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「スラムダンクはできないけれど」第69話

第69話「帝王への挑戦」

「あ、まりちゃん!」
「おお、にゃろー!」
「ホントに知り合いだったんだ……」

手を振っているのは、日本代表の篠田麻里子。
その相手が同じチームの小嶋陽菜であるのだから、隣にいる高橋と峯岸にとっては不思議でしょうがない。
当の小嶋はさっさと篠田の隣の席に座ってしまったので、遠慮がちに2人もその隣に座った。
篠田を挟んだ反対側には、どうやら上麻高校の他の選手が座っているようで、突然現れ篠田と気さくに話し出す小嶋を不思議がって見ている。

「どっち応援するの? まりちゃんは帝桜の2人とも仲いいんでしょ?」
「確かに敦子と優子どっちも仲いいけどさ……まあ十桜でしょ」
「私もー」

篠田と小嶋がキャッキャと話している間にも、観客席はどんどん埋まっていった。
ベスト4が決まる試合、それも帝桜高校となると、注目度は高い。
いつにも増して、広いアリーナは騒がしく、次の試合を待っていた。
試合終了3分前、コート脇に姿を現しただけで歓声が起こる。
そして、待ちに待ったそのときがやってくる。
試合終了と同時、両者が向かい合いエンドライン上に整列した。

「出てきたー! 帝桜高校!」

アップが始まると、コートの外ではベンチに入れなかった部員による掛け声が唸りを上げた。
バンバンとメガホンを叩く音が聞こえ始めた。
それが、さらに大きくなる歓声と混ざって異様な雰囲気を作り出す。
そんな中で帝桜選手は淡々とレイアップをこなしていった。

「うわーこりゃきつそうだね」
「心折れるわ」

高橋と峯岸が不安のまなざしを、対する十桜サイドに向ける。
周りに声をかき消されながらも、帝桜と同じようにアップをこなしている。
その少ない部員数も相まって、パッと見では到底勝負になるようには思えない。
しかし意外にも、その部員たちの顔をよく見ると、焦りや緊張はそこまで感じられなかった。
それぞれが自信を持って、試合と向かい合っていた。

「もう都立十桜はただの無名校じゃない……ここまでたどり着いた強豪校だよ」

そう言って篠田は自分が負かされた試合を思い出していた。
袖無学園の3人も同じだった。
得体のしれない公立高校と始めは思っていたはずだったのに。
今では帝桜と渡り合うに十分なチームであると感じるようになっていた。

「ホント、成長の早いチームだ」

試合までの残り時間が3分を切り、集合の声がかけられる。
両チームの選手が監督を中心に集まった。
スタートの5人が言い渡され、安西が最後の言葉を送る。

「うーん、あんまり精神論は言いたくないんですけど、やっぱりまずは気持ちですよ。この試合は。退いたら負けです」

攻め気を少しでも失えば、そこを相手に付け込まれる。
そしてさらに差が開く。
実力以上の大差がつく試合が少なくないのも、それが原因だ。
しかしそれは逆に、実力をひっくり返すこともある。
安西の言葉に全員が頷き、秋元を中心に円陣を組む。

「よし……今日はいつも以上に気合入れる」

サッと出された秋元手に次々と手が重なる。
部員全員の手が一つになる。

「十桜ううううう……ファイッ!」
「オオオオオオオウリャアアア!」

十桜のそれに疎らな拍手が起きる中、秋元、宮澤、指原、玲奈、珠理奈がコートに出る。
同時に、帝桜のスターティングメンバー、大島、山本、前田、増田、光宗もコートに現れ、向かい合う。
審判が間に立ち、帝桜の白いユニフォーム、十桜の赤いユニフォーム、そして2つのゴールを指し示し、試合中のそれぞれのチームの呼び方を確認した。
挨拶が行われ、試合開始が迫ると、応援の声が一層大きくなり、その場の緊張感は最高に達する。
会場中の視線が審判の持つボールに集中する。
センターサークルでは秋元と光宗がにらみ合う。
都立十桜高校、この大会最大の挑戦が始まる。
ボールが舞った。

