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「スラムダンクはできないけれど」第50話

第50話「前田のシュート」

(そうだ……渡廊には菊地がいる。あの人がいる限りはそう簡単に負けると思えない)

地区予選でのマッチアップ。
珠理奈はオフェンスでこそ終盤は通用したが、最後まで1対1で抑えきることは出来なかった。
自分の力を過信しているわけではないが、その菊地がまるで通用しないということは想像し難い。

「また菊地だ―! 渡廊も簡単には引き離されないぞ!」

菊地を中心に渡廊に得点シーンが増える。
開始直後こそ個人技で帝桜にリードを許したが、徐々にデータバスケで対応し始めた。
特にエース菊地は帝桜相手でもそん色のない技術を見せつけていた。

「随分とおとなしいな、前田」

菊地をマークしているのは、高校生最高のプレーヤーと言われる前田敦子。
それなりの覚悟をして挑んでいたが、この試合ではまだ無得点、と勝負に来ない。
肩すかしもいいところだった。

(不気味だけど……まあチャンスであることに限りないかな!)

菊地がパスカットから一気にドリブルで相手コートまで突き進む。
寄ってくるディフェンスを見て、外へのパス。

「岩佐のスリー! 決まった―!」

このスリーポイントでまた同点。
ここまで渡廊は王者に全く引けを取らない。

「なるほど……菊地あやか。うん、やっぱり上手いよ」

菊地がディフェンスに戻る際、前田が口を開いた。
目の前の菊地にだけ聞こえるような小さな声。
話しかけられ驚く菊地を無視して、前田は続けた。

「もうずっと前の話になるけど、中1で試合に出てきたときから一目置いてた。もしかしたら将来こっち側でプレーする選手かもしれないって」
「へえ……よく分かんないけど、前田敦子にそう言ってもらえるのは光栄だね」

中学1年生にして、全国に名前が知れていた菊地。
同じように全国区の選手だった前田も当然その名前を知っていた。
当然そのあとの出来事も。

「でもあの事件が全てを台無しにした。一番大事な時期に君はバスケから離れてた」

前田はこの試合初めて大きくパスを要求する。
すぐに大島からパスが飛び、菊地と対峙する。

「はっきり言って、もう追いつくことは無いよ」

前田が小さなシュートフェイクをする。
それに菊地が反応してしまった時点で勝負は決した。
鋭いドライブで菊地を抜き去り、ストップジャンプシュート。
その基本のシュートを間違いなく決める。

「おお! 前田が来た!」

大会前から注目の的であった前田の初得点に場内は盛り上がる。
高校最強と評されるプレーヤーの一挙手一投足、目が離せない。
前田は続くディフェンスでも魅せた。
菊地のドライブの一歩目を止め、それをかわそうと繰り出されたロールターンに回り込み、ボールをスティールする。
そのままドリブルでフロントコートまでボールを運び、また菊地と1対1。
今度は内側に菊地を抜き去り、ジャンプシュートを決める。

「前田連続得点! 乗ってきた!」

帝桜エースの連続得点に、さらに観客の歓声が沸く。
得点は基本的なジャンプシュートで驚くほどのことでもない。
しかし前田は観客を惹きつける何かを持っていた。

「何か……独特のシュート」
「やっぱ明音もそう思う? 確かに左利きだし、ドライブも速い……でも何よりも、落ちる気がしないんだよね」

シュートフォームだとかデータの確率だとかを超えた安定感。
ただドライブからシュートを打たれるだけでもう止められないような感覚。
観客以上に、同じ選手から見た前田のシュートは驚異だった。

「バスケにさ、一発逆転必殺シュートってあると思う?」

同時刻、十桜と同じように試合を見ていた、篠田麻里子が藤江れいなに聞いた。
困惑しながら藤江は答えた。

「えーと、一発逆転って言ったらだって3点差以内になりますよね。4点プレーで」
「そう。時間とか点差の面で観たらバスケってある意味地味」

ド派手なダンクシュートを叩きこんでも2点。
超ロングシュートを決めても3点。
100点入ることもあるバスケの点の中では、一発のシュートの得点はわずか。

「でもあるんだよ、精神面で。必殺のシュートみたいなもんが」

渡廊のオフェンスはもう一度菊地。
しかし、菊地のドライブは前田に止められてしまう。
苦し紛れに外にパスを出す。
山本のチェックを受けながらの岩佐のシュートはリングの手前に当たる。

「リバウンドは帝桜!」

外れたシュートを光宗が制し、増田、山本とパスがつながる。
前には大島と前田が走っている。

「また来たー! 帝桜の速攻!」

前田がボールを受け取り、ゴールに向かう。
その進路に入ったのは菊地だった。

「菊地が速い! 戻ってた!」

菊地はシュートが落ちる前から前田をチェックして戻っていた。

「何度もやらせるか……!」

菊地にコースを塞がれた前田は急停止する。
そしてすかさずそのままジャンプシュートを狙う。
ドライブを警戒していた菊地の間合いではチェックに間に合わない。
またも放たれた前田のジャンプシュートはリングに吸い込まれた。

「菊地がまるで勝負に行けなくなった」

試合の流れは帝桜に傾きつつあった。
オフェンスの中心であった菊地が2回のドライブを止められてから、一気にボールに絡まなくなった。
ディフェンスに関しても個人技で帝桜が圧倒する。

「止められないんじゃないか……そう一発で相手に思わせるようなシュート。敦子はそれを持ってる」

ボールは仲川から菊地に渡る。
再び前田との1対1になる。

「きくぢ! 勝負しろ! フォローするから!」

仲川の声にも菊地の体は動かない。
いくつかのフェイクを仕掛けながら前田と睨み合うだけであった。

「やっぱり仕掛けていかない!」
「外から見てたうちらだって感じたんだ。目の前で食らえば戦意喪失したっておかしくない」

数プレー前田と1対1をしたことによって感じてしまった実力差。
その絶望感が菊地から攻め気を奪う。
結局、ドリブルを突くことも無く、菊地は仲川にパスを戻した。

「貰い!」

そのパスを狙っていたのは大島だった。
すかさず多田と仲川がドリブルする大島を追いかける。
しかしその距離はどんどん離れた。

(この短い距離で……何でそんなに……!)

大島がカットしたポイントからゴールまでは十数メートルほど。
そのわずかな距離で多田と仲川をぶっちぎる。

「その敦子に加えて、この大島優子だからね……やっぱ恐ろしい面子だよ、帝桜は」

大島のレイアップが決まったところで、渡廊がタイムアウトを取った。
ベンチでは既に背番号21番が早めの交代の準備をしているところだった。

続く

本物のインターハイは終わったというのに、私はまだ夏休みに入れません。
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テーマ : 二次創作:小説
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どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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