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「スラムダンクはできないけれど」第27話

第27話「文武両道」

気分が良い。
ここのところ毎日だ。
もはや学校生活がまるで別のモノのように感じる。
もちろん内容は大して今までと変わりは無いのだが、気持ちが違う。
『女子バスケットボール部 全国大会出場』という校舎にかかる大きな垂れ幕を見るたびに嫌なことも忘れる。
あれから何度も夢ではないかと真面目に考えたし、ホームページを何度も更新して試合結果を確かめたし、ビデオも見た。
現実だ。間違いなく私達は全国へ出場できる。

「才加、すごいじゃん。念願の全国でしょ?」
「うん。夢みたいだよ」
「個人種目ならたまにあるけど、チーム種目で全国なんて都立高校じゃほとんどないからね、応援してるよ」
「ありがとう。ホント今は順風満帆だよ。全国が楽しみで仕方がない」
「そっか才加はテスト勉強もバッチリなのか……さすがにテスト近いとテンション下がるよ」
「テストか……まあちゃんと勉強はしてるけど……ああっ!」

不思議そうな顔で見つめるクラスメイトの視線を背に、秋元は走り出した。


「皆見たかよ! 今月の月バス!」
勢いよく部室の扉を開けて入ってきたのは宮澤だった。
手には買ったばかりのバスケットボールの月刊誌が握られている。
「それで4冊目ですよ、宮澤さん」
指原が、宮澤が持つものと全く同じ、バスケットボールの雑誌を見ながら言った。
北原も、大家も持っている。同じ雑誌を。
「今、皆で回し読みしてるところです」
「なんだよ……なに皆して同じ本買ってんだよ」
がくりと肩を落としながら、宮澤は雑誌を開いた。

「にしてもすげえな。まさか1ページ丸ごとうちらとは」

何も言わずに全員が読みふける中、今度は珠理奈と高柳が入ってくる。
読んでいる本を見て、すぐに高柳が声を上げる。

「あー! 月バス!」
「何だ? 5冊目か?」
宮澤がうるさそうに高柳の方を見る。
「いやいや、まだ読んでないんですよ!」
「じゃ、見た方がいい。驚くぞ」

宮澤から渡された本を、高柳が開く、それを横から珠理奈ものぞく。
ペラペラとページを進める。
探す記事は1つしかなかった。
そして見つける、『インターハイ予選』の記事。
「おお……」と高柳は目を丸くして驚く。

「珠里奈ちゃんすげー! 『新星現る』だって!」

雑誌を開いて右側のページ、1ページ全部が、『東京第1代表』として都立十桜高校が扱われていた。
『公立高校がまさかの快進撃。全国での活躍も期待』とベタ褒めだった。
そしてその真ん中を堂々と埋める写真は、珠理奈の写真だった。
エースとして点を取り続けてきた、特に渡廊高校戦での活躍が大きく記されていた。
流石にこれには珠理奈も右頬ポリポリと掻いて、顔を赤くする。

「全試合の記録が載ってるよ……うちら初戦から見られてたってこと?」
「暇な記者もいたもんだな」

この前地区予選を戦い終えたばかり。
しかしもうインターハイは迫っている。
他のページを飾る全国の強豪校を見るたび、楽しみになってくる。
(この人達と……もうすぐ戦えるのか)

大いに盛り上がる中、勢いよく扉が開いた。
半分息を切らした秋元がそこには立っていた。
「なんだよ、6冊目……」
宮澤が言い終わる前に秋元が口を開いた。

「お前ら、テストは大丈夫か!?」

全員が顔を見合わせる。
一瞬のうちに行われる、「勉強してる?」「まあ一応」のアイコンタクト。
その様子を見て、宮澤が答えた。

「大丈夫だよ。多分」
「ホント? テストの点悪かったら、部活出来ないからな」

やっぱそうなんだ、と高柳は中間テストの自分の点数を思い出してみる。
問題は無かった。
期末に向けても勉強はしている。
苦手な社会を乗り切れば行ける。

「1年はどうなんだ? 高柳」
「私は大丈夫ですよ。他も多分大丈夫……」

ふと隣の珠理奈を見る。
浮かない。顔が完全に浮かない。
バスケで見せる自信満々のどや顔がどこかに吹っ飛んでしまっている。
高柳の言葉が詰まったのを見て、秋元は珠理奈の様子に気づく。
高柳、秋元の2人の視線を浴び、珠理奈は苦笑いで答えた。

