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「スラムダンクはできないけれど」第55話

第55話「盤石」

スローイン、パス出しは山本。
増田がボールを受け取り、大島、そして前田と渡る。
前半よりも一段と低い、タイトなディフェンスで菊地が構えるが、前田はものともしない。
単純なフェイクで、菊地を抜き去っていく。

(この独特のリズム……反応できない)

ヘルプが寄ってくるのを見て、前田は冷静にパスを裁く。
光宗のジャンプシュートが決まった。

「前田と光宗の連携! 止められない!」

渡廊はガード多田から仲川、そして菊地へパスをつなぐ。
またも前田と1対1。
シュートフェイクから外側へドライブを仕掛けていくが、抜ききれない。
前田が横に張り付いて、外へ押し出そうとする。
正面にはヘルプに出てきた山本が見える。
挟まれれば確実にボールを奪われる場面だった。

「いや、パスだ!」

ディフェンスに囲まれる直前、菊地は外にパスを出した。
そのパスに合わせるは渡辺だ。
絶好調のスリーポイントが決まる。

「おお! 今のはいい形の攻めじゃん」
「うん……多分、第2ピリオドでやりたかったことはこれだったんだと思う」

インサイドへの仕掛けから、アウトサイドのシュート。
菊地と渡辺、中と外のエース2枚で攻める。
前田によって菊地が潰されることがなければ、第2ピリオドで表れていた形。
ようやく渡廊の攻めが通用し始める。

「開き続けていた点差が……止まった」

帝桜の得点が止まったわけではない。
第3ピリオド、菊地の投入で渡廊の得点が入りだした。
お互い点を取り続け、点差は前半終了時と同じ17点で、第3ピリオドが終了した。

「点差は前半と変わらずか。離されなかっただけ良かったのかもしれないけど」
「ここから逆転……出来るかな?」
「かなり厳しいだろうけど……麻友がこのまま終わるとはね」
「思えないね」

始まった第4ピリオド、渡廊は菊地のドライブで攻撃が始まった。
菊地から外の渡辺にパスが渡り、シュートを構える。
チェックに出てきた山本をドライブでかわし、ヘルプに出る光宗を見てからゴール下にパス。
小森が落ち着いてシュートを決めた。

「中、外、中! 綺麗に決まった」
「前半まではインサイドがセンターの小森だけで、外のシュートに寄りがちだったけど、菊地が戻ってきて大分ディフェンスが散ってる」

菊地という中まで切り込める選手の存在で、アウトサイドとインサイドでシュートを絞らせない。
単純、そして基本的だが、有効なオフェンスだ。
流石の帝桜でも後手に回らざるを得なかった。

「問題はディフェンス」

相手の攻撃を止めなければ点差は縮まらない。
帝桜の強力なオフェンスをどうにかして止めなければならない。
前田がボールを受け取り、ドライブで菊地を抜く。
それに合わせた増田のミドルシュートで帝桜が取り返した。

「うーん。やっぱり前田をどうにかしなくちゃならないね」
「菊地さん、次からはもう相手にベッタリ張り付いていいです。パスを入れさせないでください」
「え? でもそんなことしたらヘルプに出られないじゃん」
「大丈夫です。私が止めます」

渡辺の言葉に菊地は困惑したが、その自信ありげな瞳に押され、首を縦に振った。
その渡辺のスクリーンで抜け出した菊地が、またもドライブを仕掛ける。
ドライブに合わせて切れ込んだ仲川にパスが入り、そのままレイアップシュートが決まった。
すぐに渡廊ファイブは自陣に戻り、ディフェンスを構える。

「菊地は前田にベッタリだ! パスが出ない!」
「でもあれじゃ、ヘルプに全く動けない」

ボールが逆サイドにあっても菊地は前田から離れない。
2人だけが隔離され、残った選手による4対4になった。

「なるほど……あっちゃんだけは参加させないってわけね」

大島がボールをキープする。
目の前には第4ピリオドから代わった浦野がいる。
前田に目をやるが、当然菊地がパスコースを塞いでいて、ボールは入らない。
本人も無理矢理にパスを貰う気は無さそうだった。

