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「スラムダンクはできないけれど」第37話

第37話「2回戦、始まる」

ただ淡々とシューティングをするその姿だけでも、他の選手とは違う。
視線が自然と引き付けられる理由は、その身長以外にも確実にある。
(すごい……向かい合ってすらいないのにプレッシャーを感じるなんて)
その決まり続けるシュートを見つめる珠理奈の手には汗がにじむ。


「ギリギリでしたけど、とりあえず1回戦突破。拍手です」
手を叩き始めた安西に合わせて、選手も顔を見合わせながら疎らな拍手をする。
2回戦前日のミーティング、安西の開口一番は、1回戦の勝利を誉めたものだった。
「今日で半分ほどのチームが脱落したんです。それに生き残った。自信に思っていいでしょう」
たったの1回戦、それでも勝つのはどちらか一方。
突破できたチームと同じだけ、負けたチームがいるのである。

「ま、まあ確かに、言われてみればね」
「これでうちらは、全国ベスト32……?」

もう全国の32校に名を連ねていることをここで初めて知る。
試合終了直後こそ笑顔がしまえないほどだったが、目指すは優勝、こんなところでいちいち喜んでいられない、という思いだった珠理奈達は、その1回戦突破がどれほどのものか、実感していなかった。
圧勝ならばまだしも、残り5秒で決着したギリギリの試合。

「すごいじゃん……1回戦突破」

ただの1勝とは違うもの。
声に出してみて、その重みを感じる。
もう一度、安西に合わせて、今度は選手全員が大きな拍手をして、笑みをこぼす。

「はい。ですから自信を持つと同時に覚悟してください。あと5回、あんな試合を突破するのが、私達の目標なのですから」
「結局、『まだまだ1回戦だよ』ってことですか?」

秋元のツッコミに、そうです、と苦笑しながら安西は頷き、2回戦の対戦相手の資料に目を通し始めた。
その姿を見て、次第に選手にも真剣な表情が戻っていく。
トーナメント、ということに加えて、試合は連日になるインターハイ。
試合間の切り替えは非常に重要なことであった。

「では、ここからは明日の試合の話」

2回戦の相手、福岡代表、上麻高校。
3年前までは、強豪、と言っても代表になるかならないかという程度であったが、ある1人の選手が入学してからは地区で飛びぬけた強さになった。
夏、冬共に、一度も代表の座を逃していない。

「色々考えましたが、決めました。篠田麻里子のマークは誰か」

そのある選手が、上麻を3年間地区負けなしの強さまでにしたキャプテンでありエース、篠田麻里子。
彼女をいかにおさえるかは、試合の最重要のポイントであった。
高い身長を持ちながら、インサイドだけでなくアウトサイドのポジションもこなす。
U-18日本代表、そして日本代表候補にも名を連ねる大会屈指のオールラウンドプレーヤーと正面から勝負できる高校生はそういない。
当然それは十桜も例外であるはずがなく、適任、と安西が指名できる選手は今のところはいなかった。
そんな中で安西は1人、マークマンを指名する。

「珠理奈さんで行きます」

えっ、と声に出たわけではないが、そんな表情が正直に珠理奈の顔に出てしまっていた。
もちろんレベルの高い選手と勝負できるのはこの上なく嬉しいが、単純にこのとき珠理奈は宮澤の名前が挙がるのではないかと思い込んでいた。

「あれ、不満ですか? 1回戦はものたりなさそうな顔してましたから、良かれと思ったのですが」

珠理奈は慌てて全力で首を振る。
高校生日本代表と勝負出来るとなれば、燃えないはずがない。

「そんなわけないです!」


ハッキリと答えた返事の意気込みそのままにこの試合を珠理奈は迎えた。
前日の試合の疲れも気づけば吹き飛び、早く試合を始めたい一心でシューティングをする。
秋元から集合の声が掛かり、試合は開始直前を迎える。
スターティングメンバーとディフェンスは共に袖無学園戦と同じ。
篠田麻里子、要注意、とだけ念を押されて、珠理奈達はコートに送り出された。

「よろしくお願いします」

目の前に篠田が並ぶ。
秋元と握手を交わすその目線は秋元より高い。
「一回戦、見てたよ。相当なチームだ」
「それはどうも」
そしてそのまま、お互いセンターサークルに入る。
審判がその間に立ち、ボールを構える。
慎重に手元を見ながら、タイミングを計るように少しボールが下がり、そして上がる。
空中に舞ったボールに勢いよく篠田と秋元が飛びついていく。
2人の手が交錯し、ボールは上麻高校サイドに落ちた。

(秋元さんがジャンプボールで負けた……!)