「やれば出来るんです……よ?」
「それ言ってるやつが一番危ないんだよ!」

返答を聞いてすぐに秋元が頭を抱えた。

「うわそこかー。まさかの珠理奈かー。今年やばいのは」
「ホントですよ! 最近ちょっとバスケしすぎただけです」
「言っとくけど、赤点取ろうものなら鉄拳制裁だからな……なあ? 指原、大家」

ビクッと身体を奮わせた2人は、もうすでに雑誌を置いて勉強に励んでいた。

「他の1年は? 玲奈は?」
「玲奈ちゃんはイメージだけど勉強できそう」
「いや、分かりませんよ。そういう奴に限ってダメかもしれない」

ちょうどその話に合わせたかのように玲奈が入ってくる。
目の前で立って話す秋元、珠理奈、高柳、奥では勉強に励む指原と大家。
いつもとちょっと違う雰囲気の部室に目を丸くする。
秋元からここまでの経緯を聞いて答える。

「テストですか? とりあえず全教科80点は……大丈夫です」
「ほらやっぱり」
「くそう……」

肩を落とす珠理奈は実際やれば出来る子であった。
別に昔から勉強ができないキャラになったことは無いし、なるつもりもない。
ただ、暇さえあればバスケをしているような生活を送っていれば成績も下がる。

「分かりました。絶対勝ちます」
「え? 何に?」

ビシッと突き出した人差し指の先には玲奈の顔。
その顔は不思議そうに珠理奈の人差し指の先端を見つめている。

「玲奈にです。全教科勝ちます」


この宣言から2週間後が経った。
テストを終え、テスト返却の日を迎える。
「珠里奈ちゃん……大丈夫?」
高柳が不安そうに見る、目の下に大きな隈を作った珠理奈のここ1週間の平均睡眠時間は3時間を下回る。
「テストはばっちりだ。赤点なんて眼中にない。あとは点数で玲奈に勝てるかだ」
「いやもうテストより体調を心配してほしいんですけど」

放課後の部室。
一番奥の席、どっしりと腕を組み座るのは、秋元の代わりにテストのチェックを任された宮澤。
その隣では、涙を流し、生還を称えあう指原と大家の姿が見える。
まっすぐとそこに向かって歩く。
珠理奈の顔にはもう、いつものどや顔が戻っていた。

「……おお! 凄いじゃんか! ホントにやればできる子なのか」

珠理奈が差し出したテストには、80点以上点数、中には90点を超えているものもある、がずらりと並んでいた。
「だから言ったじゃないですか」
「この点数なら玲奈にも勝ったかもな」
打倒玲奈、という珠理奈の宣言は宮澤もよく覚えていた。
この点数を超えるとなったら、クラスでもトップクラス、秋元才加のような点数を取らなければならない。
やれば出来る、出来てしまう。
こんな場面でもこの1年生の凄さに気付かされる。

「こんにちわです」
ほどなくして今度は玲奈が、あくび混じりに入ってくる。
「お、来たな玲奈!」
待ってました、と言わんばかりに机にはまだ珠理奈のテストが広げられている。
目に入ったその点数に玲奈も驚くが、特に手に取ることもなく、かばんを開け始める。
取り出されたクリアファイルから数枚の解答用紙が出てくる。
何も言わずに、玲奈は宮澤に渡した。

「おいおい、なんだこりゃ……」

受け取った宮澤は点数を見た瞬間に目を丸くする。
その良いのか悪いのか、どちらとも受け取れる反応に珠理奈は眉を曲げる。
慌てて、宮澤の後ろへ回り込み、玲奈のテストへ目を通す。
珠理奈は言葉を失う。
そこには、全ての教科で90点を超える点数が刻まれていた。