「じゃ、とりあえず私がディフェンスを引き裂いていやる」

トップから大島がドライブを仕掛けた。
一気にボールを切り替えし、姿勢を低くする。
そのスピードに浦野はついていけない。
しかし、浦野を破ってすぐ、ヘルプが現れる。

「来ると思ってましたよ」

渡辺がすぐに進路を塞ぎ、浦野とダブルチームになる。
2人に挟まれた大島は無理をせずに、渡辺のマークマン、山本にパスを出す。
山本がボールを受けると同時に、渡辺は大島のディフェンスから戻ってくる。
この試合何度も見られた、山本と渡辺の1対1。

(勝負……!)

シュートフェイクからドリブル。
その突き出しをすぐに足の間を通して戻す。
ドライブと見せかけてのジャンプシュート。
渡辺は反応し、チェックの手を上げる。
しかし山本はまだボールを手に持っていなかった。
足の屈伸と目線だけのシュートフェイクである。

(こっからドライブや!)

フェイクに掛かった渡辺を抜きにかかる。
一瞬で行われた、高い技術のフェイク。
初見で守りきるのは不可能に思われた。

「知ってるんですよ、それ」

次の瞬間、山本のドリブルの突き出しを渡辺はスティールした。
初見では不可能、逆に言えば初見で無ければ可能。
山本の動きを完全に読み切ったディフェンス。
転がったボールを浦野が保持し、帝桜の攻撃は止められた。

「確か今のパターンは予選の決勝リーグ第3戦、第2ピリオドだったかな……データ通りでした」
「な、何を言っとるんや……?」

山本にとっては止められるなんて思っても見なかった1対1が止められた。
動揺は隠せない。
その隙をついて、山本にスクリーンをかけて渡辺が動く。
菊地が同時にドライブで切り込んでいき、連携を狙った。
帝桜は大島のヘルプ、そしてすぐに冷静さを取り戻した山本の対応で、菊地から渡辺へのパスコースを塞いだ。
しかし、パスは外に飛んだ。
フリーになった浦野がスリーポイントを放つ。

「決めたー! 渡廊がついに連続得点!」

点の取り合いだった均衡が崩れる。
当然点差が縮まった。
相手の攻撃を止めつづけ、自らの攻撃を決め続ければ追いつける。
しかし帝桜相手にそれをやることがどれだけ至難かは、渡廊選手自身がよく分かっていた。

「あの子の雰囲気が今までと明らかに違う……下手な1対1じゃ止められる」

山本を止めた場面を見て、大島はすぐに渡辺の異変に気が付いた。
集中力の高まりが見て取れた。
得意の1対1からの攻めを止め、コート全体に指示を送る。

「セットプレーはどうせバレてるだろうから使ってなかったけど」

相手を研究し尽くす渡廊高校相手では、セットプレーのパターンも把握される。
個人技で上回っている強みを生かした1対1中心の攻めの方が確実だった。
しかし今の渡辺相手ではその1対1でも止められかねない。
それならばと、帝桜は1つのセットプレーに動く。

「これはデータに無いはず……なんせ初めて使うんだから」

予選でも1度も使ったことのないセットプレー。
データとして研究されようが無い。
大島からフリーになった増田にパスが入る。
シュートを構えたところに仲川が慌ててチェックに出る。
それをフェイクでかわし、パスを見た先にはフリーの光宗がいる。
小森はスクリーンに掛かってマークに付けない。
パスが入ってしまえばゴールは確実だった。

「なっ……!?」

バチン、とボールは渡辺によって叩き落された。
初めて使ったパターンであることは間違いない。
渡廊のデータにあるはずがない。
しかし、そのセットプレーを知っていたかのように渡辺は反応した。
これには帝桜全員、大島も、そして前田ですらも驚きを隠せなかった。

