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「スラムダンクはできないけれど」第81話

第81話「石ころ」

「ついに一桁差まで来たー!」

十桜ベンチの4人が思わず立ち上がる。
10点以上と、10点未満。
わずか1点の違いでも点差としての印象は変わる。
あと5本守って、5本決めれば追いつけるのだ。

「追われる方がプレッシャーを感じるに決まってる」

前を走っている側は相手の背中が見えない。
どこまで自分に迫っているのか。
遥か後なのか、もう手が届く距離なのか。
点差がつまるほど、決めなければならないシュートになる。
ダメで元々の追っている側に比べたら精神的に苦しいのは追われる側だ。

「じゃあこのまま逆転も?」

小嶋が篠田に期待の目で聞いた。
篠田は首を縦に振りかけて、止めた。
一度コートに目を移してから、首を今度は横に振った。

「いやーごめん。相手は優子だったね」

大島の余裕の表情。
少しでも焦りの色が見えていれば、帝桜全員にプレッシャーがかかっていたであろう場面。
大島には全く、少なくとも外側からは、この点差に焦っている表情は見えなかった。
ここまでと変わらぬ様子で、ボールを山本に裁く。
一歩で山本が玲奈を抜き去った。

(こいつはもうフラフラや。相手にならんわ)

山本のドライブに合わせて光宗が動く。
そのチェックに宮澤と秋元が動いた瞬間、ボールは外に飛んだ。
フリーで増田がボールを受ける。
美しいシュートがリングを射抜いた。

「ああー! スリーで返されたー」
「また12点差。流石帝桜だわ」

この痛い一本に高橋と峯岸が頭を抱える。
追い上げられているこの場面でスリーポイントを打つ精神力。
そして決める実力。
ここから7点、5点、と差を縮めたかった十桜の心を折る一撃。

「流れを渡す気は全くないよ」

さらに大島が追い打ちをかける。
指原がボールを受けてフロントコートへ運ぼうとしたとき。
不意に大島がバックコートまで出てきてディフェンスした。

(な、舐めやがって……!)

指原はその勝負に受けて立った。
大島をドリブルで突破することを狙う。

「指原さん、パス!」

玲奈と珠理奈が戻ってパスを受けようとするが、指原はそれが見えていなかった。
見えているのは、目の前の大島優子。

(いつまでもやられっぱなしでいられるか!)

スティールを狙って出てきたところを、鋭いクロスオーバーからロールターンでかわす。
完全に相手の重心は前のめりになっていた。
抜けたかと思った瞬間、大島は回り込んでくる。
それでも指原は強引に仕掛ける。
ドライブを体で受けつつ伸ばした大島の指先が、ボールに触れた。
コントロールを失ったボールは、指原の足に当たると大きく弾かれ、そのままコートのラインを割った。

「よっしゃ、マイボール!」

大島がガッツポーズで審判にアピールする。
審判に拾い上げられるボールを呆然と指原は見つめた。
そして、事の重大さに気づく。
血の気が引いた。

(やっちゃった……)

