも……起こすぞ。奇跡」

静かに各々が頷いた。
円陣の掛け声をかけて、十桜の5人はコートに戻っていく。
メンバーはスタートと変わらずだ。
続いて、帝桜の5人が出てきた。
帝桜側が、相手の勢いを切る、という形でとった初めてのタイムアウト。
点差からしてみても、その目に余裕はない。

(……と思ったけど)

珠理奈は苦笑いを浮かべるしかなかった。
その2人だけは違う。
大島と前田には、まだどこか、懐に空きがある。

(恐ろしいな、全く)

帝桜のボールで試合は再開する。
大島がパスを入れて、山本がボールを運ぶ。
一見、変哲もないこの場面だけで違和感を感じた珠理奈と指原だったが、それでもすでに遅かった。
山本からボールを受けた前田がドライブする。

「打たせるな!」

珠理奈、指原、宮澤がチェックする。
すぐに前田はパスに切り替えた。
いつもなら外で待つのは、増田と山本。
しかし今回は違う。

(大島が動いてる……そういうことか!)

パスを受けた大島がスリーポイントシュートを放つ。
スパンと簡単にそれが入ってしまう。

「大島のスリー! 一気に苦しくなった!」

点差は9点に広がった。
スリーポイントシュートを決められて差が広がる、というのは追ってる側にしてみればやはり大きなダメージになる。
次のプレー、4点プレーでも起きない限り、点は取れても3点。
差は縮まらない。
むしろ2点では差が広がってしまう。
必死で点を追いかけているときにこれは精神的な疲労が増す。

(くそー、スリーとかやめてよマジで)

指原はげっそりとした表情でそのスコアを見つめる。
6点が9点、そうなると、急に10点近い差をつけられたことになる。
20点差の状況に比べたら余程いいのは分かっていても、あと4分を切って9点。
縮まらない点差に足が重くなる。
そんな指原の耳に飛び込んでくるのは、宮澤の声。

「ちょうだい!」

宮澤がドライブで切り込んでいく。
同時に秋元がそれに合わせてゴール下へ走り込んだ。
宮澤はパスを出そうとするが、それはフェイク。
反応した増田と光宗をかわして自らゴールを決める。

「よおおっし!」

点を取り返して7点差。
動じず帝桜は攻撃を始める。
ボールを運んでくる山本を見て、先ほどの違和感の正体を珠理奈達は理解する。

「山本がポイントガードだね。優子がシューティングガードのポジションに入った」

試合を見守る篠田もそれに気付いていた。
山本がボールを運び大島は45度の下がった位置まで走っている。
大島が点取りに加わった、より攻撃的な布陣。

「山本は元々ポイントガードの選手だった。増田だって外のポジションだし、光宗だってフォワードよりの選手だったはず」
「え、そうなの?」
「帝桜はスター揃いだけど実際相当難しい5人なんだよ。それを上手くバランスとって操ってたのが優子だった」

その大島が本業のポイントガードを捨てて攻撃に参加するということ。
それは、帝桜にとって、安定性を捨てて攻撃力を増加させていることになる。

「こっちだって不本意なんだよ。でもさ、勝つためにはそんなこと言ってられないし」

本来の陣形を崩さなければならない状況。
それだけチームは追い詰められているということ。
点差はあれど、間違いなく帝桜は追ってくる十桜の影に焦っていた。

「やるからには……点を取りに行く」

山本から大島にパスが入る。
マークする指原にスクリーンをかけるのは、前田だ。
前田のスクリーンを使って大島がドライブする。
スイッチして珠理奈が大島をチェックするが、すかさず大島の手元からパスが出る。
指原を抑え込んだ前田がボールを受けてシュートを決める。
お手本のように綺麗な、そしてあまりに豪華なピックアンドロール。

(この2対2止められんのかよ……)

ボールを運ぶ指原はまたもスコアを、そして決められた相手の4番、5番の背中を見つめていた。
とにかく大島と前田の隙がなさすぎる。
止めなければ追いつけない、しかし止められる気がしない。
すると突然、頭をペチッと軽く叩かれる。
顔を上げると宮澤がいた。

