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「スラムダンクはできないけれど」第59話

第59話「テクニック」

(チェックに来ない……!? ドライブを警戒してる?)

ボールを持った倉持が振り向くも、指原は距離を取り腰を落としたまま動かない。
当然その間合いではパスのチェックは出来ない。

(だったら遠慮なく投げさせてもらうよ)

前を走る高城を見る。
大家を振り切り完全にフリーの状態だ。
倉持が振りかぶった瞬間、指原はインターバルに言われた安西の言葉を思い出していた。


「パスをチェックすれば抜かれるし、ドライブをチェックすればパスされるし……どうすりゃいいんすか、そんな二者択一」
「確かにこちらが動かなければ強引に二者択一を迫られてしまいますね……でも、別に彼女はパスとドライブを同時に出来るわけではないでしょう?」
「へ? どういうことっすか」
「だったら、逆に一択にこちらから迫ることは可能だと思います」
(なに言ってんだ、このおっさん……)


すぐにピン、とは来なかったがコートに出る間際、最後の言葉で理解する。

―上手いディフェンスはそうするものですよ……例えば渡廊の渡辺麻友とかね

直接対決、そして外から見た帝桜戦。
渡辺のディフェンスの上手さは間違いなかった。

(スピード、パワーだけじゃない。ディフェンスはテクニックでしょ)

ボールを振りかぶった瞬間、倉持は焦る。
先ほどまで遠くにいた指原が一気に迫ってきたからだ。
あっという間にその距離は、本来ドライブを選択すべき間合いになる。

(こんなに速かったっけ……? ダメだ……)

迫る指原のスピードに驚くものの、もうドライブには切り替えられない。
投げるしかない。
しかし視界はどんどん狭まっていった。

(コースが無い……!)

バチンッと音を立てて倉持が放ったパスは指原のめいっぱい伸ばした腕に当たる。
弾いたボールをそのまま指原が保持した。

「止めたあ!」

ベンチのメンバーが飛び上がる。
ここまで成す術なく食らい続けてきた速攻を止めた。
流れを引き戻すワンプレーだった。

(腕めっちゃいてえー)

じん、と痛む腕を気にしながらも、攻撃を組み立てる。
せっかく相手の速攻を止めた場面、それは絶対に取り返したい場面でもある。

「やり返してやりなよ!」

パスを要求したのは大家だった。
ボールを持った瞬間、速攻から慌てて戻ってきた高城がべったりと張り付いてくる。
そのプレッシャーに面を喰らうが、元々スリーポイントが得意なわけではない。
これだけディフェンスと距離がつまっていれば、ドライブで抜くのは容易かった。

「大家、抜いた!」

内側にドライブし、そのままハイポスト付近でのジャンプシュートを狙う。
しかし、抜いた高城がもう視界に入ってくる。

「高城の運動量が上か!?」

タンタンタンッ、と大家がストップしジャンプするまでの間に、高城は回り込む。
足の回転の仕方が普通の女子高生とはまるで違う。
そして、その猛ダッシュからのジャンプ。
一瞬で上方向に力の向きが変わった高城の体が大家のシュートコースを塞ぐ。
この試合もうすでに何度も見られたブロックシーンがまた追加されようとしていた。
しかし、大家は焦らなかった。
安西が余裕の笑みを浮かべて頷く。

「いや……大家さんの上手さの方が上です」

フェイクでわざとタイミングを遅らせ、高城との接触を狙う。
先に飛んでしまった高城はもう何もできない。
大家がぶつかってっくるのを受けるしかなかった。
両者の腕が重なって、笛が鳴る。
シュートは落ちたものの、フリースローの権利を大家は得た。

「ナイス、しいちゃん!」

大家が差し出した手を指原が叩く。
このフリースローを2本落ち着いて決めた。
さらに十桜は仕掛けた。
ディフェンス、ボールのチェックとフリースローラインに指原と北原が、ゴール下には秋元、その両側を宮澤と大家が固めた。
マンツーマンではない。

「十桜、ゾーンディフェンスだ」

十桜のディフェンスは2-3のゾーンディフェンス。
ここまでハーフコートのディフェンスは全てマンツーマンディフェンスしか見せていない十桜の奇襲だった。
ボールマンに対しては、北原のスピード、ハイポストに対しては、指原の危険察知で対応する。
ローポストは宮澤と大家、そしてそれを破っても最後の砦、ゴール下は秋元がいる。
十桜のゾーンディフェンスは見事な連携を見せた。

「1年生の珠理奈さんと玲奈さんがいるときはこのディフェンスはできません。おそらくやっても大した効果を得られない。でも、この2、3年生で組んだゾーンは……強力ですよ」

そもそも入部して間もない1年生を使っている限り、ディフェンスは基本的に付け焼刃にならざるを得ない。
マンツーマンディフェンスも珠理奈と玲奈の中学までの貯金で成り立っている面が大きかった。
そのマンツーマン以上にゾーンディフェンスは5人のコンビネーションが必要になる。
1年間練習をしてきた2、3年生でなければ、出来ない。
しかしその分、付け焼刃のディフェンスよりは、ずっと精度が高い。

「十桜ディフェンス堅い! 崩せない!」

ゾーンディフェンスは、特有の対策をしなければ簡単には突破できない。
個人技だけではどうにもならないのである。
倉持のパスも、高城の身体能力も、このときばかりは影をひそめた。

「今度は十桜に流れが傾いてきたぞ」

ディフェンスからの速攻で十桜が得点する。
第1ピリオドでつけられた差は、無くなった。
追いつき、逆転し、そして引き離しにかかる。
秋元のゴール下が決まったところで、深中がタイムアウトを取った。
選手が集まった深中のベンチ、監督の指示ですぐに1人の選手がTシャツを脱ぎ、ユニフォーム姿になる。
その様子を見ていた安西もすぐに指示を送る。

「来ますね。珠理奈さん、秋元さんと交代」

その言葉に頷き、珠理奈もTシャツを脱ぐ。
このときのためにベンチで休んでいたのだ。
まさに満を持して、相手のエースとの対決。

「ここで相手の思うとおりにさせない。止めるんですよ、5人で」

はいっ、と5人全員が返事をしてコートに戻る。
深中のボールで試合が再開され、ついに登場した7番の背番号。

「柏木由紀投入ー! 十桜は10番をぶつけるぞ!」

珠理奈と柏木が向かい合う。
目の中に炎が浮かび上がるような、ギラギラとした目つきで珠理奈は柏木を見つめる。
その迫力に思わず柏木は目をそらした。

「誰が十桜のエースか、見せてやる」
「いやいやいやいや、あれはあきちゃが……」
「関係ない」

倉持がボールを運び、柏木にパスを出す。
すぐに珠理奈が張り付いた。
しかし構えた瞬間、珠理奈は気付く。
すでに先ほどまでの弱々しい雰囲気が柏木から消えていた。
マークマンを睨む鋭い眼光にも物怖じしない。
何も言わず、それを受け止める。

「見せてみてよ。自称エース」

そう言って笑みを浮かべると、柏木がドライブを仕掛けた。

続く
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テーマ : 二次創作:小説
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どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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