ブザーが鳴った。
十桜タイムアウトの要求だった。
選手はベンチに戻る。

「ここで簡単に14点差に戻されたくない。使ったね、タイムアウト」

篠田はこのタイムアウトに頷いた。
このまま続けてあっという間に縮めてきた点差を取り戻されるわけにはいかない。
もう十桜には時間が無いのだ。

「全く指原は……わざわざ大島と勝負するところじゃなってのに」

高橋は頭を掻きながらため息をついた。
ポイントガードとしてマッチアップしたが故に指原への期待は大きい。
その分、このミスによる落胆は大きかった。

「指原も相当成長したと思うけど、ちょっと大島優子は格上だ。あらゆる面で指原より優ってる」
「逆転ムードが一転、大ピンチだからね……流石の支配力だよ、優子は」

十桜ベンチではさっそく指原が頭を下げていた。

「ご、ごめんなさい!」
「まあ、気にすんなって。とりあえず座って」

宮澤に肩を叩かれながらベンチに指原含め5人が座る。
安西が作戦盤を片手に攻守両方の説明を始めた。

「あとー、それから指原さん……」
「何であそこ勝負に行ったの? パスすればいいじゃん」

説明を大方終えた後、安西が何か言いかけるのを遮って、大家が指原に突っかかった。
指原がビクッと震えながら答えた。

「だって……みんなが頑張ってんのに私だけ何もできないなんて」
「はっきり言って今んとこ、お前は逆立ちしたって大島優子には勝てないよ」
「ちょ、ひどっ」

喧嘩になるのかと一瞬緊張が走るが、すぐに2人の口調がそれとは違うことを全員が察した。
大家が指原の両肩を抱きながら続けた。

「そりゃそうだよ。日本代表だよ? それに勝つことがあんたのやることか?」
「しーちゃん……」

違うかも、と小さな声で指原は呟いた。
そのやりとりを聞いていた北原が、指原の隣に座る。
そして俯き気味の指原の顔を上げさせた。

「もっと頼ったら? チームメイトをさ」
「りえちゃん……」

その言葉に全員が続いた。
秋元も宮澤も玲奈も珠理奈も亜美菜も。

「キャプテンと副キャプテンを頼りなさいって!」
「そうですよ、指原さん! 任せてください!」
「皆……」

指原は全員の顔を見渡し、静かに頷くと、自分に喝を入れるように両頬を叩いた。
そしてもう一度頷き、立ち上がった。

「皆さん……ディフェンス! お願いします!」
「よし……絶対死守だ」

秋元が差し出した手に全員の手が乗っかる。
円陣で気合を入れて、5人はコートに戻っていった。
その様子を安西は笑みを浮かべて見つめていた。

「ホントこのチームは監督いらずですね」

帝桜ボールで試合再開。
決められたら14点差。
じっくりボールをキープする大島を、当然指原がマークする。

(この人は……多分、私のことを何とも思ってない。そこらへんに転がってる石ころと一緒だ)

ディフェンスしても相手はプレッシャーすら感じていない。
いつでも抜こうと思えば抜ける。
指原が感じる大島との差はあまりにも大きかった。

(それなのに私はこの人のことばっかり見て……全然周りが見えてなかったじゃないか)

確かに負けん気は必要だ。
でも無謀に突っ込んでボールを失うことはポイントガードの役割ではない。
1対1で勝つ必要だってない。

(私は私に出来ることをやるしかないよね)

大島が前田へのパスフェイクから、背中を通して山本にパスを振った。
始めのパスフェイク、それだけでディフェンスは一歩、対応が遅れる。
遅れが積み重なって、最終的にオフェンスがゴールに辿り着ける差が生まれるのだ。
パス一本でも大島優子は妥協しない。
先ほどと全く同じように、山本は玲奈を抜き去る。
しかし、そこから先が先ほどとは違っていた。

(指原のヘルプが速いな……優子さんは?)

山本に合わせて切り込んだ大島には宮澤がディフェンスについている。
光宗には秋元が、増田には珠理奈が、奥の前田にはパスコースが空かないうちに玲奈が追いついている。

「いいよ、戻して」

大島が外に出てパスを受けた。
もう一度オフェンスを作り直す時間はまだある。
指示を出しながら、大島はディフェンスに戻ってきた指原を見つめた。

(ローテが格段に速くなった……この指原の動き出しが速いから)

遅れが積み重なるとオフェンスが勝つ。
逆に遅れが無ければ、極端な話にはなるが、ディフェンスに負けは無い。
指原によるヘルプの一歩目が速いため、後に続く4人のローテーションも速くなるのだ。

(もう一度……今度はここから崩す)

ドリブルで右45度の位置まで移動すると、大島はドライブを仕掛けた。
その急加速に指原はついていけない。
すぐにヘルプに秋元が出るが、大島の余りの速さにすでにディフェンスのローテーションは遅れていた。

(パスコースは……ゴール下)

大島がゴール下、合わせてくる光宗へのパスを狙う。
そのコースに1人選手が間を割る。
危険を察していた。

(指原……来ると思った)

大島の手は止まる。
ゴール下へのパスはフェイク。
もう一つのパスコースを大島は見逃してはいなかった。
外へのパスコース。
フリーで増田がボールを待っていた。
大島から山本、そして増田へ。
パスが飛んだ。
スリーポイントが決まれば、15点差。

(私が見ていたのはボールじゃない……指原さんだ。指示を出すって言われたから)

そのボール、指原が手を伸ばしても到底届かない。
しかし、その後ろ。
珠理奈がボールへ反応する。

(パスが出る直前に指示は出た。『増田へのパスコースに飛び込め』って指示が! 指原さんは読んでいたんだ!)

猛スピードでパスコースに入った珠理奈の手がボールを弾く。
パスカットからの速攻のチャンスになる。
珠理奈のマークにはすぐに増田が張り付くがパスはつながる。
指原が走り込んでパスを受けた。

「石ころにつまずくってこともあるかもね!」

指原の前には例にもよって大島が回り込んでくる。
勝負して抜ければゴールまでフリーだ。
しかし、今の指原がそんな選択をするわけがなかった。

「頼りまくっちゃうから。指原」

パスを横に振った。
それに合わせて走り込んでくる選手が1人。
松井玲奈がスリーポイントシュートを放つ。

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

No title

玲奈の復調の兆しが見えるのでしょうか??


これからも楽しみにしてますよ♪

玲奈!
決めろ!

Re: No title

>クルムルさん

コメントありがとうございます。
玲奈がどうするのか、こうご期待です。

Re: タイトルなし

>キラさん

コメントありがとうございます。
このシュート、玲奈が決められるのか。
次の更新お待ちください。
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ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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