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「スラムダンクはできないけれど」第67話

第67話「前夜」

「お久しぶりです。秋元先生」

安西が小さく頭を下げた。
関係者用通路で待ち合わせた秋元はその声に気付くと右手を上げた。

「おお、安西君」

その右手が挙がるのに合わせてもう一度安西が頭を下げる。
関係者用ということもあり、廊下には他に誰もいなかった。

「まさかお互いがこんな立場で、全国大会の舞台で再会するとは思っていなかったよ」
「私も驚いています。明日の試合はよろしくお願いしますね」

秋元が差し出した右手を安西が両手で握る。

「強いんだね、都立十桜。いいチームだよ」
「いやー、帝桜さんこそ、ここ最近は負けなしですよね? 先生の采配には現役時代から驚かされてばかりですよ」

そうかな、と秋元は笑った。
秋元康がは明らかに選手の実力差がある試合でも大胆な采配で勝利を掴んできたことで有名だった。
数々の弱小チームを大物食いの勝利に導いている。

「でも」
「でも?」
「今大会で一番のサプライズを起こすのは、ウチですよ」

その言葉を聞くや否や安西を見つめる秋元の目は鋭くなった。
口調は変わらず柔らかいものだが、その目の違いは明らかだった。

「君にしては強気だね。『もっと強気で行け』って口うるさく言ったのが今になって効いたのかい?」
「いえ、今でも私は臆病なままですよ。ただ……試合の前から監督が物怖じしてたら、選手に悪いですから」
「なるほど……やはり変わったね。君は」

相対する2人の目は、もうつい先ほどこの廊下で目を合わせた時とは違う。
試合前の社交辞令、世間話をしている目ではない。
お互いが、勝たねばならない敵だ、と認識し合った目だった。

「じゃあ、また明日コートで会おうか」

秋元の言葉に頷き、改めて握手を交わすと安西はその場を去った。
その背中を見送り、秋元は先に選手が帰った宿へと戻ることにした。
関係者用通路を出てすぐ、数名の記者に囲まれた。

「秋元先生! 次の相手は初出場の都立十桜というわけですが、どう思われますか?」

ぶしつけに質問だけを投げかけてくる記者に腹が立ったが、それを顔に出さずに秋元は答えた。

「攻撃的でバランスがいいチーム。何より勢いが凄い。今大会で最も注意しなければいけない相手というつもりで戦います」
「何か、作戦等はもうあるんですか? いつものサプライズは?」

仮に策があっても言うわけないだろう、という言葉を口に出すのを秋元は抑えた。
そして不敵に笑う。

「やるべきことをきっちりやれば問題ないでしょう。そしてそれが出来るのがうちの選手です」

秋元は時計を見た。
もうそろそろ宿に戻る予定の時間だ。
まだごちゃごちゃと質問が聞こえていたが、挨拶をして、秋元は歩き出した。

「サプライズはありません……それでは」

宿に戻ると、部屋では選手たちがテレビを中心に集まって座っていた。
秋元に気付いてすぐに立ち上がって挨拶しようとするのを秋元は手を出して制した。

「どう? 都立十桜」

テレビに映るのは、都立十桜の試合映像。
その脇にはもうすでに見終わったビデオが積まれている。
振り向かずに答えたのは大島だった。

「間違いなく強いですよ。4番にゴール下で持たれたらやっかい」

センター秋元才加によるゴール下の得点は安定している。
チームのベースとなる戦法だ。
マークにつくことになる光宗が頷いた。

「ゴール下に行かせなきゃ大丈夫なんですけどね……それをさせないんですよ、5番が」

スクリーンをかけたり、自らが切り込んでディフェンスを引きつけたり。
コンビを組む宮澤佐江によって秋元は仕事場でボールを受け取ることが出来る。
この2本の柱が都立十桜を支えている。

