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「スラムダンクはできないけれど」第57話

第57話「強肩」

「確かに、今大会1番の番狂わせと言えば、東京予選の渡廊高校の敗北だ」

徐々に埋まる観客席に腰を下ろしながら、雑誌記者の斉藤は言った。
コートでは試合前の両校のアップが行われている。
都立十桜高校対深中高校。
勝った方が帝桜高校と対戦することになる。

「結局、その渡廊高校は帝桜に負けてしまったわけですけど、それでも帝桜にあそこまで食い下がった実力は間違いないですよね」

帝桜の3回戦はすでに終了していた。
試合の半分で主力選手が交代したにもかかわらず、100点ゲームのダブルスコアで3回戦を圧勝した。
渡廊高校の20点差、というのが遅れて評価されるほどに、帝桜は圧倒的だった。
渡廊対帝桜がいかに好ゲームであったか、そしてそれ以上の試合が出来るチームが他に存在するのかすら危うく思えた。

「俺は帝桜と戦えるとしたら、この2チームのどちらじゃないかと考えてる」
「何でですか? 他にも強豪校はまだまだ残ってますよ」
「勝負強さだ。都立十桜はまず、東京最強と言われた渡廊高校を破っている」

いわゆる大物食い、ジャイアントキリング、を十桜は一度果たしている。
いや、全国大会においてはもはやここまでの2戦、そしてこの3回戦、全て相手は格上と考えていいものだった。
それを突破する勝負強さは、他の強豪校にはそうあるものではない。

「じゃあ、深中の方は……」
「それが今大会もう1つの番狂わせ。鹿児島予選で板野友美率いる慈英(じえい)高校がまさかの敗退となった」
「破ったのはこの深中高校でしたっけ」
「そういうことだ。格上相手に勝てるだけの強さがあるんだよ、この2校は」

ブザーが鳴った。
アップの時間が終了し、いよいよ試合が始まる。
両校のスターティングメンバーの選手が5人ずつ、ユニフォーム姿になった。
センターラインを境に、向かい合う。
そして、そのメンバーにいきなり観客は驚かされることとなった。

「深中のスタメンに柏木がいない!? これはどうなって……」
「見ろ。十桜もだ。宮澤に代わって北原がスタメンだ」

深中高校は2年のエース、柏木由紀がベンチからのスタートとなった。
対する都立十桜は、ツインタワーの一角、宮澤佐江がスタートから外れ、代わりに北原里英がコートに立った。
宮澤のポジションは珠理奈が埋め、珠理奈のポジションは北原が埋める形となる。
両校がスタメンをこの試合で変える理由は1つしかない。

「温存だ。どっちも次の帝桜高校戦を見てるわけだ」

選手の少ない十桜は1人でも欠ければ致命的なダメージになる。
体力的な意味で温存は必要だった。
深中はベンチが十分埋まる強豪校であるが、レギュラーとして全国戦える選手でベンチが埋まっているわけではない。
当然、スターティングメンバーと最後に使われる選手では差が出てくるのが現実だ。
試合が連続するこの大会では、エースの温存は当然だった。

驚く観客が多い中、平然と座って見つめているのは、上麻高校の篠田麻里子だった。
経験者の選手からしてみれば、この程度のスタメンの変更は見慣れたもの。
そして、すぐ近くの集団を見ながら言った。

「裏を返せば、どちらも次の試合を勝ちに行ってるってこと」
「あ、あれは……」

篠田の目線の先、藤江が気付いた先にいる集団は試合を終えた帝桜高校だった。
当然、勝った方と試合をすることになる彼女達もこの試合を見ていた。

「王者の目にはどう映るかな」

ジャンプボールは秋元が制した。
さっそく速攻を狙うが、深中がそれを警戒し、高城以外4人がバックコートで構えていた為、止められる。
まずはセットオフェンスになった。

「ディフェンスはマンツー……で、玲奈封じか」

玲奈にはディフェンスがべったりと張り付いて動かない。
予選で赤須高校が仕掛けたものと同じフェイスガードだった。
パスを出すことすら難しいという意味では赤須のそれよりも厳しい。

「とりあえず、まずはそこで勝負!」

指原の選択は秋元。
パスを受けた秋元がフェイクから一気にゴール下まで押し込んでいく。
最後は上手くディフェンスとゴールの間に体を入れて、得点した。

「ナイッシュ―っす! 秋元さん……」
「指原! チェックだ!」
「あ、やば……」

秋元によって得点を許した直後、すぐに深中はパスを入れる。
受け取った倉持が前を向き、大きく振りかぶる。
グッとひねったことにより、ボールは頭の後ろに隠れ、見えないほどだ。
次の瞬間、指原の顔の横を、何かが通る。
それは当然、ボール以外の何物でもないのだが、ボールと表現できる速度では無かった。
ビュン、と音を立てて、その何かは指原を、そして戻る北原、珠理奈を追い越す。
珠理奈の目線がボールに移ったとき、死角から1人の選手が現れる。
あっという間にゴール下まで走り込んだ高城がそのボールに反応した。
バチンッという音を響かせながらキャッチし、ゴール下のシュートを決めた。
一瞬の出来事に観客は静まり返った。
審判によるカウントが示されて初めて、何が起こったのか理解する。

