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「スラムダンクはできないけれど」第74話

第74話「交代」

「見事すぎて、ぐうの音も出ない」

周りが押し黙る中、篠田がやっとこさで声をしぼる。
20点の差、第3ピリオド開始からあっという間の出来事。
試合を決定づける点差。
反撃の隙を与えることなく、帝桜はそれを完了した。

「2人の松井をつぶして。ツインタワーしか頼れなくなったらそこを梅田投入でつぶす。帝桜としては予定調和の結果だろうね」

全ては秋元康の作戦通り。
前半で玲奈を使い切らせる所から始まっていた。

「何が凄いって、梅田がスタメンじゃないってこと。あれだけの選手をツインタワーつぶし一点投入で起用できる選手層の広さ。隙は無い」

ツインタワーのコンビネーションを読み、そして実際にパスカットできる選手がまず少ない。
それでいてインサイドとアウトサイドを行き来するため、梅田の運動量はもちろん他の選手に比べて多い。
山本のような他のすぐれた選手がいなければ、まずこの作戦は実行できない。

「なんか……なんかあるでしょ? まだ第3ピリオドだよ……?」
「少なくとも私には、打開策は見つからない」
「だってあの十桜だよ!? 今までだってどんなに突き落としたって上ってきたじゃん!」

淡々と篠田が語る分析を聞いても、小嶋は状況を受け入れられなかった。
十桜の、勝負に対するしつこさは自分が一番よく知っていた。
もう負け、などと簡単言われても、納得できるはずがなかった。

「しょうがないじゃん……私だって悔しいよ」

それは篠田も同じだった。
他人事のように試合を見ていても、自分が負けたチームであることは小嶋と変わりない。
コートでは、玲奈がドライブを仕掛ける。
相手は自分より低い、そしてツインタワーへのディフェンスで体力を消耗している梅田だ。
状況を打開する最後の突破口だった。

「もう前半のキレは無いね……やらせないよ」

しかし、抜ききれない。
ディフェンスが縮まってきたところで、外から切り込んできた宮澤にパスを合わせた。
いつもならここから秋元にパスを合わせる場面。
すぐさまそのパスコースに梅田が寄ってくる。
宮澤の頭には、この試合何度も許したターンオーバーがちらつき、パスが出ない。
外の珠理奈へのパスコースは前田に切られていた。
そして足が止まったわずかな時間で、ディフェンスに囲まれる。

「この……!」

囲まれながら無理やり打ったシュートは当然入らない。
リバウンドを制した光宗から大島、前田とあっという間にパスがつながる。
この試合何度目か分からないほど見られた速攻のパターン。
珠理奈が回り込んだ瞬間、前田は膝を曲げる。

(またスリーか……!)

そのチェックに珠理奈の腰が浮いたところ、前田がすり抜ける。
後ろから珠理奈がブロックに飛ぶが追いつかない。
レイアップが決まった。

「これで……22点差……」

このシュートで、明らかに歓声の種類が変わった。
安堵の声が混じり、応援に『中身』が無くなった。
チームが勝利するための力になるように、という必死の声が消えた。
試合を楽しむだけの声になった。
『決まった』と具体的に聞こえたわけではなくとも、その会場の雰囲気は間違いなかった。
試合は終わっていた。

ブザーが鳴った。
都立十桜高校タイムアウトのブザーだった。
誰も口を開けないまま、5人はベンチへ戻った。
それは、安西の指示が始まってからでも同じだった。

(これは作戦どうこうの問題じゃないな)

安西から見て、ただ息を切らして作戦盤を見つめるだけの5人の耳に自分の声が届いているとは思えなかった。
そしてそれは事実だった。
点差とその内容がひたすらに、5人の頭の中を埋めていた。
ふむ、と息を吐き、安西は説明を途中で切り上げると、1つ、交代の指示を出した。

「まるで通夜会場。顔が死んでるな」
「菊地さんもこんな感じでしたけど。前田にやられたときは」
「げっ、マジで?」

いやあ、と菊地は照れた様子で頭をかく。
渡辺はそれを笑いながら、菊地に問いかけた。

「菊地さんだったらこの場面どうします?」
「松井玲奈交代でしょ。休ませて体力回復させる」
「私もそう思います。もうそこに賭けるしかない」

松井玲奈の爆発力。
ここまで帝桜に唯一通用した十桜の武器。
もう一度、その奇跡に賭けるしか、十桜に勝機は無いように見えた。

「でも、そう簡単に上手くいくほど、神様は十桜に味方してくれないと思うけどね」

それでも極わずかな可能性。
前半の松井玲奈の体力の消耗の仕方を考えれば、少し休ませただけで回復するものではない。
もしもう一度、松井玲奈がゾーンに入れたとしても、追いつける点差でそれを迎えられるかも分からない。
タイムアウト終了を告げるブザーが鳴る。
先にコートに出てきたのは帝桜だった。

