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「スラムダンクはできないけれど」第15話

第15話「十桜の弱点」

「ツインタワー……やっかいねえ」

スコアシートを見ながら、口元に手を当て息をつく女性は、渡廊高校監督の尾木だ。
若くして監督に就任し、渡廊高校の伝統に大胆にもデータバスケを取り入れ、数年のうちに東京最強と言われるまでに育て上げた。

「平嶋、渡辺。もう行けるね? 2ピリから。多田、岩佐と交代」

会場はこれまでの渡廊高校の試合とは違う雰囲気に包まれていた。
いつもなら第1ピリオドで決まってしまう渡廊高校の試合。
全国へ行くのに、どれだけの戦力を持っているのかを見るだけの試合。
それが、この試合は違う。
リードたったの1点で第1ピリオドを終えた。
まさにそれは異様な光景でもあった。
観客は少しばかりの期待を持ち始めていた。
ただの都立高校が東京最強の王者を倒すのではないかと。

「なんか会場も変な雰囲気になってるわ。黙らせて来なさい」
返事と共に選手が2人立ち上がる。
背番号4番と21番がジャージの下からあらわになる。

「上出来です。ただ勝負はこれからですよ」
ほぼ互角の1点差という、確かな手ごたえを掴んで第1ピリオドを終えた十桜ベンチの雰囲気は良かった。
出だし、相手のオールコートマンツーに慌てさせられたものの、秋元、宮澤がフォロー。
エース珠理奈、玲奈の調子も上がってきたところだ。
まさに最高の状態で、第2ピリオドに入っていける。

「第2ピリオドもこの調子でいくぞ!」
「おおし!」

コートに戻る5人の目に映るのは、確かに代わった2人の選手。

「じゃ、平嶋さん、作戦通りお願いしますね」
「おっけい。きっちり抑えるから」

キャプテン平嶋、そして、渡辺。

「やっと出てきたか……麻友」

十桜ボールで試合は再開する。
ドリブルをする指原は、早くも目の前にいる平嶋のプレッシャーを受けていた。
プレッシャーと言っても、足を動かして張り付いてきているわけではない。
どっしりと構えられ、じりじりと指原に寄っていく。
それだけでファンブルしてしまいそうな、プレッシャーを感じるのだ。

玲奈にパスを出そうとする。
しかし、その瞬間、渡辺が大きく張り出し、パスコースをふさぐ。
出せない、と思った時にはドリブルが止まり、ボールを手に持ってしまう。

「止まった!」

平嶋が一気にプレッシャーかける。
今度は、一気に距離を縮めた、体ごと潰されそうな圧力だ。

「よこせ、指原!」

ハイポストに秋元が上がってくる。
45度がダメなら、ハイポスト。
基本と言えば基本のポジショニングだ。
平嶋のチェックを振り切りパスを出す。

そして出した瞬間に分かる。
狙われていたと。
視界の横から現れた渡辺がパスをカットし、2対1。
そのままレイアップを決められる。

第2ピリオドから渡廊高校のディフェンスはハーフコートマンツーマンに切り替わっていた。
しかし、第1ピリオド以上に指原の体力は奪われる。
(この平嶋って人やばい……全然パス出せない)
平嶋のプレッシャーによってパスコースが中々探せない。
パスの精度も下げられる。
そしてその中途半端なパスを渡辺が見逃さずにカットする。

(私のせいで全然パスが回らない……! なんとかしないと)

ドリブルで大きくサイドチェンジをして、何とか視界を開こうとする。
珠理奈には菊地がべったりとマークに付いている。
(出せないか……)
そう一瞬逆側を見た時だった。

「指原さん! 寄った!」

珠理奈の声で気づく。
猛スピードで後ろから菊地が間合いを詰めて来ていた。
平嶋、菊地のダブルチームを受ける。
完全にパスコースが無くなる前に、何とか菊地の足元を通すバウンドパスを珠理奈に出す。
しかし、出てくるのだ。
渡辺麻友が不敵な笑みを浮かべながら。

「またパスカット!」

前を走る菊地にパスが通り、フリーのレイアップ。
得点が重ねられていく。

(ダメだ……私が持ってちゃ)

今度は早々にパスを裁き、宮澤と秋元のコンビに託す。
宮澤から面を張る秋元にパスが入る。
秋元にディフェンスが寄ったところで、宮澤が切れ込んでくる。
ゴール下に抜け出す宮澤に秋元がパスを出す。

「ナイスパス! 才加!」

パスが通ればゴール下でフリー。
ツインタワー得意のパターンだった。
しかし、宮澤がボールに触る前に、渡辺がボールをさらう。

「なにっ!?」

ボールを奪われた時には、もう前に仲川が走っていた。
長いパスが飛び、速攻になる。
シュートが決まり、9点差。

(だったらあたしが決めてやる!)

