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「スラムダンクはできないけれど」第72話

第72話「リズム」

玲奈にパスが渡る。
シュートを狙う。
山本がチェックする。
それでも打つ。

(このチェックで躊躇なく打つんか……!)

そしてシュートは決まる。
このシュートで点差は3点まで縮まった。

「十桜11番が止まらねえ!」

第2ピリオド終盤、会場は異様な雰囲気に包まれていた。
序盤こそ帝桜が突き放すように思えたが、中盤から終盤にかけて、十桜は玲奈の活躍でみるみる差を縮めた。

「くっそー。何点取られてん、私は」

山本が唇をかみしめた。
身長差のミスマッチになる状態で、今の玲奈を止めるのは至難の業だった。

「そんな気にすんなって。きっちり取り返していけばいいんだから」

大島が声を掛ける。
山本の肩にポンと触れて、ボールを運ぶ。
大島の言葉通り、帝桜のオフェンスが止められているわけでは無かった。
ただそれ以上に玲奈が点を取った結果が今の点差になっている。
2点をとっても、スリーポイント、あるいは3点プレーで返ってくる。

(きっちり……とは言っても、あいつの近くにボールを回すわけにはいかないな)

流石に1人で帝桜5人を止められるわけではない。
それでも今の玲奈の守備の範囲は驚異的だった。
大島は玲奈とは逆サイドに移動した前田にパスを出す。

「やっぱ攻めるならそこでしょ」

前田が珠理奈を抜き去る。
この試合ここまで100パーセントの当たりを見せているジャンプシュートが決まった。
精密機械のように外れることがない。
そして逆に、珠理奈はここまで前田のオフェンスを一度も止めきることが出来ていない。
帝桜はこのピリオド、完全に火のついた前田で攻め続けていた。
何度も抜かれる姿を見て、小嶋は黙っていられない。

「また前田じゃん……やられすぎ」
「完全に狙われてるね」
「あそこまで置いてかれるかな。別にそんなに速くなくない? 前田敦子」
「うーん……どうなんだろ」

小嶋と峯岸の言葉は間違ってはいなかった。
確かに前田のドライブは鋭くキレがあるが、大島ほどのスピードがあるわけではない。
珠理奈が簡単に抜かれるのは、理解できなかった。
それはコート上の珠理奈自身も感じていることだった。

(こんなの今まで無かった……『抜かれた理由が分からない』なんて)

前田に抜かれた珠理奈が受けた感覚は体験したことがなかった。
スピードで振り切られたのとも、パワーで押し込まれたのとも、フェイクで引っかけられたのとも違う。
反応できるはずなのに、何故か差し込まれている。
その謎は、コートの外、篠田麻里子が知っていた。

「あの感覚は凄いよ。マジで抜かれるから」
「え、なに、まりちゃん分かるの?」
「一度やられてるからね」

口で言っても難しいと思うけど、と篠田は前置きした。

「敦子本人から聞いたんだけど……彼女は相手の『リズム』が読めるらしい」
「リズム?」
「バスケに限らず、人にはそれぞれ固有のリズムがあるんだってさ」
「意味わかんない」
「だから口で言っても難しいって言ってんじゃん」
「つまり無意識に出てしまう動きの特徴を読み取って対応してるってこと?」

すぐに口を尖らせる小嶋の横から高橋が口をはさんだ。
小嶋よりはまだ理解があると踏んだ篠田は高橋に向かって続けた。

「そういうこと。初めての相手でも、まるで何年間も同じコートで練習した相手のように体が動く、らしい」
「オフェンスでは相手のリズムに合わせて、ディフェンスでは逆に相手のリズムの隙をついてるのか」
「それでいて、データの研究は絶対に怠らない。感じるバスケと考えるバスケ両方を使ってる」
「恐ろしいね……前田敦子」

高橋は息を飲む。
改めて前田を見てみると、その淡々としたプレーが全て脅威に感じる。
そして篠田と同じような深刻な表情に変わってしまう。

(松井珠理奈……もう大体わかってるでしょ。私をゾーンから引っ張り出したもう1人は……そいつだよ)

その苦い試合を思い出しながら、篠田はボールを受けた珠理奈の背中を見つめた。

(ダメだ……抜けない!)