「何だ今のパスはー!? コートの端から端まで……ぶった切ったー!?」

投げた倉持がいる場所は自陣のゴール下。
まさに端から端へのノーバウンドのパスだった。
しかもほとんど山にならないボールのため、速さも尋常ではない。

「あのパスは前の試合で見てたろ。絶対チェック」
「すいません、次はもうさせないです!」

倉持のパスは今のが初披露というわけではなかった。
事前の研究ですでに指原は把握していたパスであった。
しかし、外から見るのと、目の前で見るのとでは全く変わってくる。

(あんな剛速球見たことないよ……女子の肩じゃねーっしょ)

軽く肩を回しながら、倉持がディフェンスを構える。
ディフェンスのプレッシャーは余り無く、指原でも余裕でボールキープが出来る程度だ。
珠理奈がパスを要求する。
ベンチでは選手が1人、監督と話していた。

「ねえ、監督。何で私ベンチスタートなんですか? 絶対温存なんて目的じゃないですよね」
「よく分かってるじゃないですか。その通りです」
「じゃ、何でですか?」
「相手のパワーフォワード高城の特徴、分かります?」
「確か、めちゃくちゃ身体能力が高かったことですよね」
「そうです。それを珠理奈さんと比べさせたいんです。そして……もう1つの仮定の実証をしてもらいます」

なんとなく分かったような、分かってないような、パッとしない表情のまま宮澤はコートに目を戻した。
珠理奈がパスを貰い、高城に1対1を仕掛ける。
シュートフェイクからのドライブで高城を抜き去ると、センター藤崎がヘルプに出てくる。
それをステップでかわし、ジャンプシュートを決めた。
すぐに倉持にパスが入る。
先ほどと全く同じシチュエーション。

「あの剛速球のパス……確かに、凄い。でも、多分、十桜が思っているより凄いよ」

いきなり大技が繰り出された試合を見ながら、篠田は呟いた。
どういうこと、と疑問の表情を浮かべる後輩の顔を見て、続ける。

「流石にあのパスをノーモーションじゃ出せない。大きく振りかぶらなくちゃいけない。だから、分かってればチェックは出来る」

振りかぶった倉持に対して、指原はチェックに出る。
接近してボールの出所を抑えれば、簡単にあのパスを出すことは出来ない。

「でもそれは、フェイクになる」

チェックに飛び出してきた指原を、倉持がドリブルで抜き去る。
一気にフロントコートまで進み、3対2のアウトナンバーだ。
シュートフェイクからのパスで、高城が再びゴール下を決める。

「速攻の場面、倉持のパスは1本でシュートに繋がってしまう。それがどういうことか、十桜は、少なくともマッチアップの指原は感じたかな」

篠田の言うとおり、指原は倉持のパスの本当の凄さを理解していた。
パスフェイクから抜き去られた瞬間、パスに対する単純な驚きが、一気に焦りに変わる。

(これっ……マジか? どうやって止めればいいの……?)

十桜のオフェンスは再び秋元にボールを入れて、勝負する。
センターの1対1においては秋元の優勢が明らかだった。
ヘルプが出てくるのを見て、北原にパスを回し、ミドルシュートが決まった。
そして、パスが倉持に入り、振りかぶる。

「極端な話、倉持のパスが、イコールでシュートだ」

パスのチェックに出た指原は、再びドライブで抜かれてしまう。
速攻を止められない。

「つまり、倉持のシュートレンジがパスレンジと同じ……コート全体になる」

深中の速攻が決まるのを抜かれた指原は見ていることしかできない。
どう止めるか、考えがまとまらないうちにオフェンスのボールが回ってくる。

(とにかく早く戻って、速攻を出させなければいいんだ)

倉持のパスが脅威と化すのは速攻の場面だけ。
パスコースをきっちり守ればロングパスは通らない。
すぐにチームに伝えて、速攻の場面を減らしにかかる。

指原の考えは当たっており、速攻にならなければ、倉持のパスは出ない。
セットオフェンスに持ち込ませれば、相手の攻撃力は大きく減った。
しかし、気を付けていても偶発的なターンオーバーからの速攻がある。
ひとたび速攻の場面になれば、倉持のパスが繰り出される。

「逆に速攻になっちゃったら止められないってことじゃん」

珠理奈が懸命に反応するが、ギリギリ届かない。
その先でパスをキャッチするのが高城だ。
レイアップをそのまま放り込む。

「空振り三振、ってとこかな」

続く

色々とツッコミどころがあるとは思いますが、妄想小説、ということで済ましてください。
じゃんけん選抜、センター島崎遥香楽しみです。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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