スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「スラムダンクはできないけれど」第64話

第64話「柏木の切り札」

倉持がボールを運び、柏木にパスを出す。
柏木が受けた場所は、ハーフラインを過ぎたあたりの上のポジション。
仕掛け、があるような場所ではないが、珠理奈がディフェンスに付く。
すると突然、柏木がボールを頭上へと動かす。
そして膝を曲げる。
珠理奈がハッと気づいた時には柏木に抜かれていた。
ミドルレンジまでドリブルして、ジャンプシュートが決まる。

「何やってんだ珠理奈。あんな場所のシュートフェイク」

抜かれる直前、珠理奈は反応していた。
ハーフラインちょっとの、シュートのレンジとはとても考えられない場所でのシュートフェイクに。
そんなシュートを打つわけないし、打たせたって入りっこない。
シュートをチェックする意味など全くないのにもかかわらず、珠理奈はシュートフェイクに引っかかった。

「すぐに取り返す!」

秋元が中でディフェンスを引き付ける。
フリーになった珠理奈にパスを出し、シュートフェイクからのドライブ。
しかし、バチンという音と共に珠理奈の手からボールが消える。
柏木にスティールされた。

(何が起きた……?)

何故スティールされたのか、珠理奈はその場で理解できなかった。
仕掛けた瞬間、柏木から異常なプレッシャーを受けたのだけは分かった。
柏木は落ち着いた様子で、またもハーフラインを過ぎた場所でボールを受け取る。
そしてシュートフェイク。
珠理奈は何とか反応しそうになるのを抑えた。

「さすがにもう引っかからないか」

ゆっくりと柏木がドリブルで珠理奈との距離を詰める。
珠理奈もそれに合わせて、じりじりと、スリーポイントの位置まで下がる。
目の前では柏木が右へ左へ、ボールを転がす。

「もう……読み合いは無しだよ」

柏木が仕掛ける。
右から左へ、ボールを動かすのが珠理奈には見えた。
しかし瞬間、分からなくなる。

「だってめんどくさいんだもん」

一歩も動けず珠理奈は柏木に抜き去られた。
何が起きたのかわからない。
かろうじで右から抜かれたことだけは分かった。

ヘルプの宮澤を見て、柏木はゴール下は高城へパス、そして最後は若松が押し込んだ。
一歩も動けなかった珠理奈を、秋元は心配した。
疲労なのか、それとも怪我か。

「大丈夫? どっか痛めた?」
「いえ……体は大丈夫です……けど」

それだけを言って珠理奈はフロントコートへ向かった。
秋元には珠理奈の「けど」という言葉が引っかかる。
珠理奈は何を見たのか、それはこの時点では珠理奈にしか分からない。

(完全に……抜かれる瞬間まで両側から……抜かれた)

それは先ほどまでの鋭いフェイクによる『すり抜けた』とは違う。
珠理奈が感じた感覚はもっと恐ろしい。
両側から同時に抜かれるというあり得ない感覚だった。

「ほら、1点差だよ。やり返してきなよ、松井珠理奈」
柏木が挑発的な言葉を投げてくる。
「指原さん! パス!」

今度はパスを受けてから慎重に相手を見る。
ボールへプレッシャーはそこまで無い。
しかし、異常な圧力を受ける。
その理由はすぐに分かった。

(抜けるコースが……無い)

ディフェンスで両側から抜かれた感覚と同様。
柏木の右も左も、突破できるような隙が無かった。

(いや……わずかにスペースはある!)

右も左も、そして上も、全てを守っているようなディフェンスだが、ほんの少し。
一瞬だけ空いた隙を見逃さず、珠理奈は飛び込んだ。
しかし同時に理解した。
それは柏木の張った罠であると。

(違う、誘い込まれたんだ……!)