点を取り返そうとすぐに珠理奈がドライブを仕掛ける。
菊地を抜き、ヘルプに来た仲川も空中でかわす。
あとはシュートをリリースするだけ、というところでボールが手からこぼれる。

(……麻友っ)

渡辺にスティールされたのだ。

「またスティール! 渡辺何本目だ!? データに基づくにしたって異常だ……心が読めるんですかね?」
「これだけ露骨にやられれば本人も気づくだろう。渡辺、いや、平嶋と渡辺が狙う十桜の弱点は1つだ」
「十桜の……弱点……?」

観客が沸く。
今度は、平嶋が指原のドリブルをスティールした。
会場はまたも試合開始直後と同じ、渡廊高校の押せ押せムード。

「弱点、見つけちゃいました」
試合前、十桜のデータを横目で見ながら、渡辺は平嶋に話していた。
準々決勝までは、赤須高校と同じ戦法を考えていた渡廊高校は、慌てて対策を考えていたところだった。
「ツインタワーに……謎のクイックシューター……そして珠理奈ちゃん。十桜は強いです」
「それだけで全国レベルなのは間違いないね」
「でも、1点だけありますよね。普通なところが」
「……ガードか」
「平嶋さんなら圧倒的に優位に立てるはずです」

狙うは指原。
渡廊高校司令塔平嶋、渡辺が出した答えは単純なものだった。

「簡単に言えば、平嶋が指原にプレッシャーをかけてパスコースを限定する。あとは渡辺がカットするだけだ」
「それにしたって、秋元や宮澤、松井珠理奈まで止められましたよ」
「それも指原を狙った結果なんだよ。ガードがボールを溜められないから、パスはよりゴールから遠くなる。攻撃は単調になる。あとは渡廊のデータバスケの餌食だ」
「指原だって、中学全国出場してるんですよね? そんなにやられますか」
「相手が悪い。バスケにおいて司令塔であるガードの重要性は分かるだろ? データバスケの渡廊高校となったらなおさらだ。平嶋はその司令塔を1年生からやってる全国屈指の好ガードだ」
「ガードの対決がチーム全体に影響を及ぼしているということですね」
「ガードがヘタレてたら、チームも上手く攻められるわけないんだ」

自分がチームの穴。
分かっていたことかもしれない。
全国を目指すチームのガードにしては、どう考えても自分は下手くそだった。
申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
そんなことを考えていたら、平嶋のドライブに全く反応できない。
あっという間に自分の右脇を平嶋がすり抜けていく。
(指原は……もうダメっす)

ゴールに迫る平嶋のボールを、秋元が平嶋の腕ごと刈り取った。
当然ファウルになるが、ここで綺麗にレイアップを許すよりはマシだった。
「大丈夫か? 才加」
「あたしは大丈夫、まだファウルも2個。ただ困ったのは指原だ……完全に目が死んでるぞ」

そしてタイムアウトのブザーが鳴る。

「もう代えてください」

指原のこの言葉を2年生の佐藤、北原、大家は、何度も聞いている。
プレーが上手くいかなかったときは、大抵このセリフだ。
そして決まって安西は指原を交代しない。
ある意味ごり押しとも言えるような起用に、全くの疑問が無いと言えば嘘になる。

「指原なんてバスケ下手だし、ビビりだし、可愛くないし……」
「そんなことないですよ」

今回も安西は指原を交代させる気が更々無いようだ。

「指原さんは確かな技術と才能が有ります」
「そんなわけないです。実際平嶋にはボコボコにやられてるし」

今大会ここまで指原は、緊張する、無理だ、と言いながらも何だかんだ相手に負けることが無かった。
それは指原の確かな実力であり、それが自信に繋がっていた。
そんな中でのこの試合。
自分が穴だと狙われ、平嶋によって与えられた完全敗北。
ここまで指原のモチベーションにもなっていた自信を砕くには十分だった。

「このままじゃ指原のせいで……」
「私を信じてください」

安西は指原の言葉を遮った。

「自分のことは信じられなくてもいいです。まだ。でもあなたを起用している私のことは信じてください」
「そんなこと言ったって……ヘタレでビビりなガードがいますか?」
「私は、あなたのヘタレでビビりなところも分かってます。いいんです、ビビりで」

スポーツをやる上で、ビビりでもいいという言葉が今まであっただろうか。
少なくとも指原は聞いたことが無かった。

「ただ、今ヘタレは少し退場させてください」
「ええっ?」

ヘタレを退場させる、という安西の独特な言い回しに、指原は戸惑う。
お構いなしに安西は続ける。

「ビビりが残ったあなたに言うことは2つです」

そして、2つ、すでに安西の言葉についていけていない指原に、さらに言葉を重ねた。
ポカンと指原が口を開けている間に、タイムアウト終了のブザーが鳴る。

「以上です。行ってきてください」

何も分からぬまま指原はコートに戻ることになった。
平嶋、そして渡辺の前に。

「あれ、明音ちゃんと交代じゃないんだ。これは予想外」
(いや、交代したいのは山々なんですけど)

まるで前半と変わらぬ雰囲気に、不安の視線を安西に送るベンチメンバー。
しかし、安西の目は、まるでぶれない。
真っ直ぐと指原を見つめていた。

続く

狙われたさしこ。
安西の与えた2つの指示とはいかなるものなのか。
期待せずにお待ちください。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

No title

はじめまして!
いつも楽しく読ませて頂いております!
バスケ小説、めちゃくちゃ面白いです☆
これからも更新頑張ってください。

Re: No title

>☆さん

コメントありがとうございます。
こちらこそ初めまして。
楽しんでいただけてうれしいです。
更新頑張ります。

更新お疲れ様です!

どこをついてくるのかな~と思っていましたが、やっぱり指原でしたか。

まあ、玲奈に少しボール運び手伝ってやれよとは思いましたが、本職ではないからちょっときついかな?

これからどういった展開になるのか楽しみにしてます!

これからも更新頑張って下さい!

Re: タイトルなし

> ゆうさん

コメントありがとうございます。
そうですね、確かにSGの玲奈と絡みが無いのはおかしいですね。
一応フロントコートまでは運べているんですよ。
そこからが上手くいかないと言った感じで。
楽しみにしていてください。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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