「梅田と代わってまた山本が戻るか」
「やっぱりあのツインタワー封じは体力消費がやばそうですからね」

ある意味で自分のマークマンとツインタワーの3人を同時に守ることになる梅田の役割は長くは続けられない。
それでも十桜にトドメを差すには十分すぎる活躍だった。
対する十桜は、菊地と渡辺の予想通り、佐藤亜美菜が立ち上がりユニフォーム姿になった。
松井玲奈に代わるシューティングガードである。
しかし、コートに5人が揃ってみると、菊地と渡辺は驚かされることになった。

「あれ、松井玲奈いるじゃん」

出てきた5人の中には間違いなく11番、松井玲奈がいた。
もちろん、同時に佐藤亜美菜もコートに立っている。
予想の虚を突かれ、一瞬、誰がベンチに戻ったのか分からなかった。

「え、珠理奈ちゃんが……下がった?」

コートに出てこなかったのは、珠理奈だった。
松井珠理奈と代わって、佐藤亜美菜。
菊地、渡辺と同じ予想をしていた者は多かったらしく、会場はざわめいた。

「確かに松井珠理奈じゃ前田は止められなかったけど、それは誰がやっても同じ」

前田の凄さはここまでで充分に分かっている。
勝てるとしたら、体力を回復した、つまりはゾーンに入る可能性のある松井玲奈。
それしか考えられない。

「10番を下げるか……何を考えている、安西君」

秋元康がいぶかしげな表情でコートを見つめる。
十桜のオフェンスでゲームは再開された。
ボールは交代したばかりの佐藤に渡った。
マークに付くのは同じく交代直後の山本だった。

「行け! 亜美菜!」

ベンチからの声援を背に受けて、佐藤はドライブする。
中学時代から得意だったドライブだ。

「やらせんわ」

しかし、山本は反応する。
すかさず放った切り替えしにもついて来られ、シュートまでいけない。
そのわずかな間にディフェンスが収縮し、囲まれる。

「ドリブル止まった! 潰せ!」
「……まだだっつーの!」

ディフェンスに挟まれる直前、鋭いバウンドパスが佐藤から秋元へ渡った。
そのままゴール下シュートを決める。

「9番からゴール下秋元! 狙いはこれか?」
「そんなのすぐ帝桜だったら対応してきますよ。今のはラッキーみたいなもんですよ」
「だよねえ」

未だに玲奈をコートに残す理由ははっきりしない。
それでもとりあえずは、この佐藤から秋元への合わせの得点で、点差が20点になった。

「やり返したるわ」

山本がパスを要求する。
1対1で止めたとはいえ、佐藤のパスから生まれた得点。
出てきて早々にやられっぱなしで終わるわけにはいかない。
ボールを受け取る前、相手の位置を確認する。
しかし山本は、その目の前の相手を見て、首をかしげた。

「……なんで11番がいるんや?」

自分をマークしている相手は松井玲奈。
ディフェンス時、さっきまでマークしていた佐藤亜美菜ではない。
それは、単純に入れ替わっただけだった。
そのマッチアップに会場は、玲奈をコートに残した時以上に、ざわめいた。

「5番、オーケー」

佐藤が指をさしてマークマンを確認する相手は、前田敦子。
その身長差が故に、前田を見上げる形になる。
間違いなく、前田のマークは佐藤だった。

「てっきり11番がついてくるかと思ったけど……咳払いで追い払うよ?」
「やれるもんならやってみろ」

ニヤリと前田が笑う。
キッと佐藤もにらみを利かせる。
第3ピリオド終盤、終わろうとしていた試合が、もう一度その重い腰を上げようとしていた。

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

珠理奈が下がった∑(゚Д゚)

超驚いてます((((;゚Д゚)))))))

Re: タイトルなし

>キラさん

コメントありがとうございます。
果たしてこの交代にはどういう意味があるのか。
こうご期待です(笑)
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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