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「スラムダンクはできないけれど」第56話

第56話「3回戦」

「あれ、珠理奈はどうした?」
「なんかどっか言っちゃいました」
「……じゃあ、悪いけど集合はすぐだから、探してきて」

はい、と頷くとすぐに高柳は席を立つと、駆け足で階段を上っていった。
もう次の試合のアップが始まっているというのに、その試合の余韻は残ったままだ。
秋元達は立つことも出来ず、ただ黙って脳裏に焼き付いた映像を繰り返すばかりだった。

「ほら、皆、もう行くよ」

秋元の声にも、部員たちは中々動けなかった。
指原は頭を抱え、北原の唇は紫色になり、宮澤も静かにそのスコアを見つめていた。
渡廊高校対帝桜高校のスコアだ。

「うちらがあれだけ必死にやって……珠理奈の神がかりのシュートが決まって……やっと逃げ切って勝てたんですよ?」
「しかも、予選でやったときより明らかに渡廊は強くなってた。平嶋抜きでも」
「それを20点差って……」

第4ピリオド残り5分、再び点差は開いた。
渡辺、菊地を中心に攻める渡廊に一時は9点差まで詰め寄られたが、そこから大島、前田を中心に猛攻。
67対87。
最終的にはきっちりと20点の差をつけ、王者が渡廊を退けた。
組み合わせが悪かったとはいえ、ベスト8常連の東京の強豪が2回戦で姿を消すこととなった。

「前田敦子……」

1人アリーナの通路を歩く珠理奈もまた、帝桜のプレーを思い返していた。
菊地、そして渡辺が簡単に破られる姿を。
すれ違う者はみな興奮気味にたった今見た試合を語っている。
帝桜が凄かった、前田が凄かった。
そして、渡廊の21番も頑張った、と。
そんなことを大声で話していた者が、ふと、窓際に立ち尽くす選手を見て、申し訳なさそうに黙った。
試合を終えたばかりで、息も落ち着かない。

「麻友……」
「あっ、珠理奈ちゃん」

東京で戦ったあとと同じように、渡辺は笑いながら手を振った。
無理して作った笑顔であるのは、珠理奈でもすぐに分かった。

「負けちゃった。あー、せっかく珠理奈ちゃんにリベンジしてやろうと思ってたのに」

絶対に悔しいのに、そんなテンションであるはずがないのに、そのひきつった笑顔のまま渡辺は明るく振る舞った。
しかしそれを見つめる珠理奈と目が合うと、すぐに寂しそうに下を向いた。

「帝桜は……強かった?」
「……今の私の実力じゃ、どう転んでも勝てなかったと思う」

珠理奈の質問に、渡辺ははっきりと答えた。
負けずぎらいの渡辺が、これほどはっきりと負けを認めるのも、珍しい。
珠理奈は面を喰らいながらも、自分の問いのデリカシーの無さを反省した。

「でも、麻友のバスケは通用してたよ。相手が帝桜でも立派に……」
「珠理奈ちゃん」

フォローなどのつもりは無く、珠理奈は思ったことをそのまま口にしただけだった。
明らかに終盤、渡辺は1対1で負けていなかったし、帝桜も渡辺を避けるような攻撃をしていた。
それでも渡辺は珠理奈の言葉を遮った。

「結果は結果。当たり前のことでしょ」
「……そうだね」
「もう行くよ……人前で取り乱したくない」

自分を呼びに来たであろう高柳とすれ違う渡辺を、珠理奈は黙って見送った。
その背中は、わずかに震えていた。

「呼びに来たよ、もう集合だって」
「うん。行くよ」
「麻友と話してたの?」
「まあね……めちゃくちゃ悔しそうだったよ」

珠理奈と高柳は並んで歩きだした。
自然と会話は帝桜高校の話になる。
おそらく4回戦で当たるのは確実だ。
どう戦うのか、相手のどこが凄いのか、やはりお互い試合を見て感じたことは多かったようだ。

「でも、忘れてないよね? 次はまだ帝桜じゃない」
「分かってるよ」

3回戦、ここを突破しなければ話にならない。
当然相手は1、2回戦を突破した強豪であり、帝桜ばかりを見ている場合ではない。

(帝桜と戦いたい。そのためにも……)

―3回戦を勝つ。勝って帝桜と戦う。

突然、珠理奈が思ったことが、何故か耳から聞こえた。
珠理奈は声に出していない。
その声は、ちょうどすれ違った高校生2人のものだった。
ハッとして振り返ると、その動きに気付いたのか、相手もほぼ同時に振り返った。
珠理奈と高柳の顔を見たと途端、口を開いた。

