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「スラムダンクはできないけれど」第73話

第73話「十桜崩壊」

「点差は2点……これが決まれば同点だぞ」

第3ピリオド、十桜初めの攻撃。
指原から玲奈へ、パスは渡った。
山本がディフェンスに張り付く。
グッと玲奈が前傾姿勢をとったが、すぐにまたその足を退いた。
前半までならそのままドライブを仕掛けていた場面、玲奈はパスを指原へ戻す。
玲奈に頼り切っていた指原は、どうした、と言わんばかりの表情で玲奈を見つめた。

(大島さんの言った通りや。急におとなしくなった)

玲奈の変化に山本はすぐに気付いた。
先ほどまでに比べると、動きが明らかに鈍い。
マークを外す動きだけでも違いがある。
それは、自ら敢えてペースを落とした類の動きでは無かった。

「……ガス欠? どゆこと、ゆきりん?」
「あれだけのプレー……反動は当然返ってくる。試合終了で使い切った状況とは違う」

極限の集中状態で普段以上の力を引き出す。
その分体力の消耗が大きいのは当たり前のことだった。
それを見越して帝桜は無理にそのペースについていかなかった、と高城と倉持に、柏木は第2ピリオドを分析してみせた。

「ディフェンスをかわすために一歩踏み出した瞬間分かる。自分はもう限界ギリギリだって」
「それでも……松井玲奈があれだけ活躍しなきゃ、試合は第2ピリオドで終わってた。そうでしょ?」

玲奈の異常は明らかだった。
外から見ていて分かるほどに、息を切らし肩を揺らす。
他の選手と比べて著しく消耗していた。
玲奈にパスを出しても前半のような結果は望めない。
それならば、と指原は珠理奈にパスを振った。

(何でここまで動きを合わせられるんだ……!)

しかし珠理奈は未だに前田を攻略できていなかった。
得意のドライブを仕掛けてもマークを外せない。
無理に打ったシュートはリングに嫌われる。
そして、前田のオフェンスも止められない。
ドライブからのストップジャンプシュート。
これだけで、得点を奪われる。

(何にもできない……!)

前田のシュートが決まる度に、珠理奈の中の絶望感は増幅された。
不思議な感覚で抜かれ、とにかく異常な精度のシュート。
何をしても止められないものにすら思えてくる。

「頼みます、宮澤さん、秋元さん!」

十桜のオフェンス、パスはハイポストの宮澤に飛んだ。
シュートフェイクからドライブ、そしてゴール下で秋元に合わせる。
珠理奈も玲奈も動けないとなると、ガード指原の頼みはツインタワーだった。
ディフェンスの増田も光宗も、1対1では負けていなかったが、ツインタワーのコンビネーションにはまだついていけなかった。

「十桜はツインタワーで攻めるしかないか」
「帝桜、対応できて無いっぽいしね」

倉持と高城が、シュートを決める秋元を見ながら頷いた。
全国トップクラスのインサイド、ツインタワー。
ここまでチームを支えてきた柱が、踏ん張りを見せる。
しかし、柏木の目は、もう帝桜のベンチだった。

「いや……帝桜はもう次の手を打つ」

珠理奈の前田へのファウルで時計が止まる。
交代のブザーが鳴った。
帝桜のベンチから登場したのは、宮澤と秋元が良く知る人物だった。

「梅ちゃん……!」

かつてのチームメイト、梅田彩佳が、山本と交代した。
目は合うことはあっても、特に秋元と宮澤とは言葉は交わさず、梅田は自分のポジションについた。
それが2人にとっては、不気味だった。

「何をしてくる……?」

梅田に関心が集まる中、帝桜のオフェンスは、前田から増田というコンビでの得点だった。
出てきた梅田はボールに触れてすらいない。

「ただ山本を休ませるだけ?」

ディフェンスはそのまま、玲奈についた。
10センチの身長差があるが、ヘトヘトの玲奈相手はミスマッチにならない。
梅田投入の理由を把握できない周りを見て、秋元康はニヤリと笑った。

