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「スラムダンクはできないけれど」第40話

第40話「ワンマンチーム」

「また篠田ー!? 他にないのか、上麻は!」

マナーの悪い一部の観客から半分ブーイングのような野次が耳に入ったが、ディフェンスに戻る、上麻高校1年生ポイントガードの小林茉里奈はまるで気にしていなかった。
上麻は篠田だけ、と言われるのはもう慣れているし、事実であるから仕方がない。
それよりも、そんなことがどうでもよくなるくらいに、小林は篠田に対して尊敬の念を持っていた。
中学時代、全国でもそれなりに有名だった小林は、この上麻高校以外にも選べる学校が沢山あった。
もっと自分が活躍できるようなスタイルの学校に進むこともいくらでも出来た。
それでも小林は当時から篠田のワンマンチームとして有名だった上麻高校を選んだ。

(あの人のプレーには一目で惹きつけられた……篠田さんが後ろにいるから私は積極的に動ける)

パスを回す指原にピタリと張り付く。
それだけ距離を縮めれば、当然ドライブへの対処が出来なくなるが、後ろには篠田がいる。
たとえ抜かれてもフォローしてくれるというこれ以上ない安心感がそこにはある。

速いパス回しから、篠田を出し抜き、ゴール下秋元にパスが飛ぶ。
佐藤すみれと前田亜美がチェックに行くが、秋元は2人相手をものともせず、ゴール下を決める。
1対1では篠田以外敵わないということを実感させられるが、そんな気分を吹き飛ばすような声が響く。

「ドンマイドンマイ! すぐ取り返すよ!」

手を叩き、チームを鼓舞しながら、パス出しをするのは他でもない篠田だった。
すぐに取り返す。
おそらくここまでこの言葉に説得力を持たせることができる選手は、篠田以外にいない。
どんなにチームが苦しい状況に立たされても、その圧倒的なプレーで選手を引っ張ってきた背番号4番。
その言葉にうなずいて、選手たちはまた前を向いて走り出す。

(ワンマンチーム。確かに言われて嬉しい言葉じゃない)

小林からボールを繋いだシューティングガード藤江れいなはすぐに篠田へのパスを見る。
過去に何度も、他の選手、もしくは自らで攻めようとしたことはあったが、やはり起点は篠田が正解だった。

(篠田さん中心に守って、篠田さん中心に攻める。それが上麻の目指しているバスケ。上手い選手が勝手にボールを持ってるだけのワンマンチームとは違う)

珠理奈のマークを振り切った上麻の『ワンマン』にボールを裁く。

「私達は、ワンマンチームであることに誇りを持ってるんだ!」

ボールを受け取った篠田が1対1を仕掛ける。
この試合、もう何度その場面を目にしたか分からない。

(私が受けたこのボールは、他4人の……いや、ベンチに観客席、上麻高校バスケ部全員の思いが乗っかってる)

ドライブからロールターンで内側を切り裂いていく。
ヘルプに出た指原をステップでかわし、ゴールへ向かう。
少し強引な体勢で放たれたシュートはリングからこぼれようとする。
それを見て、瞬時にもう一度篠田は飛び上がる。

「それを簡単に落とすわけにはいかないの!」

リバウンドを制し、誰よりも高く上に伸びた手から放たれたシュートはゴールに吸い込まれる。
審判の笛が鳴り、バスケットカウントワンスローが示された。

「バスカンー! どうすりゃいいんだ篠田麻里子!」

観客が沸く中、フリースローが決まる。
突っ込んでくるだけ。止められそうだが、止まらない。
この試合何度も味わっている。

「佐江。もっと早く珠理奈のヘルプに出ていいよ。篠田が動き出したらすぐだ」

その分ゴール下は私がフォローする、という秋元の言葉に宮澤は頷き、オフェンスに戻る。
しかし、ここで今まで篠田のチェックが無ければ決まっていた珠理奈のミドルシュートが外れた。

