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「スラムダンクはできないけれど」第35話

第35話「お返し」

「天才、小嶋陽菜、か」
「天才?」
「業界一部から小嶋がそう呼ばれているのを聞いたことがある。その底知れない実力故に、だ。まさかこういうことだったとはな」

点差は徐々に縮まっていた。
圧倒的な攻撃力を持つ小嶋を十桜は中々止められない。
珠理奈と玲奈を中心に点は返すものの、明らかに押されていた。

「でも日本代表とかには、名前出ないですよ」
「そりゃあんな極端な天才じゃ無理だろうな」
「確かに……超がつくほどのスロースターターってわけですからね」

峯岸のスリーポイントシュートが決まって、点差は7点、再び1桁差になる。
当然ながら、小嶋が調子を上げたからと言って、他の選手の調子が下がるわけではない。
高橋のパスも、峯岸のシュート力も健在である。
それに小嶋も加わるとなると、十桜にとってはディフェンスで的が絞れない。
袖無学園チーム全体の攻撃力が、小嶋のスタートに伴い、前半とはレベルが違うものになっていた。

「ここ一本、絶対守るよ!」

高橋の声で袖無学園全員の腰が少し落ちる。
5人全員が集中した粘り強いディフェンス。
1対1では敵わなくとも、ヘルプからのローテーションで止める。
この終盤に来て、完璧なマンツーマンディフェンスであった。
そしてそのプレッシャーは不用意なパスを生む。
秋元から指原へのパスを、高橋がスティールする。

「速攻!」

ボールを奪った高橋と、逆サイドを走るは小嶋。
しかし2人の間に猛スピードで珠理奈が戻ってくる。
(最終的にシュートは小嶋陽菜。間違いない)
珠理奈はドリブルで迫ってくる高橋が仕掛けてくることは無い、とほぼ断定した。
仕掛けたところであまりに不利な勝負。
この場面で小嶋に任せない理由は無い。
後はパスを待つだけであるのだが……中々パスは出ない。
高橋は姿勢を低くして、スピードを上げる。
(まさかホントにシュートまで行く気か!?)
珠理奈の体がわずかに高橋に寄った刹那の出来事。
高橋の手からボールが消えた。
珠理奈には何が起きているのかわからない。
かろうじでパスが出たことだけ分かる。

「ノ、ノールック股抜きビハインドザバックパス!?」

観客は、高橋の背中に回した手から出たボールが珠理奈の股を通って小嶋に繋がったシーンを見逃さなかった。
手元を見ながら体の正面から出したとしても、あのスピードでディフェンスの股を抜くのは難しい。
まさに神業であった。

「でもそれに追いつく……!?」

完全にパスで抜かれた珠理奈だったが、その女子離れした運動能力でシュートに行く小嶋まで迫る。
そして思い切り飛ぶ。
その高さは身長で勝る小嶋の上を行っていた。

「松井珠理奈高いー! 小嶋を止めるか!?」

ボールをがっちりと保持したまま、小嶋が珠理奈に突っ込んでいく。
勝負はすぐについた。
空中でぶつかり合った瞬間、場所を譲ったのは珠理奈だった。
少し遅れて小嶋はシュートをリリースし、ボールはリングを通った。

「バスケットカウント! ワンスロー!」

上手く珠理奈に体をぶつけたことにより、笛も鳴った。
倒れた相手に小嶋は手を差し出し、引き起こす。
その意図が分からず何も言えずに不思議がる珠理奈に、小嶋は不敵に少々笑いながら言った。

「たかみなのお返しだよ」

フリースローも決めて、4点差。
その点差はもう差ともいえない。
勢いで言えば、逆転も時間の問題であった。

「出た。あの顔だ」

観客席の菊地が珠理奈に指をさして言った。
少し俯いてオフェンスに戻る珠理奈の顔。
口角がわずかに上がっている。

「あたしにやられたときもあの顔してた」

次の瞬間、ボールを持った珠理奈が袖無ゴールへドライブする。
立ちはだかる小嶋のブロックを、空中でかわしてシュート。
そのプレーだけを切り取れば、男子と見比べてもそん色がない。

「ダブルクラッチ……あれにうちらは最後やられたわけか」
「珠理奈ちゃん……女子であれを出来る選手なんてそういませんよ」

都立十桜戦最後に決められたシュートを思い出す。
空中で相手より一手多く動ける。
異常ともいえる滞空時間がそれを可能にする。
珠理奈はすでにその技をモノにしていた。

「でも……止められないのは今や袖無も同じ」

峯岸のドライブから高橋。
そのままワンタッチで小嶋にパスが飛び、ミートシュートをきっちり決めてくる。

「このまま点の取り合いになるかな……?」
「いや、お互いにそんな体力は残ってないですよ」

第3ピリオドのオールコートゾーンプレス。
仕掛けた十桜はもちろん、それに付いていった袖無学園も相当な体力を消費している。
シュートの確立等は、常人であれば確実に落ちていく。
ただしこの試合においては1人の天才を除くことになる。

「それでも、にゃんにゃんは決めてくれる」

小嶋が姿勢低くドライブを仕掛けていく。
宮澤が何とか反応し、横にくっつく。
そして逆サイドからヘルプに出た珠理奈が進路を塞ぐ。

「宮澤さんと珠理奈ちゃんのダブルチーム!」

これは止められる、と拳を握った高柳だったが、すぐに焦りに変わる。

「まさか無理やり……!?」

わずかに空いたディフェンスの間に、無理やり小嶋は飛び込んだ。
しかしそこに人が1人通る分のスペースは当然に無い。
シュートをまとも打つのは不可能であった。
しかし、小嶋は打つ。
それは打つ、というよりも、投げる。
メチャクチャな体勢から放り投げたボールは、高い弧を描く。

(まさか……!)

