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「スラムダンクはできないけれど」第76話

第76話「まだ無理」

「確かに……亜美菜のプレーに違和感があると思ってたけど」

普段とはほんのわずかな違い。
練習で佐藤のプレーを見ているチームメイトだからこそ分かる。
佐藤のプレーがどこかいつもと違うことを。

「インサイドでのプレーは渡廊の小森のだと思いますよ」

そしてそれは、他の選手のプレーを真似たもの。
インサイドプレーに、タイミングを外したクイックリリース。
スピンムーブは地区予選で苦しめられた渡廊高校の小森の技。
クイックリリースは、スリーポイントではなくミドルレンジのシュートではあったが、玲奈の特徴だ。

「リズムを隠す?」

高柳達が気付くのとほぼ同時、小嶋は篠田に聞き返した。
前田と佐藤の間で何が起きているのか、篠田が説明している所だった。

「そう。敢えて普段の自分とは違う動きをして。多分、あの9番がやってるのはそういうことだと思う」
「わざと自分のリズムとは違うプレーで前田に読まれないようにしてるってことか」

高橋が頷いた。
他の選手プレーを真似ることで、自分のリズムを前田から隠す。
毎回違うリズムのプレーをすれば、前田に読まれることは無い。

「ディフェンスも同じだ。プレッシャーかけたり、間合いを大きく開けてみたりしてね」

近い距離でスティールを狙うディフェンス、ドライブを警戒して退いて守るディフェンス。
佐藤は様々なディフェンスを前田に仕掛けていた。
説明を聞き終えた小嶋が、また聞き返す。

「でもさ、自分のリズムじゃなくてまともにバスケ出来る?」

当然の疑問だ。
シュートの練習で数えきれないほど打ってきたシュートは、当然自分の一番打ちやすいリズムのシュート。
他の選手のシュートを真似て、簡単に決まるものではない。
ドリブルもパスも、ディフェンスもそういうものだ。

「だから驚いてるよ……違和感を感じながらプレーしてるのに、あの帝桜が相手なのに、シュートが決まるんだから……器用なんてもんじゃない」

普通ではあり得ない。
リズムは、自分に染みついた体の自然な動き。
自分のリズムとは違うリズムを見せるということは、それを抑制しなければならない。
常に矯正を受けながらプレーしていることになる。
コート上、前田も素直に佐藤に称賛を送る。

「驚いたよ……ほんっとに上手いね。技術の幅はあの10番より広い」
「身長無視すれば、全部のポジション出来るかな」

元々はパワーフォワードの選手。
中学では最終的にスモールフォワード、そして今ではガードだ。
さらにはセンター気味のフォワードもこなしていた。
レギュラーを勝ち取るため、どんなポジションでもこなす必要があったのだ。

(あれれ、あっちゃんはダメみたいだね……マジかよ)

ボールを運ぶ大島に対し、前田は胸元で手を交差させる。
バツの字を作ってボールを貰うことを拒否したのだ。
仕方なく大島は逆サイド、山本にパスを入れた。
シュートを狙う山本に対し、玲奈がチェックに出る。

(まあいいや、他にいくらでも点を取れる場所はある)

一歩だった。
たったの一歩で、山本は玲奈を抜き去った。
ヘルプに出た宮澤を見て、増田にパス。
ジャンプシュートが決まった。

「玲奈ちゃんがあんな簡単に抜かれるなんて……!」
「もう体力が限界なんだ!」

再び20点差で十桜のオフェンス。
ボールは佐藤に渡る。
今の十桜にはオフェンスの切り口はこの1対1しかない。
しかし、佐藤がドリブルで仕掛けても前田を抜くことができない。

「リズムうんぬんの前に、敦子は1対1が強いんだ。そう簡単には抜けない」

篠田は実際に対戦経験がある。
高橋たち、袖無学園も、珠理奈が目の前で抑えられたところを見ていた。
ましてや佐藤は自分のリズムを隠している。
それで突破できるほど帝桜のエースは甘くなかった。
オフェンスが止まろうとしたとき、突然宮澤が中へ切り込んでくる。
すかさず佐藤はパスを出し、宮澤はゴール下で受け取った。
ゴール下まで行けば、増田との勝負は圧倒的に有利になる。
そのままシュートを押し込んだ。