「互角!」

ジャンプボール、秋元と光宗は同時にボールに到達し、そのボールは横に弾かれた。
それに大島がいち早く反応し、ボールを掴む。
同時、山本、前田が前を走り、あっという間に速攻の形が出来る。
どちらかへのパスを、すぐに大島は構えた。
しかしその動作は途中で、ピタッと止まった。

「1本。まずは1本ね」

ゆっくりと大島がドリブルを突き始めた帝桜の攻撃で、ついに試合がスタートした。
シュート1本、と応援が鳴り響く。
何の変哲もない試合開始ではあるが、もうすでに勝敗へ向けて試合は動き始めている。

「十桜、戻り早かった」
高橋の言葉に篠田が頷いた。
「速攻を出させなかったのはデカいね。あれで簡単に先制されるかどうかじゃ全然試合の流れが違うと思うよ」

ジャンプボール直後の速攻は帝桜の十八番であり、まずはその先制点で流れを掴む試合がほとんどだ。
この試合も同じように帝桜はそれを狙ったが、大島がボールを持ったのを見て、すぐに戻ったディフェンスによって阻まれた。
まず1つ、帝桜の『当然』を破った。

―相手の『当然』をさせない。その積み重ねが勝利につながる。

試合前の安西の言葉だった。
帝桜に、いつも通りの、超強豪校の強さを、存分に披露されているうちは絶対に勝つことは出来ない。
少しずつ、普段と違う状況を作っていくことが、十桜の勝ち目だった。

「この1本目のオフェンス。これで帝桜がどういう狙いか、分かるかな」

パスはハイポスト、光宗に入った。
対するは秋元、1対1。
背中をゴールに向けた状態から、足を引き、光宗は秋元と向かい合う。

「来るぞ、才加……」

宮澤が言葉を言い終わらないうちに、光宗は秋元をかわしていた。
鋭いドライブで、秋元を抜き去りレイアップを決めた。
先制点、2という数字が帝桜のスコアに刻まれた。
途端に帝桜応援席は盛り上がり、ガンガンと鳴り物が鳴りだす。
帝桜ベンチでは監督秋元康がよしよしと手を叩く。

「まずはインサイド……チームの支柱を崩してみよう」

帝桜の狙いは十桜のツインタワーが支配するインサイドだった。
攻守ともに、技術面でも精神面でもチームの中心だ。
そこを敢えて狙い、勝負を早めにつける。
光宗とのスピードのミスマッチを狙う。

「先制されてからの1本。超大事」

篠田と袖無学園の3人は息を呑んで十桜の攻撃を見守る。
峯岸が言ったように、重要なのはこの返しの1本だ。
これで返せなければ、流れは相手に渡り、差が広がる。
ボールを運ぶポイントガード、指原の動きに注目が集まる。

「分かってましたよ、インサイドで来ることは」

安西がクイッとメガネを上げたとき、宮澤のパスから秋元のゴール下、押し込んで決まった。
帝桜がそうしたように、十桜もまた、インサイドで得点した。
大事な1本、十桜は見事に返して見せた。

「迷わず4番……読まれていたか」

うむ、と思わず秋元康はこの選択にうなった。
同じポジションでの1対1。
負ければそのポジションでの1対1を使いづらくなる上、試合の流れを決める1本目だ。
さらに加えて、それを背負うのはキャプテン秋元である。
先に点を取った帝桜に比べて、十桜の背負うリスクは大きい。

「負けませんよ……うちのインサイドは」

真っ向勝負。
それが、安西、序盤の選択。
ここまでチームを引っ張ってきたツインタワーを圧倒的に信じるという選択。
連続ポイントを取らせない。
また1つ、帝桜の『当然』をつぶす。
守りに入るつもりは毛頭ない、という意思表示だった。

応援団が声を張り上げる。
観客も、おそらく選手も、フワフワと浮ついた雰囲気の中、帝桜の攻撃が始まる。
両チームの得点は2点ずつ。
試合はまだ、始まったばかりだ。

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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