突き出したボールを待っていたかのようにスティールされる。
柏木は転がるボールを保持すると、そのまま進む。
指原が正面に回り込むものの、珠理奈と同じ。
一歩も動けずに抜かれ、そのままレイアップを決められる。

「3本連続! あっさり深中が逆転!」

流れを掴むはずであった5点の差はあっという間に返された。
ただ返されたでは済まない。
この試合終盤で、柏木投入直後と同様、珠理奈が全く歯が立たない。
これは十桜にとって大きなダメージだった。

「せっかく互角に渡り合ってたのに、どうしちゃったんですかね」
「いや、松井珠理奈は別になんともない。おかしいのは柏木の方」

珠理奈の動きに異常は無い、と篠田麻里子は分析する。
徐々に柏木に適応し始めていたその動きから、失速は感じない。
変化があるのは間違いなく柏木の方であった。

「まさかこれが……『ゆきりんワールド』」
「へ? なんですかそれ」
「聞いたことがあるんだ。柏木が追い詰められた時に見せるフェイク……予選のときも最後はそれを見せて勝ちを掴んだって。ふざけた名前はその恐ろしさを包み込むが故」

十桜の攻撃は、宮澤のドライブから秋元へのパス。
パスを受けた秋元はフェイクで若松をかわす。
しかし後ろから、一瞬のボールの無防備を突かれて柏木にスティールされた。

「ハーフラインでのシュートフェイク。何故松井珠理奈は引っかかってしまったか、分かる? いや、むしろ何故普通は引っかからないか」
「そりゃハーフラインからのシュートなんてチェックしなくても入るわけないからですよ」
「そう。つまりは相手がハーフラインからでもスパスパ決めるような奴ならチェックする。そして珠理奈は柏木相手にそのフェイクに引っかかった」
「まさか柏木はハーフラインからシュート打っても入るってことですか!?」
「それは流石に無いよ。フェイク……あのとき柏木は『ハーフラインからでもシュートが入る』ように見せかけた」

柏木にパスが入る。
珠理奈がディフェンスに構えるが、柏木のドライブは止められない。

「やはり一歩も動けない!」
「自分の実力以上のものを相手に『魅せる』……それがゆきりんワールド。いまのドライブも相手は何か魅せられている」

向かってくる柏木に、宮澤と秋元がヘルプに出ようとする。
しかし同時に高城と若松がゴール下に走り込んだ瞬間、2人の体は硬直する。
そのまま柏木は悠々ジャンプシュートを決める。

「ヘルプも出られない!?」
「おそらくはパスフェイク。宮澤と秋元、2人ともそれに引っかかってしまった」

柏木のプレッシャーで十桜のオフェンスは決まらない。
逆に深中のオフェンスは柏木のフェイクによりディフェンスをものともしない。
間合いを空けすぎた珠理奈を見て、スリーポイント、詰め寄ってくればドライブからヘルプを寄せ付けないシュート。
試合終盤、ラスト5分からの3分間。
柏木の圧倒的な時間が続いた。
珠理奈を抜き去った後のヘルプ、今度は宮澤と秋元、そして指原までもが寄った。
柏木は落ち着いて、外にパスを振った。
完全にフリーの倉持が落ち着いてジャンプシュートを決める。

「決まった―! 離れた離れた! 8点! 8点差―!」

点差がついた。
その差は8点。

「残り2分……いくらなんでも、時間が無い……」
「き、決まった……鮮やかに決めちゃったよ、柏木由紀」

それを思ったのは藤江と篠田だけではない。
ここまで試合を見守った者、たった今アリーナに入ってきた者でさえも、残り時間と点差を見て悟った。
そしてコートの選手……十桜の選手にとっても、半ば呆然とする事態。
必死に相手に食らいついてきた珠理奈でさえ、表示される点差と時間を見たとき、体が重くなった。

(終わった……)

続く
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

Secre

ゆきりんヤバすぎ!!

残り2分で8点差は辛い…

どうなる!?

Re: タイトルなし

> キラさん

コメントありがとうございます。
フェイクを極めたらこうなるのではないか、と楽しんで書かせていただいています。
続きはお楽しみにです。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。