スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「スラムダンクはできないけれど」第14話

第14話「緊張」

試合直前、会場は大きな盛り上がりを見せる。
渡廊高校サイドの客席は、メガホンや団扇を持った応援で埋め尽くされている。
もちろん十桜高校サイドの客席も埋まってはいるが、びっしりと人で埋まる逆サイドと比べれば、空席が目立つ。
丁度いい場所に席が空いているのを見て、腰を下ろす。
周りからは色々な声が聞こえる。
現役であろう中学生、高校生、大学生、社会人に、知ったかぶったオタクだったり。

「どーせ、勝つのは渡廊だろ? 圧倒的だよあの強さは」
「まあ、ここ数年負けなしだからなー。相手の都立十桜ってどこ?」
「春はベスト8まで上がってきてたよ。まさかベスト4まで残るとは思ってなかったけど」
「都立にしては頑張ってんな。もしかしたら2位通過あるかも」

―分かってないな。
―ですね。
後ろの席の会話を聞いて斉藤と田中は呟いた。
おそらく、先週の第1戦の結果を知らないのだろう。

「確かに渡廊に勝つのは相当厳しい。でも倒すとしたら、今はここくらいしか無いんですから」
「事実上決勝戦だ。ここで勝った方が3勝するだろうな」

斉藤が見つめるコートは、ちょうど選手がベンチに下がり、審判が2人いるだけだ。

十桜メンバーは監督から最後の話を聞く。

「申し訳ないことに、私、今日の試合ほとんど策がありません」

下手すれば試合を決定づけかねない発言を、安西はさらりと言ってのける。
相手のデータバスケを超えるデータ収集はできない、そういう意味だった。
珠理奈達1年生は動揺するが、2、3年生は慣れっこだ。

「でも、いらないんです。策なんて。選手の能力はこちらが上ですから。自信を持って……」
「自信ならあるよ、監督」

水を飲みながら宮澤が口を挟む。
十桜バスケ部全員が頷く。
安西は、小さく笑う。
「じゃ、大丈夫です」
最後に景気づけにパンッと手を叩く。

「データなんてぶち破ってきてください」
「おおし! 十桜……ファアアアアイ!」
「オオオオウ!」

いつもより3割増しの掛け声で、十桜選手がコートに飛び出していく。
整列する中で、珠理奈はちらりと渡廊高校ベンチを見た。
渡辺はいつも通りベンチスタートだ。

「試合中、赤!」
審判が十桜ゴールを示す。
「白!」
そして渡廊ゴールを示す。
「礼!」
「お願いします!」
お互い小さく頭を下げ、秋元、小森がセンターサークルに入りにらみ合う。


田中は、手元の資料に目を移す。

都立十桜スターティングメンバー

・指原莉乃(6)……2年 PG 167センチ 
・松井玲奈(11)……1年 SG 172センチ
・松井珠理奈(10)……1年 SF 172センチ 
・宮澤佐江(5)……3年 PF 174センチ 
・秋元才加(4)……3年 C 176センチ 

渡廊高校スターティングメンバー
  
・多田愛佳(14)……2年 PG 160センチ
・岩佐美咲(12)……2年 SF 166センチ
・菊地あやか(6)……3年 SF 170センチ
・仲川遥香(5)……3年 SF 167センチ
・小森美果(10)……2年 C 183センチ

「こうして並ぶと、渡廊は小さいですね。小森がいるとはいえ、あとは170センチの菊地だけだ。ベンチにはデカいのが沢山いるのに」
「つまりそういうことだろ。その小さな選手は、170越えのデカい選手を抑えてスタメンで出られる何かを持っているってことだ」


審判の手からボールが離れる。ティップオフ。
ジャンプボールを制したのは、小森だった。
(流石に高いな)

ボールは渡廊のガード多田に渡る。
すぐに指原がマークに付くが、頭の真横をパスが通る。
(ひいっ! そんなとこ通してくんのか)
そのパスは前を走る仲川に渡る。
圧倒的速さで一瞬でディフェンスを出し抜いていた。

「先制点、頂き!」

仲川がレイアップを決める。
あっという間の先制に応援が大きく盛り上がる。

「大丈夫まだ2点……ってマジかよ」

パス入れする指原の目の前には多田がいる。
さらにパスを貰う玲奈には岩佐がべったりとマークする。

「いきなりオールコートマンツーか!」

玲奈が岩佐のマークを振り切れず、指原はパスを出せない。
(5秒になる……!)
慌ててバックコートまで秋元が貰いに来る。
(助かった)
指原がパスを出す。
しかしそのパスを読んでいたか、菊地がカットする。
そのままミドルシュートを決める。

渡廊のオールコートマンツーマンは続く。
なんとかディフェンスを振り切り、玲奈がボールを貰う。
目の前の岩佐を抜きに行く。
右ドライブから切り返して、内側を攻める。
しかし抜けない。
(読まれてる……!)
「データ通りです」
玲奈のドリブルが止まる。