「今完全にへばった顔してたろ。諦めてんのか」
「い、いやそんなことないっすよ」
「思い出せ」
「へ?」
「才加の言ってたこと……私はあんまりああいう言葉使いたくないんだけど」

タイムアウトで秋元のチームメイトへの言葉。
『運も実力の内』と考える宮澤にとって、この試合を『偶然』で片づけるような言い回しあまり好きでは無い。
しかし聞いてるこっちが恥ずかしくなるほど伝わってくる彼女の気持ちはそれ以上。
あれだけ熱く語られたら……自分も熱くならないわけがない。

「奇跡を私は信じてる」

奇跡と言う言葉。
ここまで来たら正面からその言葉と付き合うしかない。
それを聞いた指原は、一瞬ポカンとしたがすぐに笑いながら頷いた。

「そうっすよね。まだまだいけますよね」
「分かったら前を向いとけ」

はいっ、という返事を指原は走り出す宮澤の背中に向けて言った。
宮澤は秋元にスクリーンを貰うと外までボールを受けにきた。
すぐに指原はボールを裁いた。
宮澤にパスが入ると同時に秋元がローポストで面を取る。
そこへ宮澤からのパスが入ると、またも同時に、宮澤が走り込む。
パスを出そうとする秋元は、冷静だった。
大島がパスコースを抑えに寄ってくるのが見えていた。
その瞬間にフリーになるところへパスを送る。

「指原、打て!」
「え、マジっすか!?」

点を取らなければおいていかれる場面。
指原の外のシュートの確率はあまりに不安だった。
躊躇する指原に宮澤の声が飛ぶ。

「いいから! 取ってやるから!」

宮澤と秋元の姿が目に飛び込んできた瞬間、指原はシュートを決意した。
得意でなくとも、練習はしてきたシュートだ。
いつも通りの動きでシュートを打つ。

「って全然ダメだー!」

ここで放ったシュートが綺麗に決まれば感動なのであるが、現実は甘くなかった。
打った瞬間に分かる、軌道のズレ。
リングに弾かれたボールが宙に舞った。
宮澤と秋元の2人がリバウンドに入る。

「そう簡単にオフェンスリバウンドなんて取らせるかよ」

しかし元々内側にいるのはディフェンスだ。
光宗と増田は2人をがっちりと抑え込む。
かわせない。

(指原のせいで……これでさらに点差が)

指原は見ていることしかできない。
光宗の手元にボールが収まろうとする。
その瞬間だった。
ボールは光宗の手からこぼれる。
正確には、収まる直前に弾かれた。
珠理奈が前田のスクリーンアウトをかわして飛び込んでいた。
それも、光宗と競るほど猛烈な高さのジャンプで。
さらに1回、2回と珠理奈が光宗と競る。
最終的にボールを引き寄せたのは珠理奈だった。
シュートを構えた珠理奈に光宗は反応したが、それが自分だけではないことに気付く。
増田と前田、そして光宗を引きつけた珠理奈がゴール下の秋元にパスを裁いた。
ゴール下の秋元は、フリーである。

「秋元さん! ナイッシュですー!」

珍しく指原が一番に喜びの声を上げた。
自分のシュートが外れて点差が広がるところを救われた。

「指原さん、リバウンド飛び込みますから。安心してシュート打ってください」

リバウンドを取った珠理奈の言葉に指原は頷いた。
続いて宮澤も指原に声を掛けた。

「だから言ったろ、取ってやるって」
「実際に取ったのは珠理奈じゃないですか」
「今日はトリプルタワーなんだよ」

ディフェンス止めるぞ、と秋元の声が後ろから飛んでくる。
指原はこのとき、もしかするとこのチームが出来てから一番、味方の大きさを感じていたかもしれない。
頼りになる先輩と後輩の頼もしさを。
自分は大島優子に勝てなくてもいい、と頭で分かっていても、本当にそれでいいのか。
指原のその迷いは、この瞬間に消えた。

「皆さん、ヘルプお願いしますね。指原抜かれるんで!」

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

みんなの気持ちが少しずつ変わり始めましたね

これからがすごく楽しみです♪

Re: タイトルなし

> キラさん

コメントありがとうございます。
試合も終盤です。
応援よろしくお願いします。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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