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「スラムダンクはできないけれど」第38話

第38話「1対5」

「袖無学園戦とは打って変わって、序盤から流れ持っていかれましたね、十桜は」

田中が深刻な表情で見つめる試合は6点、8点、と上麻がリードを広げる展開であった。
まさに1回戦とは逆。
相手の攻撃が止められず、十桜得意の速い展開に持ち込めない。
そして相手のゾーンディフェンスによってターンオーバーを誘発する悪循環。
オフェンス、ディフェンスどちらも兎にも角にも篠田麻里子を止められない。

「強いて言うならオフェンスだな。ディフェンスで篠田を止められないのはしょうがないとして、攻められないのは厳しい」
「そんなにも上麻のディフェンスは強力なんですか? 穴だらけで、篠田に頼り切ってるだけにしか思えないのですが」

アウトサイド陣がするのはシュートチェックだけで、易々とドライブを許している。
篠田以外のマッチアップであれば、十桜の方が優位に立っているのは明らかだった。
ただ1人、篠田麻里子との1対1が破れない。
今度はインサイド、秋元と佐藤すみれの1対1にもヘルプに出てくる。
流石の秋元もダブルチームには無理に勝負せず、宮澤へとパスを戻す。
ディフェンスが出てきたところをドライブで切り込んでいくが、レイアップを放つ瞬間。
現れた篠田のチェックによって阻まれる。

「また篠田のヘルプでなんとかしのぐ。やっぱりメチャクチャなディフェンスですよ」
「そうか? 確かに特殊だが俺には良くできたディフェンスに見える」
「ええっ? だって篠田に任せきりじゃないですか」
「その『任せきり』を狙っているのだとしたら……だ」

斉藤の言葉に田中は、ここまでの上麻のディフェンスを思い返す。
ほとんどが最後は篠田との1対1で止めている。
ただのヘルプとも思えるが、その1対1を仕向けるようにしているとも思える。

「日本代表に名前が挙がる選手だ。高校バスケの世界じゃ間違いなくトップクラスの1対1の強さを持つ篠田であれば、スリーポイントラインからはもちろん、ペイントエリアから始めた1対1であってもそう簡単に負けはしないだろう」
「つまり追いつかないスリーポイントとゴール下だけチェックして、あとは全部篠田が止めるってことですか?」
抜かれると分かっているような大袈裟なチェックは、篠田がヘルプに出るまでの時間稼ぎ。
篠田がヘルプに間に合えさえすれば、負けない。

「完全に篠田麻里子ありきのディフェンスだ。極端に言ってしまえば、篠田の1対5を他4人がフォローしているんだ」
「1対5ですか……」

対する十桜メンバーも感覚的にそのディフェンスは理解していた。
誘われていると分かっていても、行くしかない。
篠田麻里子の守備範囲に入ってしまう。

(篠田さえ破れば!)

珠理奈がシュートに行くが、これも篠田のチェックをかわしきれない。
苦し紛れのシュートはリングに弾かれ、リバウンドを上麻が制する。
オフェンスも、篠田麻里子。
珠理奈を抜き去り、ヘルプの宮澤をかわすようにバックシュートを決めてくる。
歓声が大きくなったところで、安西がタイムアウトを取った。

「とりあえずオフェンスを改善しましょう。どうすれば点が取れますか? 今の問題は何ですか?」

突然の質問に、選手達は顔を見合わせる。
それぞれが思うことはあったのであろうが、秋元が代表して答えた。

「篠田麻里子を突破すること……ですか?」

他4人もその意見に頷いた。
篠田麻里子との1対1。
彼女1人に守られているということは、それを突破してしまえば点が入る。
当然のことであった。
しかし、安西は首を振り、息をついた。

「残念ながら違いますね」

その雰囲気は、珍しく怒っているようにも見えた。
滅多にない安西の様子に、珠理奈達は緊張する。

「いいですか。この3か月。決して長くは無い期間ですが、私達は何を練習して来たのか。日本代表に1対1で勝つことを練習して来たんですか? それをよく考えてプレーしてみてください」

以上です、と言葉を締め、安西は選手の輪から離れた。
投げかけられただけの質問に困惑する珠理奈達であったが、時間はやってくる。
ブザーが鳴り、コートへ戻っていく。

「ちょっとヒントが少なすぎましたかね。高柳さん」

試合が再開するのを見届けながらそう言った安西の問いに、高柳は一瞬戸惑うも、すぐに答えた。

「でも私は分かりましたよ。監督が何が言いたいのか」
「そうですか? だったら言ってくださいよ。試合出てもらったのに」
「いや、多分珠理奈ちゃんたちも分かってますよ」

試合は十桜ボールで再開し、指原がフロントコートまでボールを運ぶ。
オフェンスの回を重ねれば重ねるほどに、篠田麻里子の存在感は大きくなっているような気がした。

(私達が練習してきたこと……)

珠理奈にパスを出した直後、指原はゴール下に向かって走り出した。
それに合わせるように、珠理奈がドライブを仕掛けていく。
すぐに篠田はその2人の間にポジションを取り、同時に守る。
ゴール付近にディフェンスが集まったのを見て、珠理奈は外で構える玲奈にパスを飛ばす。
その玲奈にも、残ったディフェンスの1人が厳しいチェックをし、ドライブへと誘導する。
指原、珠理奈、玲奈のマークでゴール下に収縮しきったディフェンスの隙をつくように、今度は秋元がハイポストへ上がってくる。
それを見逃さずに玲奈がパスを裁き、秋元がジャンプシュートの体制に入る。