「事実をもとに『予測』をする……そこまでがデータバスケです。高身長の光宗がいるのにインサイドを使ったセットプレーが少ないのはおかしいと思ってた」

既に使ったセットプレーはわざわざ使ってこないこと、初めて使ってくるセットプレーは他のパターンとは違う狙い目を使ってくるであろうこと。
この2つの予測から渡辺は初見のセットプレーを攻略してみせた。
ボールを奪った渡廊の攻撃は浦野のパスから、菊地のドライブ。

「そのパターンはもう飽きた。外は浦野か渡辺、中は仲川の合わせだ」

菊地のドライブからのパス。
何度も続けていれば、すぐに対応できる。
それでも飛んだ菊地のパスを見て、帝桜5人が動く。

「外に飛んだ……渡辺か? 浦野か?」

パスの先はどちらでもなかった。
中で合わせを狙い続けていた仲川が、外で待っていた。
不意をつかれた増田のチェックは遅れた。
仲川のスリーポイントが決まる。

「連続スリーポイント! これで……9点差!」

帝桜の攻撃を2回止め、スリーポイントで返した。
点差は一気に縮まる。

「1桁差……流れは完全に渡廊っすね」

残り時間は5分で9点差。
まだまだ厳しい点差だが、間違いなくこの数分間は渡廊の時間だった。
指原含め十桜全員が、渡廊の逆転の可能性を思った。
再び4回戦で戦うことになる可能性を。

「この場面でタイムアウトを取らないっすよ。どうなってんですかね、帝桜の監督は」
「雑誌の特集を見たことがある。選手に絶対的信頼を持ってるんだろう」

秋元が読んだ記事には、今年の帝桜高校に対する考えが記されていた。

『バスケのみならずスポーツであれば「奇跡」と呼ばれるものが起こることがありますね。逆転劇だったり、大物食いだったり。僕もそういうのは好きなんです。信じるのも、起こすのも』

前田が菊地のマークを振り切りパスを貰い、ドライブを仕掛けていく。
すぐに渡辺がヘルプに出るが、それをもかわしてシュートを決めた。

『でも今年の帝桜は違いますよね。あれだけの選手を集めたら、勝って当たり前だし、むしろ「奇跡」を起こされる側です。それは選手にとって相当なプレッシャーです』

浦野から菊地、そしてすぐに切り替えて前を走る渡辺にパスが出た。
仲川のスクリーンで山本のマークをずらし、スリーポイントを狙う。
相手の攻撃を止められなくても点差を縮める唯一の方法。
2点取られても、3点取り返せば、点差を詰めることができる。

『それでも彼女達は負けないんです。「奇跡」なんてものに潰されない、何よりも信頼できる実力がありますから』

シュートはブロックされた。
猛烈なスピードで戻ってきた大島によって。
振り返った大島と目が合った瞬間、渡辺はここまで感じたことのない圧倒的な気迫を感じることになる。

『盤石の強さ。今年の帝桜を簡単に言うならそんなところです』

腕を組み、じっとコートを見つめる。
帝桜高校監督、秋元康。

続く

更新遅くなりました。
城恵理子卒業……残念です。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

更新お疲れ様です♪

城さん、戻ってくるの待ってますね(^ ^)

やっぱりバスケ最高\(^o^)/

本当に臨場感ヤバイです♪

渡廊は勝てるのか!?

更新お疲れ様です!

城ちゃんの卒業残念です。
自分の小説に出てくるんですよ(-_-;)

Re: タイトルなし

> キラさん

コメントありがとうございます。

抜けた穴は大きいですよね。
好きなスポーツが題材だと書いてて楽しいです。
バスケは最高です。
結末をお楽しみにしていてください。

Re: タイトルなし

> あおやぎさん

コメントありがとうございます。

私もいつか小説に出してみたいと思ってはいました。
48Gはいなくなるメンバーがいる点が小説を書いてても面白い点なのかもしれません。
大変だと思いますが、頑張ってください。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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