篠田達が前田のそれを分かっていても、コート上の珠理奈に伝わることは無い。
以前として『謎の感覚』のまま、珠理奈の試合は進む。
ドライブを仕掛けるも、前田に抑えられる。
すぐに指原に戻して、玲奈にスクリーンをかける。

(とりあえずここは玲奈に任せるしかない)

玲奈のドライブが決まる。
ゴール下で秋元が合わせてシュートが決まった。

「それでも松井玲奈で追いすがる……」
「帝桜でも止められないなんて、すごいね」

深中高校、倉持明日香、高城亜樹が淡々と呟く。
前日、最後の最後で逆転を許した相手。
しかし玲奈の動きは、あれに負けたのなら仕方がない、という諦めすらも思わせるプレーだった。
涙も出し切った今日となっては、純粋に十桜を応援するしかなかった。
その気持ちはもう1人も変わらない。

「でも、帝桜も本気で止めにかかってない。多分」

2人の言葉に対して柏木由紀が言った。
なんで、と高城が聞き返す。

「簡単な話だよ。2ピリ終わればすぐ分かると思う……」

玲奈の猛攻は続いた。
マークマンを抜き去り、1枚や2枚のヘルプじゃ動じない。
異常なまでのシュートの当たりを見せた。
そのプレーは観客を圧倒し、一躍『都立十桜の11番』を印象付けた。
帝桜を見に来たが、すでに玲奈の応援に変わった者さえいた。
記録以上の凄みを感じさせて、第2ピリオドは終了した。

「36対34……それでも帝桜がリード……!」

気づけば逆転、とは逆の感覚であった。
あれだけ玲奈が攻めたにも関わらず、結局一度も帝桜はリードを譲らなかった。
決められてもきっちり返す。
帝桜のバスケットはこの第2ピリオド、全く揺らがなかった。

「前半終えて2点差。これイケるんじゃない? だってまりちゃんのときは20点差だったのに逆転したし」
「その試合を思い出させないでよ」

ハーフタイム、両チームの選手はロッカールームへと戻っていく。
コートでは次に試合を控えるチームのアップが始まっていた。

「今からこの試合見る人は驚くんだろうね。この点差」

玲奈の爆発があったとはいえ、結果として2点差。
『勝って当たり前』の帝桜高校を見に来た観客には動揺が走る。
帝桜と20分試合してワンゴール差で終えることなど、普通はありえない。

「うーん……でもなあ、2点差の内容がちょっと」
「内容?」

後半開始3分前になる。
両チームの選手がコートに姿を現した。
淡々とシュートを打ち始める。

「ほら、前半は松井玲奈で十桜は持たせたようなもんでしょ」
「後半もそれで行ってもいいんじゃないの?」

後半開始1分前になる。
監督が指示を終える。
両チーム前半と同じ顔がコートに揃った。
マークも全く同じだった。

「いや、もう前半のような松井玲奈の活躍は無いよ」

インターバル終了のブザーが鳴った。
十桜ボールで試合は再開する。
玲奈からボールを受けた指原がボールを運び、十桜の攻撃が始まった。
じっと様子を見守る帝桜監督、秋元康はくいとメガネを上げて、呟いた。

「後半……この第3ピリオドで勝負を決めようか」

試合は折り返し地点。
帝桜2点リードで、決着の後半戦が始まる。

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

後半か…

玲奈だけでは勝てないな…

あとは誰が…

Re: タイトルなし

> キラさん

コメントありがとうございます。
麻里子様やゆきりんの言葉の真意は、と言ったところでしょうか。
楽しみにしていてください。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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