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「スラムダンクはできないけれど」第29話

第29話「開会式」

足を一歩踏み入れた瞬間、おお、と思わず口から声がこぼれた。
自分の小ささを実感させられるほど、左右に広がる大きなアリーナ。
広い方である自分の学校の体育館が何個も入ってしまうような気がした。
そしてその広大なスペースを埋め尽くす何千人もの自分と同じ高校生。
想像以上にその景色は壮大だった。

「宮澤さん、こういうこと言うと怒るかもしれないですけど、どこ見ても強そうに見えます」
「あのな、さしこ。うちらだって同じ高校生、同じ全国大会出場校だ。何にもビビることは無いだろ」
「でも、やっぱり強そうに見えます」
「じゃ、見えるな」
「ええっ」

北信越総体、つまりインターハイの開会式が始まろうとしていた。
今年は『北信越』という名前の通り、新潟県、富山県、石川県、福井県、長野県の5つの県で競技が行われる。
バスケットボールが行われるのは、石川県、金沢市。
東京からやってくるだけでも疲れたが、九州、四国、北海道や沖縄からやってくることを思えば随分と楽な旅だった。
普段ならこういった厳かな式の長ったらしい話には退屈してしまう珠理奈だったが、今回ばかりは流石に時間が早く過ぎた。
話を聞いていたかは別として、どこに目をやってもいるのは珠理奈を興奮させる選手ばかり。
つまりは全国大会、日本中の代表が集まっているのだから、当然だった。

「うちらだけだったよ、人数足りてないの」
開会式が終わり、各校が散り散りになったところで指原が息をついた。
どこの学校もきっちり縦に2列並んでいる中、都立十桜だけはスカスカのままだった。

「まあ全国に行くほどって言ったら何十人の部員の中から選ばれた選手やからなあ」
「まあ、うちらの中学はそれほどでも無かったけど」

(そうだよな……この人たちみんな全国経験者ばかりなんだよな)
大家と北原の会話を聞きながら珠理奈は素直に思っていた。
高校バスケの迫力は中学のそれとはまた別物とも思っていたが、やはり1度でも全国を体験しているかどうかの経験は大きい。
「秋元さんのとこも部員いました?」
前を歩く3年生2人、秋元と宮澤に指原が話を振った。
宮澤が笑いながら振り返り、答えた。

「確かに部員はいたけど、そんな話の前に、うちらは全国行ってないし」
「え?」
「だから頼んだよ。全国に関しては君らの方が先輩だ」

なあ? と宮澤に手をかけられた秋元も頷いている。
ポカンと口を開けた指原が、少し遅れてリアクションする。

「てことは……中学時代、全国は行ってないんすか?」
「だからそうだって言ってんじゃん」
「えええええええ!?」

1年生、そして2年生までも全員が顔を見合わせて驚く。
その声に宮澤はわざとらしく指で耳を塞いでいる。

「なんだよ、一度も全国へ行ったなんて言ってないだろ」
「いや、でも完全にそういう雰囲気と言うか空気と言うか……だってツインタワーって有名だったんですよね?」
「うちらは無冠だよ。3年間1度も代表になれなかった」

これには珠理奈も驚いていた。
全国の雰囲気が地区予選とは違うのは明らかだ。
それを初めての経験だというのに、秋元と宮澤は何も気後れしていない。
後輩を前に見栄を張っているなんて空気も無い。
おそらく2人には、この舞台に立っているというビジョンが具体的に浮かんでいたのだろう。
モヤモヤとしたものではなく、ハッキリと目標として見えていた。だからビビらない。
純粋に尊敬する。
そして同時に疑問も浮かぶ。

「あの秋元さんと宮澤さんの中学ってどこですか? どこにあったんですか?」

その疑問は単純なこと。
何故全国へ一度も行けなかったのか。
秋元が答えた。

「ああ、歌姫(うたひめ)中学。千葉だ」

この答えを聞いて珠理奈は即座に納得した。
なるほど、確かにあの人がいる地区じゃ無理かもしれない、と。
千葉県代表、『不羅下(ふらげ)中学』。
珠理奈はまだ中学1年生で関係は無かったが、「千葉県代表になれば全国優勝」と言われるほどだったのを覚えている。
そんなことを考えていた時、不意に後ろから声がした。
自分に話しかけてきているわけではないことはすぐに分かった。

