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「スラムダンクはできないけれど」第22話

第22話「無茶振りバスケットボール」

「逆転……ホントにした」

渡廊のタイムアウトで、コートに選手はいない。
会場は、逆転した瞬間の大歓声とは打って変わって静かだ。
時間もまだまだある。
点差もたったの1点。
それでも、都立高校が東京の絶対王者からリードを奪う。
ある程度の高校バスケの事情を知っている者なら、少なくともこの試合を見ている者ならば、衝撃を受けない者はいない。

ビー、と無機質な音が鳴り、選手がコートに戻ってくる。
審判から平嶋にボールが手渡され試合が再開される。
1度渡辺にボールを預け、平嶋がボールをゆっくりと運ぶ。
思い出したかのように渡廊の大きな応援がスタートする。

「まだ秋元を出さない!?」
「凄い度胸だな、十桜の監督は」

やっとのことで1点のリードを奪っても尚、小森のマークにつくは宮澤だった。
小森と身体をぶつけ合いながら、宮澤はタイムアウト中の安西の言葉を思い出す。


タイムアウトになりベンチに戻った宮澤は、秋元の交代に関して全く触れずに当然のように作戦盤を使いディフェンスの確認を始める安西に思わず本音を零した。
「いやあ、流石にもう小森の相手がきついかなーなんて」
「またまた冗談を、宮澤さん。はい、作戦盤見てください」
(この人マジだよ……普通に考えてここだろお。才加が颯爽と登場するのは)
チラリと秋元へ目を移す。
当の本人はいたって真面目に作戦板を見つめている。
交代する前の興奮が嘘のようだ。

「宮澤さん」

タイムアウト終了の直前、タオルをパイプ椅子に置いてコートへ出ようとする宮澤を安西は呼び止めた。
さっきの自分の発言を怒られるのではないかと考えたが、そうではなかった。

「5点です。5点リードしてからです」
それは秋元投入の目安だった。
「できれば、玲奈さんと珠理奈さんで得点してほしいですね」
その言葉に返事をする前に、審判に促され走って宮澤はコートへ戻っていった。


(監督のそういうとこ……嫌いじゃない)
1点リードするのにどれだけ苦労したかなんてことは明らかなのに、さら4点奪え。
しかも、1年生2人を使って、という条件付き。
もはやそれは無茶振りに近い。
(でもやるっきゃないな、そんなに信用されてんなら。要はディフェンス頑張れってことだろ!)
小森に勝る部分、スピードを生かしてパスコースをカットする。
腕半分の隙間を作って回り込み、すぐに背中で小森を抑え込む。
ボールが回ればまた距離を取って回り込み、抑える。
宮澤の運動量を前に、中々小森にパスが入らない。

(そんなんで抑えられてたまるか……ふんっ)

しかし相手は王者渡廊のセンター。
強引に宮澤の前に足を入れ、ディフェンスの体を押しのける。
面を取った小森にようやくパスが入る。
今までと変わりは無い。
ドリブルで押し込んでくる。

(もう押されねえぞ)

ノーチャージエリア手前で宮澤は小森を止める。
小森が強引に行けば、オフェンスファウル、そして3秒オーバータイムの危険がある。
そんなことは百も承知とばかり、小森は力を抜いて、体を回転させる。

(またスピンムーブか! こういう一芸があるところが並みセンターと違うな……止めらんねえ)
シュートに向かう小森は一瞬ためらった。
視界に松井珠理奈が入ってきていたからだ。
ついさっき、シュートを上から抑え込まれたのはよく覚えている。
全く同じプレーではまたブロックを喰らう。
ここで小森の考えはシュートからパスへと移行した。
珠理奈のマークマン、菊地がフリーのはず。
向かってくる珠理奈を確認しつつ、菊地へパスを裁く。

しかし一瞬のうちに視界に手が出てくる。
横っ飛びでボールを弾いたのは珠理奈だ。
フェイクを仕掛けるのはオフェンスだけではない。
高いレベルになればなるほど、ディフェンスもフェイクを仕掛ける。
ヘルプに行く、というのはフェイクで、始めから小森のパスを狙っていた。
とはいえ、あれだけ腰が浮いた状態から横に飛ぶ。

(せーの、でやったって触れるボールじゃないだろ)