「なっ……」
「玲奈ちゃんすげー」

いつの間にか珠理奈の隣に現れた高柳も口をぽかんとあけて驚く。
「残念だったな、珠理奈」
ドンマイ、とでも言うように宮澤が笑いながら珠理奈に、その一瞬のうちに輝きを失ってしまったテストを返す。
何も言えずにそのテストを握りしめる。
やられた。完全に。宣言までして。
クールにテストをかばんにしまう玲奈はどこか嬉しそうだ。

「なんだよ玲奈。そんなに勉強できるなら言ってくれよ。80点くらいみたいなこと言ってたくせにさー」

ずるい、と言いながら珠理奈は椅子にもたれるように勢いよく座った。
ここ2週間の緊張が切れ、力が抜けたようだった。
あー、悔しい悔しい、と改めて自分のテストを見直す珠理奈と、まだどこか嬉しそうな表情で、さっさと練習着に着替えはじめる玲奈を高柳は交互に見ていた。
そしてあることに気付く。
珠理奈の目の下にあるのと同じような黒い隈が、もう1つある。
思えば、あくびをしていたり、わざわざあんな嬉しそうな顔したりするなんて、普段無い。
高柳は笑った。
こりゃ苗字と身長が同じじゃない方が不自然だ、と。

そろそろ練習を始めようか、といったところで秋元が部室に入ってきた。
バスケ部の顧問、といっても形だけだが、に呼び出され、練習には遅れる、という話は宮澤がすでに聞いていた。
秋元の手には1枚の紙が握られている。
何なのかは、おそらく誰もが分かっていた。

「とりあえず、テストは皆大丈夫だったよ」
宮澤がすぐに駆け寄り報告する。
「ああ。先生にも褒められた、優秀だってな」
秋元が笑いながら頷き、部員たちを見渡す、珠理奈を、玲奈を。
そしてすぐに、誰もが気になっているその手に握られている紙を差し出す。
「出たぞ、トーナメント表」
その1枚紙を全員が覗き込んだ。
宮澤が代表して、『都立十桜高校』の名前を探す。
人差し指で上から順番になぞっていく。
あったぞ、と指が止まる、その隣。

「初戦の相手は……袖無(そでなし)学園高校……!」

続く

いわゆる息抜き回です。
そしてIH初戦の相手の決定です。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

No title

こういう息抜き回は良いですね。

そしてW松井の似たもの同士な感じにちょっと笑いました(笑)

やはり負けず嫌いはカッコイイですね!
相手のポジションを考えながら更新お待ちしてます(≧∇≦)

じゅりれなの絡み面白い\(^-^)/
なんか元気もらいました(笑)
じゅりなの入院心配です(;´д`)
これからも頑張って下さい(*^^*)

Re: No title

>ネコさん

コメントありがとうございます。
また試合が始まったら長くなるので、バスケ以外のおはなしをいれるならここしかありませんでした。
実際SKEのツートップが同じ苗字で同じ身長って凄いと思うんですよね。

Re: タイトルなし

> あおやぎさん

コメントありがとうございます。
名前だけでもう次の対戦相手がおわかりでしょうか。
楽しみにしていてください。

Re: タイトルなし

> ちゅうさん

コメントありがとうございます。
玲奈の方がほとんど喋っていないので絡みといっていいのか疑問ですが、面白いと思って頂けたなら幸いです。
ご本人の方は心配ですね。
元気に戻ってきてほしいものです。

ウマロムさんの小説、とても面白いです!!
今日一日で全作品読みきっちゃいました(*^^*)

自分も女子バスケ部だったのでとてもリアルで楽しんでます。
次は袖無ということで、自分の推しや自分の推しユニットが出てくるであろうと期待しております(*´∇`*)

頑張って下さーい

Re: タイトルなし

>ジョセフはドアをノックしないさん

コメントありがとうございます。
他の作品まで読んでいただけたそうで、非常に嬉しいです。
女子バスケ経験者の方から見たら稚拙な文章かと思いますが、お許しください。
「袖無」で大体分かっちゃましたかね。
頑張りますので待っててください。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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