ここまでジャンプボールで負けたことが無かった秋元の高さを、篠田は上回った。
驚きを隠せない珠理奈であったが、マークの篠田はすでに左サイドを走り出し、あっという間にボールが渡っている。
すかさずコースに立って、進路を塞ぐ。
腕一本分の間合いで、きっちり篠田をマークする。

バスケの1対1において重要な要素は間合いである。
オフェンスは、ドライブで抜ける近い間合いか、シュートが打てる離れた間合いを取りたい。
ディフェンスは、そのどちらも許さない間合いを取らなければならない。
そのわずかな間合いをボールを挟んで奪い合う。
お互いの領地をいかに占領できるかが勝敗を分ける。

滑らかに篠田がボールを外側に移動させる。
そのまま、ドライブ、大きな一歩で珠理奈の間合いをつぶしに行く。
これに反応した珠理奈がコースに飛び出すが、強引にそれを割られる。
ドリブルを突いていない方の空いた手が、珠理奈をはじき出したのだった。
ヘルプが寄る前に止まり、ジャンプシュートが決まった。

「ドンマイ珠理奈。もうちっとヘルプ早くするわ」

宮澤にポンと肩を叩かれる。
篠田に抜かれた瞬間、珠理奈には強烈なイメージが残っていた。
1対1における領地の奪い合い。
今までの相手とはレベルが違う。
守る領地をじわじわと侵略されたとも、その隙間を縫われて突破されたとも違う。
大軍、洪水のような勢いで押し寄せる大軍に、丸ごと領地を奪われたような感覚。
その実力に戸惑いながらも、珠理奈はフロントコートへ走る。

(マンツーマンじゃないな)

ボールを運ぶ指原は、相手のディフェンスの形態を冷静に見る。
マンツーマンなのかゾーンディフェンスなのか、判断して指示を出すのはガードの仕事だ。
上麻のディフェンスは特にマークマンが決まっていないゾーンディフェンスであることはすぐに分かった。
しかし、その特殊な陣形に首をかしげる。

(外に3人、ゴール下に1人……で、篠田麻里子はどういうこと?)

アウトサイドは3人のディフェンスが、移動してマークに付いてくる。
ゴール下にはセンターが待ち構える。
これで残る篠田が真ん中に構えれば、1-3-1のゾーンディフェンスになる。
しかし、篠田の位置は中途半端にボールに合わせて動き続けている。

「よくわかんないけど、外が3人なら、4人のパス回しには付いてこれないでしょ」

指原、玲奈、珠理奈、宮澤の4人で次々とボールを受け渡し、ディフェンスを翻弄する。
ボールが珠理奈に渡ったとき、ついにディフェンスはマークに付ききれなくなる。
慌ててシュートチェックに飛んでくるディフェンスを抜き去り、ミドルシュートを狙う。

(なっ……高い……!)

しかし、猛スピードでヘルプに出てきた篠田の指先がボールに触れた。
落ちたシュートをゴール下、上麻センター佐藤すみれが制する。
攻守交代もつかの間、すぐに上麻のボールは前に飛んだ。
その先には珠理奈をチェックしたばかりの篠田がもう走っていた。
ボールを受け取った篠田が勢いのままにドライブし、レイアップを放り込む。

「まだまだっすよ。一本です。一本」

指原が声を掛けながらボールを運ぶが、待ち構えているのは変則的なゾーンディフェンス。
まだ正体も良く掴めていない。
一本前と同様にパス回しから珠理奈が1対1で相手を抜き去る。

(で、篠田が出てくるんだろ?)

同じ手は二度食わない。
ヘルプに出てきた篠田を見てから、外で構える玲奈にパスを出す。
受け取った玲奈がスリーポイントを狙うも、完全にドライブを捨てたようなチェックが飛んでくる。
余裕でディフェンスを破り、ミドルシュート。
しかし、玲奈も先ほどの珠理奈と同様にシュートを構えた瞬間に驚愕することになる。

(えっ……?)

シュートはブロックされた。
一瞬前まで逆サイドの珠理奈をチェックしていたはずの篠田麻里子によって。
驚いたのは珠理奈と玲奈だけではない。
それを見ていた指原も宮澤も秋元も、一瞬何が起こったのか分からないほどになる。

そのあとは全く同じ。
ブロックからあっという間に前を走る篠田にパスが渡り、ディフェンスが戻りきる前に決められる。
その運動量は、攻守どちらも驚異的だった。

「これが日本代表候補か……!」

ディフェンスに戻り大きく手を広げる上麻のエースは、まだまだ余裕の表情であった。

続く

というわけでずっと名前を伏せていた人物は篠田麻里子さんでした。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

更新お疲れ様です(>_<)

自分の勘だと上からマリコで上麻かなと思っていました!

すーちゃんがCとなるとマリコ様はPFですかね?

あとDFはマッチアップゾーンの類いでしょうか?

更新お待ちしてます!

Re: タイトルなし

> あおやぎさん

コメントありがとうございます。
隠す必要は無いのでずばり言いますと、上からマリコで上麻で正解です。
ポジションは上麻の他3人も登場予定なのでお楽しみです。
マッチアップゾーンの類……まさかあの描写だけでその言葉が出てくるとはやられました。
嬉しい半分悔しいですね。

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>コメントくださった方

URLの方が間違っているのか、リンクが貼られてないです。
もしよろしければ、もう一度コメント頂けますでしょうか?

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Re: No title

> コメントしてくださった方

すいません、やっぱり貼られてないです。

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ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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