「……今のは? 帝桜らしからぬミスじゃない?」
「もしかすると、9番が敦子に一矢を報いた効果かもね」

帝桜のオフェンス、今度は前田がボールを貰う。
ドライブでディフェンスを引き付け、山本にパスを出す。
外で受け取った山本がスリーポイントシュートを打つが、決まらない。

「ここまで、前田敦子は完璧だった。ディフェンスで抜かれることはまず無い。オフェンスでも。前田がボールを持てばシュートは決まってた」

恐ろしさまで感じた前田のプレーを高橋は思い出していた。
オフェンスでもディフェンスでも一切の隙がない。

「それをあの9番は狂わせた。確かに1対1で勝ったわけじゃない。でも狂わせたことには間違いない」
「だから帝桜自体もリズムがおかしくなってるってこと?」
「一瞬、前田のヘルプが頭をよぎったときに、宮澤に入り込まれたんじゃないかな」
「まあ確かに、オフェンスも今までみたいに楽々シュートは決まんなくなったよね」

前田にボールを入れとておけば大丈夫。
前田のヘルプは出なくても大丈夫。
それじゃダメだと分かってはいても、ここまで上手くいきすぎると慣れてしまう。
そのわずかな慣れが上手くいかなくなったときにリズムを狂わせる。
ボールは前を走る指原に渡る。
大島に追いつかれたのを見て、指原は外にパスを送った。
そこに走ってきた佐藤は、ボールをキャッチして止まる。

「さすがにこの距離は、自分のフォームじゃないと無理」

スリーポイントの外、シュートに入る。
今度こそ、チームメイトの見慣れた、佐藤亜美菜のシュートフォーム。
そのシュートが見事に決まって、第3ピリオドが終了した。

「15点差! 亜美菜ナイッシュ―!」

北原と大家がすぐに佐藤に駆け寄った。
まだ15点もの得点差がある。
それでも、20点からさらに離れようかとしていたところを、何とかしのいだのだ。
それは間違いなく佐藤の活躍だった。
ベンチで座って安西の話を聞く5人をぼうっと見つめている珠理奈の肩を、高柳が軽く叩いた。

「珠理奈ちゃん、疲れてるのは分かるけど、もっと元気出してよ。ここからってところなんだからさ」
「あ、うん……そうだね」

高柳の言葉にハッとした様子で珠理奈は笑ってみせるが、高柳が目を離したときには、下を向いていた。
ベンチでチームを盛り上げなければならないのは分かっていても、今の珠理奈にはそれが出来なかった。
前田との対戦が頭から離れなかった。
何もさせてもらえなかった映像が蘇り、唇をかみしめる。

「やっぱ凄いな……亜美菜さんや玲奈は……私とは違う」

20点以上の差を縮めたとはいえ、15点。
大差であることには変わりはない。
しかし、この状況を悲観していない者もいる。

「めちゃくちゃ厳しいけど、まだ分かんない」
「3ピリ終盤は間違いなく十桜のペースでしたからね」

渡廊高校の菊地と渡辺だった。
それは、根性論ではない、冷静な分析。
バスケは大量に得点が入り、幾度となく攻守が変わるスポーツ。
だからこそ、片方が守って決める展開が続いただけで、一気に得点差が縮まることもある。
見えないが間違いなく存在する、試合の流れ、によってはまだ分からないと言い切れる。
しかし、菊地は、その可能性を見出す反面で、険しい表情で付け加えた。

「でも、まだ無理だ。このまま逆転できるとは到底思えない。前田敦子はもっと……圧倒的なんだ」

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

前田を止めるにはやっぱり…

Re: タイトルなし

> キラさん

コメントありがとうございます。
そうですやっぱりです。
もうちょっと待っていただくことになりますが。

No title

初コメです。

ずっと前から読んでて、いつコメントしようか迷ってたんですが、
今します。

帝桜強い・・・

<質問>
あとどれくらい続く予定ですか?

Re: Re: No title

> > クルムルさん
>
> コメントありがとうございます。
> ずっと前から読んでいただけているとは、嬉しい限りです。
> 長いですよね……。
> 今のところざっと考えるとあと10話くらい続きそうです。
> 本当にざっと見積もっただけなので、それより短くも長くもなります。
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ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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