ファウルの笛を聞きながら、珠理奈は振り返った。
真上から落としたように、すとんっとボールはリングの中心を通った。
審判が腕を振り下ろす。
バスケットカウント、ワンスロー。

「決めたあああああ! 化けもんだ! あの6番!」

フリースローラインへと向かう背番号6。
前半では疑問にしか感じなかったその若い番号が、今は妖気をまとっている。
その言葉をしまおうとしても、しまえなかった。
本気で珠理奈は思ってしまった。

(止められない……!)

当然のようにフリースローは決まる。
会場のボルテージは最高潮に達する。
それは珠理奈達十桜にとっては嬉しくない雰囲気。

「1点差! たったの1点差!」

第4ピリオド開始時の10点以上の差が、もう無い。
観客のほとんどが期待するのは、もはや逆転以外にない。
渡廊高校戦で受けていた声援が、今度は相手チームに向けられている。
勝ってくれ、止めてくれ、逆転しろ。
もちろんその言葉がはっきりと聞こえたわけではない。
しかし全身で感じる会場の雰囲気は、間違いなく、袖無学園の応援であった。

「1本ですよ。時間かけていきましょう」

指原の声で十桜はセットプレーに動き出す。
バリエーションは少ないが、この試合では初めて使う。
袖無ディフェンスは対応しようにも、付いていけない。
しかも、シューターはこの試合絶好調の松井玲奈。
綺麗にスクリーンが決まり、フリーでボールを受け取る。
シュートが放たれる。

「でも……この試合ちょっと『決まりすぎ』ですかね」

渡辺の言葉に、どういう意味? と菊地が横を向いた瞬間、ガツンッというリングの音と歓声が聞こえる。

「そろそろ外さないと人間じゃないですよ。彼女も人間です」

玲奈のシュートは外れた。
もはやボールは半分ほどリングを通っていたのではないか、と思われるシュートだったが、それでもリングからはじき出された。
小嶋がリバウンドを制す。
残り時間は1分を切っている。
しかし、高橋は焦らない。
十桜がしたように、セットプレーの指示を出す。
絶対に止めたい十桜であったが、めまぐるしく移動するボールにディフェンスが崩される。
特に小嶋の動きには一挙手一投足に反応しなければならない。
その隙をついて、ボールはフリーで峯岸に渡る。

(これを決めれば……!)

放たれた峯岸のシュートは綺麗な弧を描く。
観客にとっては期待の、十桜にとっては絶望のシュート。
回転のかかったボールは真っ直ぐリングに向かう。
……がしかし、通らない。

「外した! 袖無も決められない!」

ボールはリングの奥に当たり、大きく上に飛ぶ。

「リバウンド!」
小嶋、宮澤、秋元3人のゴール下リバウンド勝負。

(ここで取らなきゃ、負ける!)

1つのボールを追って伸びる手。
宮澤が小嶋をがっちりと押し出す。
その隙に、いち早くそれにたどり着いたのは、秋元の手だ。
手に収まったボールを一気に引き寄せる。

(おしっ……!)
「秋元さんナイスリバン!」

しかし、その瞬間だった。
パンッ、という乾いた音が聞こえる。
秋元の手からボールが離れていく。
時間が止まったように感じる。
ゴール下、待っていたかのように秋元のボールを狙っていたのは、148センチ、袖無学園のキャプテン。
(高橋みなみ……!)

高橋のスティールしたボールはそのまま小嶋の手に収まる。
「打たせるか!」
もはやシュートを打たれたら決められてしまう。
秋元、宮澤、玲奈、の3人がかりのチェックでリングへの道を完全に塞ぐ。
しかし、小嶋はシュートに来ない。
小嶋の選択は、パスだった。
外で待ち構えるは、先ほど外したばかりの峯岸である。

「みいちゃん、フリー!」

スリーポイントラインの外でボールを受け取った峯岸は滑らかにシュートフォームへ入る。
そこに外したばかり、という動揺はまるで無い。

「一度外しても次は決める。これは相当おいしいよね」

完璧なフォームで放たれたスリーポイントは、見事な弧を描いて、今度こそ、リングを打ち抜いた。

「逆転! 一気に2点リード! 袖無大逆転だ!」

物凄い歓声がコートを包み込んだ。
期待した通りの大逆転。
バスケはこうでなければ、という大接戦。
残り時間25秒、都立十桜は最後のオフェンスを仕掛ける。

続く
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

更新お疲れ様です!

最後は誰がやってくれるのか!!!

楽しみでしょうがないです!

更新お待ちしてます!

Re: タイトルなし

> あおやぎさん

コメントありがとうございます。
バスケではこんな1点差の試合が本当によくあることだから面白いですよね。

>楽しみでしょうがないです!

非常にうれしいお言葉です。
頑張りますので、楽しみにしていてください。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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