「都立十桜の……松井珠理奈?」
「と、高柳明音!」

1人は長い黒髪を持つ少女、もう1人は茶色がかった髪をしている。
2人とも珠理奈と同じくらいの身長だった。
そして、珠理奈も高柳もその顔をよく知っていた。

「3回戦を勝って、帝桜に当たれるのはうちら以外には1校しかない」
「深中(しんちゅう)高校の……柏木由紀に高城亜樹」

深中高校、それは次に都立十桜高校が試合をする相手だった。
1、2回戦を余裕で突破する姿を、珠理奈達は見ていた。

「お互い、自己紹介はいらないみたいだね」

柏木がうんうんと頷きながら笑う。
隣の高城は首をかしげた。

「松井玲奈は……いないの?」

他の部員を探すように、深中高校の2人は珠理奈達の周りをキョロキョロと見渡した。

「玲奈はアリーナにいるんで。ここにはうちらだけですよ」
「そっか。残念」

相手はこちらの選手名まできちんと把握しているようだった。
1回戦袖無学園の小嶋に比べたら遥かにちゃんとしているが、それでも珠理奈は気に入らない。
何故、玲奈なのか。

「そんなに玲奈が気になりますか」
「まあね……相手のエースの顔くらい見ておこうと思って」

その言葉にすぐに珠理奈は反応した。
ピクリと眉が動く。
珠理奈が言葉を返そうとするのを止めるように、高柳が高城との会話に割り込んだ。

「随分、玲奈ちゃんを警戒しているんですね」
「うん。隠しても意味ないから言っちゃうけど、上麻高校の敗因は篠田のマーク相手だったと私達は考えてるから。篠田が松井玲奈について、スリーポイントをやらせなければ、負けることは無かった」

ちらりと高柳が珠理奈の方を見る。
言葉は無いものの、珠理奈は今にも飛びかかりそうな形相で相手をにらんでいる。
その雰囲気に気付いたのか、高城が慌てて付け加えた。

「ってゆきりんが言ってました」
「ちょいちょいちょいちょーい」

焦った様子で高城の口を押えながら、柏木が小さく頭を下げる。
それにつられるように珠理奈と高柳も返した。
そしてにこやかに柏木は言った。

「良い試合しましょう」
「こちらこそ」

高柳が柏木と握手を交わし、お互いその場をあとにした。
珠理奈の怒りは収まらなかった。

「玲奈がエースだって? 篠田は玲奈をマークすべきだった? むう、舐めやがって」

玲奈の実力は認めていたが、それでもエースは自分だという自信が珠理奈にはあった。
ダブルエースだと言われることに抵抗がない、と言うことすら嘘になる。
さらには2回戦、篠田麻里子がつくべき相手は珠理奈では無く玲奈だった、とまで言われれば冷静でいられなくても無理はない。

「まあ珠理奈ちゃん、落ち着いて。そうやって煽るのも作戦かもしれないよ」
「わ、分かってるけどさ」

2人を待っていた秋元達と合流して、宿舎へ向かう。
さっそく先ほどの出来事を報告する。

「柏木と高城? 相手の中心メンバーじゃないか。その2人に倉持明日香を加えた3人が明日の要注意人物だぞ」
「そうなんですよ。私と珠理奈ちゃんの顔と名前も分かってましたから相手も大分こっちを研究してますよ」
「どんな感じだった?」
「高城はなんか……よく分かんない感じでした。冗談で言ってるのか本気で言ってるのか。柏木は……いい人そうな感じ?」
「全然分からないんですけど」

高柳の報告に首をかしげる秋元達だったが、もっと疑問があった。

(玲奈ちゃんがエースって言われたことに、カチンときてるみたいで)
(なるほど、それでか)

それは、さっきから殺気立った様子の松井珠理奈である。
いつもはふざけあっている他の部員も珠理奈には近づけない。
そんな周りのことは気にせず、珠理奈は突然、玲奈に向かって言った。

「とにかく明日の試合は絶対勝つ。玲奈、負けないからね」

何故自分の名前が珠理奈の口から発せられた意味が分からず、玲奈は何も言わず目を丸くした。
すぐに秋元が珠理奈の頭をはたく。

「お前は誰と戦ってるんだ」

続く

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今後も精進します。
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テーマ : 二次創作:小説
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どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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