「ナイスパスだ! 十桜はええ!」

流れるような十桜のパス回しは、外で見ている観客すらも置いていかれるほどであった。
普通であれば、間違いなくフリーで秋元がシュートを打てる場面。
しかし、相手は普通ではない選手が1人。

「チェックが来るー! これでダメなのか!?」

秋元の目の前に伸びる長い腕。
篠田の目一杯のチェックの高さは、完全に秋元のシュートコースを奪った。
しかし秋元は冷静にパスを見る。

「まだ1人残ってるっつーの」

篠田の脇を通して、走り込んできた宮澤にパスを出す。
ボールをもらった宮澤は一気にゴール下まで入り込んでレイアップに向かう。
秋元のチェックに飛んでしまっているため、流石の篠田もすぐには追いつけない。

「あそこまでゴールに近づかれたら、篠田はもうチェックに行けないだろうな」

斉藤の言葉の通り、篠田は、おそらく本気で飛べば可能だったであろうチェックを見送った。
宮澤のレイアップが決まる。
上麻のディフェンスを綺麗に崩しての得点は、このレイアップが初めてであった。

「ナイッシュです! 宮澤さん!」
「やれやれ。それが分かってればいいんですよ」

見事な攻撃に十桜ベンチが一段と盛り上がる中、よしよし、と満足気に安西は頷いた。
安西が求めたプレーはバスケの基本、パスアンドラン。
1対1で1枚目のディフェンスを簡単に突破できるが故、攻撃が単調になり、篠田にやられる。
もっと細かい、早いパス回しでディフェンスを崩せば、ゾーンとはいえ半分マンツーマンのようにくっついてくるディフェンスを崩すのは容易い。
ディフェンスを引き付け、フリーの選手がいたらパスを出す。
都立十桜バスケ部が春からここまで毎日のようにやってきたことであった。

「1対5なんてふざけたディフェンスに止められるなんてあり得ないんですよ」

基本を思い出して徹底すれば破れる。
何度も積み重ねてきた練習の成果を発揮できていないことが、安西を珍しく怒らせた理由だった。
険しい表情で見ていた田中と斉藤も、その完全に崩したオフェンスには胸を撫でおろす。

「決まりましたけど……何故篠田はチェックに行かなかったんでしょうか」
「それがこのディフェンスの当然とも言える弱点だ」
「というと?」

上麻のディフェンスにはさらにはもう1つ、根本的な弱点があった。
笑うなよ、と斉藤は前置きをして言った。

「篠田麻里子が絶対必要なんだ。このディフェンスには」

何をそんな当たり前のことを、と田中は一瞬笑いを堪えるが、すぐに理解する。
篠田が絶対必要、ということは当然退場なんてあり得ない。

「つまり……篠田はファウルが絶対できないってことですね」
「うかつなチェックで1つ貰おうものなら致命傷だ」

大抵試合において、チームの中心選手が4ファウルしたらもちろん、場合によっては3つ、前半だけであれば2つで、温存のためにベンチに下がる。
しかし、攻撃も防御も篠田無くしては成り立たない上麻にとっては、篠田がベンチに下がる、なんて選択肢は無い。
なるべくファウルは抑えてゲームをしなければならない。
ファウルになりやすいゴール付近のチェックでは、5分5分は無理、6分も厳しい、7、8分の優位が無い限りはチェックしないと篠田は決めている。

「とりあえずは、オフェンスは行けそうですかね。ただ問題はまだあります」

ほぼ安西の理想通りの攻めを選手が見せたことによって、相手の特殊なゾーンディフェンスを破るビジョンは、選手たちにも浮かんだ。
しかし、相手のディフェンスを破ってもバスケットボールと言う競技のたった半分を攻略したに過ぎない。
むしろ、もっと大きな問題はもう半分の要素にあった。

「まあ確かにうちのディフェンスは苦しいところがあるね」

運ばれてくるボールを見つめながら、篠田は45度にポジションを取った。
そして、パスを貰う。
前を向き、珠理奈と向かい合う。

「でも、だから何? 悪いけど、この点差が縮まることは無いんだよね」

スピードのあるドライブで篠田が突っ込んでくる。
何とか反応する珠理奈だったが、急ストップからの打点の高いジャンプシュートには反応できなかった。
そのシュートは簡単にゴールを射抜く。

「その分、私が点とっちゃうから」

篠田麻里子を止めるビジョン。
珠理奈達には、この時点で、それが全く浮かんでこなかった。

続く

64位までとなると速報順位がかなり面白いですね。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

更新お疲れ様です!

やはり主人公チームには絆というものが他のチームより濃く描かれる分複雑なパスの連携も想像しやすくてとても読みやすかったです!

流石としかいえません(-_-;)

自分も設定などが固まったので文などにしてみたりしたのですが、自分の伝えたい! 分かってもらいたいっていう部分が全然、自分で読んでもしっくりこなくて悪戦苦闘しています(>_<)

この作品をまた一話から読み直してもう三回目になりますw

あと、選挙速報面白い結果でしたね!
自分も推しもなんとか入ったという感じだったのでまだまだ油断はできませんw

長くなってしまいましたが、またの更新お待ちしてます!

Re: タイトルなし

> あおやぎさん

コメントありがとうございます。
小説の方、少しずつ進んでいるみたいですね。
頑張ってください。
楽しみにしています。

私の作品を3度も読んでいただけるとは嬉しい限りですが、小説を書く参考にするのであれば、こんなド素人の作品よりも、やはりプロの方の作品を参考にした方が有益であると思います。

選挙の方は、非常に楽しみです。
開票まで待ちきれないですね。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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