「ツインタワーは私と彩佳が知り尽くしてるから何とかなるやろ。もっと言えばあっちゃんだってよく知ってる」
「うん。動きは格段に良くなってるけど、やってることは中学のときとあんまり変わってない」

同じ中学でチームメイトだった増田と梅田が、光宗にその動きを説明する。
ふむふむ、と光宗が頷く隣で、山本が口を開く。

「となると、やっぱりこの両翼ですよね」

山本が指を向けるは、10番と11番。
11番が外から射抜き、10番が中へ切り込む。

「中に気をやりすぎちゃダメですね。結局得点を取るのはこの2枚」
「11番どうする? あっちゃん行く?」

特に注意すべきは11番、それはもう皆が思っていた。
深中高校戦のラストを目の前で見ている。
さすがの大島でもあの11番、松井玲奈は警戒する。
問われた前田はノートを書いていた。
そして書き終えると、ノートから顔を上げ、首を振った。

「いや、私はやっぱり10番だ。11番はさや姉でいい。あの状態に入られたら多少の失点は仕方ない」

意外だな、と前田の言葉に大島は思った。

(あっちゃんならすぐに飛びつくと思ったんだけどな、11番)

今までもそうであった。
相手のエース、それと勝負するのは決まって前田。
そしてことごとく倒してきた。
今回もあれだけ記憶に残るプレーを見せつけられたなら、間違いなくマークは11番であるはずなのだ。
それを自ら避ける前田に一瞬心配になった大島だが、ふと目に入った前田のノートを見て、その不安は消し飛ぶ。
ノートには、黒い柄なのかと思うほどに、文字や図がびっしりと敷き詰められていた。

(誰よりも上手いのに研究の手は緩めない……私は一応キャプテンだし、皆に頼ってもらう立場だけど……やっぱり頼りにしちゃうよね……前田敦子ってやつを)

前田敦子が言うなら間違いない、という単純な答えが出る。
分かった、と大島は前田を見て頷くと、もう一度確認する。

「じゃあ、あっちゃんが10番、さや姉が11番だ」

はいっ、と山本が、コクリ、と前田が頷く。
最後にやり取りを黙って見ている監督秋元へ目を移すと、秋元康は何も言わずに頷いた。
よっしゃ、と大島が改めて気合の声を上げる。

「指原は私に任せてくれ……ボッコボコにしてやるぜー」
「うわっ優子さん怖いなあ」

どんな相手でも手は抜かない。
相手を過小評価して足元をすくわれる、なんて間抜けなことはありえない。
油断や慢心といったつけこまれそうな隙を確実に、帝桜は潰していく。
王者、帝桜高校、明日に控える都立十桜戦の勝利を、より盤石なものに仕上げていった。

「へっくちっ」
「大丈夫りのちゃん、風邪?」

鼻をすすりながら指原は、北原と共に安西の部屋へ向かっていた。
これから明日の試合に向けてのミーティングが開かれる。

「誰かが噂してんじゃない?」

見ていた宮澤が後ろから話しかける。
もちろん集まるのは指原たち2人だけではなく、部員全員だ。

「となると、帝桜の奴らが今頃『指原は要注意だ』って言ってるところですかね」
「おお、そりゃいいね。私もくしゃみ出ないかなー」

調子に乗るな、とさらに後ろから歩いてきた秋元に突っ込まれる。
いてっと頭を押さえつつ部屋へと向かう。
部屋に入るとすでに他のメンバーは揃っていた。
全員がテレビの前に集合すると、安西がビデオを再生する。
ギリギリではあるが試合に勝ち、ついに王者へ挑戦できる。
なごやかな雰囲気ではあるが、このとき、帝桜高校と戦う前に乗り越えなければならない壁があることを、彼女達はまだ知らない。

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

あっちゃんは珠理奈なんですね(^ ^)

何かありそう…

Re: タイトルなし

>キラさん 

コメントありがとうございます。
あっちゃんにどんな考えがあるのか、お楽しみです。
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ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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