それに珠理奈は触る。
試合終盤でも衰えない運動能力。
それはもう才能に近い。

珠理奈が弾いたボールを玲奈がキャッチ。
ボールを指原に預け、玲奈は右サイドを前へ走る。
ゴール下まで走り込み、指原がフロントコートにたどり着きパスを見ると同時に上がってくる。
ドンピシャで45度、スリーポイントライン手前、玲奈にパスが入る。

「スリーなんてやらせないよ?」

目の前には渡辺。
玲奈がぎりぎりスリーポイントを打てない間合いをきっちり守ってくる。
この試合、チームの得点源である両者は、お互いがお互いを守り合っていた。
渡辺は玲奈を研究し尽くして仕事をさせない、対する玲奈も渡辺対策をみっちり高柳から聞きこんでいる。

(それでもここは勝負しなくちゃ……)
直感が働いていた。
試合の流れ、チームの雰囲気、監督の言葉。
このチームで得点を取るのは自分である、という自覚があった。
その自分が試合で点を取れなくていいわけがない。

そしてなにより、このまま相手に抑えられたまま試合を終えるなど我慢ならない。

小さくシュートフェイク。
わずかだが渡辺の腕が動く。
そこから左フェイク。
こちらもわずかだが渡辺の足が動く。
(からの右!)
ほとんど渡辺は動いていないが、ドライブを仕掛ける。
おそらく読まれていた。
渡辺が体半分についてくる。
それでも関係ない。
ゴールへ向かって突っ込む。

バタンッと渡辺が倒れる。
シュートは決まった。
しかしピィッと鋭く審判の笛が鳴る。

「ファウル!」
(どっちだ……?)

一瞬の間を置いて、審判が腰に手を当てる。

「ディフェンス! ブロッキング! バスケットカウント、ワンスロー!」

「おっしゃあ! ナイス玲奈!」
北原がハイタッチを振りかぶったのを見て、慌てて玲奈も手を出す。
上手くタイミングが合わず、振りかぶった割に音の小さいハイタッチになった。
「ちぇ……」
渡辺が唇を噛みながら手を挙げる。
「こういうプレー……覚えたてなんで」
振り向いた玲奈が小さく舌を出す。

「おいおい、あそこエキサイトしてんなあ」
フリースローのリバウンドの準備をしながら、菊地が呟く。
それが聞こえていた珠理奈が答える。
「こっちもそろそろもう1回ギア入れなおしましょうか」

菊地が答える前に玲奈のシュートが放たれた。
シュートはリング手前に当たり、外れた。
菊地は教科書通りのスクリーンアウトで珠理奈の前に立つ。
それを必死で珠理奈がかわしてくるのが分かる。
右……左……と見せかけて右。
背中とわずかに振れている腕の感覚で、反応する。
ボールが目の前に落ちてくる。
珠理奈はきっちりと抑えている。
あとはボールに飛びつくだけ。

(よし……取った)

ボールが自分の手に収まる直前だった。
横から腕が伸びてくる。
それが松井珠理奈の腕であると認識するのに時間はかからなかった。
ギリギリでボールを弾かれた。

(しまった……飛んじゃいけなかった!)

菊地がボールに飛びつく瞬間。
スクリーンアウトから逃れた珠理奈は、瞬く間に菊地の横に回り込んでいた。
最後まで押し出して、他にリバウンドを任せるべきであったのだ。

ルーズボールはコートの端に転がっていく。
ラインを割ったとしてもどちらのボールになるのか分からないが、十桜はここで流れを切りたくない。

「っとお!」

ボールがラインを踏む直前で、北原が飛び込み、ボールをコートの中へと戻す。
再び転がるボールをキャッチしたのは珠理奈だ。
振り向きざま、菊地の手が伸びてくるがもうスティールは喰らわない。
来いと言わんばかりに、目の前の菊地はグッと腰を落としている。
(ここは勝負しなくちゃな……!)

続く

試合がなかなか進まないのはご愛嬌です。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

更新お疲れ様です!
「もう、押されねぇぞ」は花道ですよね
そのネタの入れ方大好きです

この小説を読んでからバスケが楽しいです!

試合スピードはこれくらいの方が読み応えあるような気がします

生意気言ってすみません(>_<)

また、更新期待しながら待ってます!

Re: タイトルなし

> あおやぎさん

コメントありがとうございます。
確かに花道対河田弟のイメージはありました。
読んでからバスケが楽しいなんて、そんな大した小説じゃないです。
それでもそう言ってもらえると非常に嬉しい限りです。
ありがとうございます。
テンポはこのまま、試合に重きを置いているつもりなので、じっくり書きたいと思っています。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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