「篠田の個人技で得点できる上麻に対し、きっちり判断したパス回しで得点を狙う十桜の方がリスクが高い」

斉藤がそう指摘はするものの、十桜のフィールドゴールの成功率は全く持って問題が無かった。
しかし、上麻の、篠田麻里子の決定率があまりにも高い。
例にもよって篠田がリバウンドを取って、上麻のオフェンスになる。

「今のリバウンドで篠田はもう第2ピリオドにしてダブルダブル達成ですよ」

得点、リバウンド、アシスト、ブロック、スティール、この5つの項目で、2つ、2桁の記録を達成することを『ダブルダブル』と呼ぶ。
篠田はこの時点で、得点、リバウンドで2桁記録を達していた。

「ダブルダブル……正直麻里子にとって達成は当たり前」

上麻監督、東堂が見つめる中、またも篠田がボールを受け取る。
内側へのドライブのフェイクからシュート。しかしそれもフェイク。
腰の浮いた珠理奈の外側をドライブで抜けていく。

「5番のヘルプが早い!」

一歩篠田が踏み込んだ瞬間に宮澤は篠田に寄った。
篠田にシュートを打てる間合いを与えてしまえば、必ずディフェンスが後手になる。
そうなる前の厳しいチェックだった。
それでも東堂は冷静に見守る。

「でもそれは去年までの話。3年生になった今は、もう違う」

ベンチの監督と同じように、ダブルチームを受けても篠田は焦らない。
身体を反転させて、2人をかわそうとする。

(ロール……! させるか!)

珠理奈はそれに反応し、宮澤も後を追う。
止めた、と思った瞬間、篠田のロールはピタリと止まり、もう一度逆に回る。

「フェイクだ! 2人抜いた!」

その長い手足によって、ロール一つ見ても幅が広い。
完全に引っかかった珠理奈、宮澤の外側のわずかなスペースを篠田が抜けていく。
しかしその正面、大きな体が進路を塞ぐ。

「4番がさらにヘルプ! ついに止めた!」

2人の後ろからすかさず現れた、秋元。
流石の篠田でも、その3枚目のディフェンスをかわすだけのスペースは無い。
秋元が突っ込んでくる篠田を待ち構える。
瞬間、篠田の手元からボールが消えた。
そのプレーを見た東堂が深く頷く。

「今の彼女は……トリプルダブルを達成できる」

パスだった。
ボールが飛んだ先には、藤江がいる。
完全フリーで放たれたシュートはリングを貫いた。

得点、リバウンドで2桁記録を達成することをダブルダブル。
そのさらに上はどうなるか。
バスケットボールにおいて、ブロック、スティールで2桁を記録することは極稀である。
そうなると残る項目は1つ。

「アシスト。2年生までは点を獲ることしか頭に無かったようだが、3年になって大きく視野が広がった」

ディフェンスを引き付けて、パスを出す。
単純ながら、篠田がそれをやることによる攻撃力。
十桜はこのワンプレーでそれを痛いほど実感してしまった。
打つ手がない、と絶望感すら感じるほどに。

上麻高校のバスケ。
ワンマンでも、チーム。
それはある意味、他のどこよりもチーム力のあるチームなのかもしれない。

続く

珠理奈さんがK公演デビューということで。
ツインタワーさんとの共演を見て、勝手ながら、「十桜フォワード陣だ」と嬉しくなってしまった自分がいました。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

更新お疲れ様です!

このマリコ様をどう攻略していくのか楽しみです!

自分も最初ツインタワーにじゅり坊?
十桜のフォワードやないか!
と公演あとの画像を見て思いました!
このまま背が伸びればトリプルタワーですねーw

更新お待ちしてます!

No title

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

Re: タイトルなし

> あおやぎさん

コメントありがとうございます。
まさか自分の小説を思い出してくださる方がいたとは嬉しいです。
兼任大変だと思いますが、頑張ってほしいですね。

Re: No title

> 初心者の株さん

コメントありがとうございます。
また遊びに来てください。
こちらこそありがとうございました。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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