「将棋と同じだ。少しずつ追い詰める」

先ほどと同じように指原は宮澤にパスを入れた。
宮澤のドライブから、秋元へのパス。

「同じことはやらせない!」

それに対応して光宗がチェックに出る。
秋元は、もう一度宮澤にパスを戻した。

「同じじゃないね!」

裏に抜け出した宮澤がパスを受け取る。
その直前だった。
突然横からディフェンスが現れボールをさらった。
それは光宗でも増田でもなかった。

「梅田がスティール!」

すぐにボールは、走り出した大島に渡り、そのままレイアップシュートが決まった。

「ナイディ! 梅ちゃん!」

シュートを決めた大島と梅田がハイタッチをかわす。
帝桜の大応援団が歓声を上げた。
攻撃の主軸になっていたツインタワーからスティール。
ガードの指原にとって嫌な感覚がしていたが、それでもインサイドにパスを入れるしかない。
秋元から宮澤にパスを狙う。
しかし、そのパスコースにまたも梅田が入ってくる。

「外!」

フリーになった玲奈がパスを要求する。
秋元からのパスを受け取るも、すぐに大島が張り付いた。

「きっちりローテ―ションしろよ!」

他のパスを玲奈が見るも、大島がついていた指原にはもうすでに前田がついていた。
反対側の珠理奈に梅田がつく。
マンツーマンディフェンスの基本、ローテーションが見事に行われる。

「完全に読んでるね。ツインタワーをあそこまで封じるとは」

高橋が感心の声を漏らす。
梅田がインサイドのヘルプに出るようになってから、ツインタワーの攻撃は止まっていた。

「増田と光宗で誘導して、梅田がパスカット。あれは厳しい」

ツインタワーを知り尽くす、増田と梅田。
それに光宗を加えた3人を前に秋元と宮澤は苦戦していた。

「だからパスは読まれてるっての!」

宮澤は苛立ち、声を荒げた。
秋元とのコンビが全く機能しない。
ここまで止められたことは今まで無かった。
秋元が強引にシュートを打つも、入らない。

「変わってないね。2人とも」
「中学からの癖が取れてないわ」

ツインタワーの失速でついに十桜の得点はピタリと止まった。
徐々に点差が開き始める。
秋元康はその状況を見て、満足気に頷いた。

「11番はガス欠。10番は前田に完全に抑え込まれた。両翼は機能していない。頼みの綱のツインタワーも封じた……さあ、詰むぞ」

ボールを運び、パスを見る指原は、この状況にある種の恐怖を覚えた。
パスの出しどころがない。
外も中も、どこからでも点が取れる強力なフォワード陣が十桜の強み。
しかし、今、その強みは完全に失われていた。
珠理奈、玲奈、ツインタワーと、帝桜ディフェンスは完全に十桜のオフェンスを封じていた。
そして、自分の目の前にいるのは。

(日本代表の大島優子……無理! 絶対無理だって!)

指原が怯んだ隙をついて、大島は一気に距離を詰める。
突然仕掛けられたそのプレッシャーになすすべなく、ボールは指原の手から離れた。
大島のスティールからの速攻で、得点は10点差になった。
前半こそ、その10点差から玲奈の活躍で粘りを見せた十桜だったが、もうそれはない。
10点から先は早かった。
十桜がろくに得点できない間に、帝桜がどんどん点数を積み上げる。

(何とかしないと……!)

その気持ちだけが空回る。
特に珠理奈は、前田との実力差に打ちのめされていた。
オフェンスで抜けないなら、ディフェンスだけでも、と意気込んでも前田を止められる気配は無い。

(どうにかしてシュートを落とさせないと!)

帝桜の速攻。
大島からパスを受け取った前田の前に珠理奈が回り込む。
その間合いを見て、前田はシュートを放った。
散々ドライブで抜き続けた珠理奈をあざ笑うかのような、スリーポイントシュートがリングに突き刺さる。

「ここまで……差があるのか……」

ついに点差は20点。
珠理奈達とここまでしのぎを削り合ってきた、篠田に、高橋、峯岸も小嶋も、そして柏木、高城、倉持もこの光景には言葉を失った。
今まで十桜が劣勢の場面はいくらでもあった。
しかし、ここまで打つ手がない状況は、この試合が初めてだった。

「20点。崖っぷちか」

そしてこの試合を観戦するもう1校。
十桜とも帝桜とも対戦経験のある学校。

「マジでやばいっぽいね。あの松井珠理奈が笑ってない」

渡廊高校の菊地あやかが珠理奈を指さした。
鮮明に記憶に残る、ニヤリと笑って相手に向かう珠理奈の姿はコートには無かった。

「珠理奈ちゃん……」

笑顔の消えたエースを、不安の表情で、渡辺麻友は見つめていた。

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

珠理奈に変化がないと点差は
広がっていく…
でも、前田がすごすぎる…

Re: タイトルなし

> キラさん

コメントありがとうございます。
前田強すぎですね。
展開をお楽しみにです。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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