「才加、佐江っ。久しぶり」
「有華に、梅ちゃんじゃないか。久しぶりだな」

秋元と宮澤に気さくに話しかけたのは、同じジャージを着た2人組だった。
その身なりからバスケットボールの選手であることは明らかで、つまりそれは全国大会出場チームの選手である。
有華と呼ばれた方の身長は珠理奈と同じくらい、梅ちゃんと呼ばれた方は、大分低かった。

「やっと全国で戦える日が来たね。楽しみにしてたよ」
「お待たせって感じかな。ようやく追いついた」
「まさか今さら、裏切者、なんて言わへんやろ?」
「そんなこと1ミリも思ってないよ。そっちこそ4回戦まで負けんなよ」

和やかな雰囲気でお互いの健闘をたたえ合い、突然現れた2人組は去っていった。
満足そうな笑顔で秋元と宮澤が珠理奈達のもとへ戻ってくる。

「ちょうど今話してた同じ中学の友達だよ」

誰ですかあの2人? とすかさず聞いた指原の問いに秋元が答えた。
先ほど驚かされたばかりの、全国へ行けなかった中学のチームメイトであった。
そしてそれを聞いた珠理奈達はまたも同じように驚かされることとなった。

「えっ……だって今の2人『帝桜』のジャージ着てましたよ?」

すれ違えば振り返ってしまうような、選ばれた者しか背負うことのできない名前。
秋元、宮澤の2人と気さくに話していた2人には、間違いなく背中にその名前が刻まれていた。

「うん。そういうこと。あいつらは帝桜高校なんだ」
「えええええええ!?」

また一同が声を上げる。
珠理奈もこれまた純粋に驚いたのだが、同時に先ほど納得しかけていた疑問がまた浮かんでくる。
秋元と宮澤と同じ中学のあの2人。
開会式にいるということは間違いなく選手であり、最低でもベンチには入っている。
帝桜のベンチであれば相当な実力者であることは疑う余地がない。
そんな2人の選手と秋元と宮澤。
この4選手を擁しながら、全国へは行けなかった。
歌姫中学の全国を阻み続けた不羅下中学の強さに、現実味が湧かない。

「ま、あいつらと当たるのはまだまだ先だ。何度も言ってるけど、今は初戦の袖無」

本当に何度も言っていることを秋元がもう一度言った。
その秋元を先頭に、会場を出る。
ホテルに戻れば、ミーティング等、初戦に向けていくらでもやるべきことがある。
観戦に全国へ来ているわけではない。
あの大舞台で試合をする、ということを忘れてはならない。

ホテルのロビーでチェックインを済ませ、大きな荷物を持ち、ゾロゾロと部屋に向かう。
珠理奈は1部多めに貰ってしまったパンフレットを丸め、歩みに合わせて自分の太ももを小気味よく叩く。
他にも自分たちと同じようなジャージを着た高校生の姿が沢山見える。
やはり試合を明日に控えた、ピリピリとした緊張感が伝わってくる。
そんな中、その緊張を消すような、甲高い声が聞こえた。

「えーん」

続く

というわけで第2部スタートです。
「不羅下」って物凄く強そうで。

そういえば、珠理奈無事退院だそうですね。
良かったです。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

更新お疲れ様です!
歌姫やはり期待以上のワードばかりで本当にうらやましく思います(>_<)

自分も今設定などを考えてまして
なんか考えれば考えるほど変な気がして

Re: タイトルなし

>あおやぎさん

コメントありがとうございます。
回収できるか不安ですが、今の内に色々と名前を出して伏線を張っておこうかと思います。

設定は大事なので、納得いくまで考えた方がいいと思います。
頑張ってください。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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