「戻して!」

指原へのパスを逃さず多田がカットを狙う
(と見せかけて……裏!)
素早く体を反転させ、多田を置き去りにする。
指原の走る方向へ玲奈がボールを投げる。
しかし、そのパスにも多田は反応する。
(げえっ! 何で反応できる!?)
「これもデータ通り」

多田がフリーでレイアップを決め、追加点。
このプレーにさらに観客は盛り上がる。
『いいぞおー多田あ! ババッバッババー!』
何と言っているのかも分からぬ大きな声が、コートを包む。
わずか1分足らずで6点のリードを十桜は奪われた。

「渡廊高校、さすがのディフェンス……」
「多田も岩佐も相当な選手だ。平嶋と渡辺がいないチームならフル出場なんて当たり前のな」

押せ押せムードの会場の応援にも後押しされ、多田、岩佐はどんどんプレッシャーをかける。
このまま8点、10点、とリードしてしまえば試合が決まる。
しかしそのことは十桜選手もよく分かっている。

「玲奈、走れ!」

その声と同時に宮澤が玲奈のディフェンスにスクリーンをかける。
完全に玲奈が抜け出し、フリーでボールを受け取る。

「こっちだ!」

ようやくフロントコートで待つ珠理奈までパスが渡る。
パスを受け取り、ドライブを仕掛けようと前を向いた瞬間だった。
パンッという音と共に一瞬の隙を突かれてボールが珠理奈の手から消える。
振り向きざまを菊地に狙われていた。
(しまった……!)
ボールを奪った菊地がゴールへ向かう。
(これ以上ターンオーバーはダメだ)
一瞬で後ろを向き、その手をボールに伸ばす。
何とか菊地のドリブルを弾き出し、プレーを止める。

「十桜出だし最悪ですね……あの松井珠理奈までミスプレーとは」
「指原は2年生、松井2人はまだ1年生だ。意識はしてなくとも緊張しているだろうな。相手の強さはよく分かってると思うし、緊張するなってのが無茶な話だ」
「このまま流れは渡廊ですかね」
「いや……」
斉藤は静かに否定した。
確かに十桜の1、2年生は有望で、そのレベルは公立高校離れしている。
しかし元々斉藤が都立十桜高校を注目する理由は違う。
「ツインタワーが黙っちゃいないだろ」

この試合最初の渡廊高校のセットオフェンス。
ボールはガード多田からセンター小森に渡る。
ディフェンスにつくのは当然秋元だ。

「渡廊と十桜でミスマッチはここだけだ。逆にここを守りきれば流れはまだ分からない」

ハイポストで受け取った小森は2回のドリブルで秋元を押し込む。
そして、一瞬で足を内側に入れる。
「スピンムーブ! 速い!」
しかし、それに秋元はついていく。
小森はシュートを打てない。

「ちょうだい!」

止まった小森に合わせるように仲川が切れ込んでくる。
身長は高くなくとも、かなりのスピードがある。
ボールを受け取り、勢いのまま一気にシュートに行く。

「このまま流れもらいっ」
「させるか!」

バコッという音を立ててボールは弾かれる。
宮澤が追いつき、ブロックした。

「ああー! せっかくの追加点がー!」
「そう簡単に流れはやらねえよ」

指原がルーズボールを拾い、今度は十桜のセットオフェンスになる。

「ちょうだい、さしこ!」

指原から宮澤にボールが入る。
ディフェンス仲川とはミスマッチだが、敢えて中で面を張る秋元にパスを出す。
パスを受けた秋元は、足を引いて、前を向く。
シュートフェイクから左にワンドリブル、そこからステップインシュートを決める。

「ナイッシュ、才加」
「小森はデカいが勝てる。どんどんパスをくれ。この試合を引っ張るのはあたし達だぞ」
「分かってるって」

秋元が差し出された宮澤の手の平を叩く。

「2人の1年生エースが入ったとはいえ、やはり都立十桜の中心はあの3年生2人だ。全国大会への思いも強いだろう」

再び渡廊のセットオフェンス。
またも小森にパスを入れる。
しかし、勝負はせずすぐに、外へパス。
その間に逆サイドはスクリーンを掛け合う。
めまぐるしく選手が動き、パスが回る。

「多田のスリー!」

綺麗に決まる。
すぐに多田と岩佐がディフェンスに付く。

「されど相手は渡廊高校。3年生2人で勝てる相手じゃない」
「このオールコートマンツーが突破できなきゃ勝負にならないですよ」

岩佐のプレッシャーにより、玲奈はボールを受けるのも一苦労だ。
これだけ渡廊ガード陣と十桜ガード陣の運動量に差があるのは、根本的な理由がある。

「私の試合は麻友が出てくるまでなんです」
「この1ピリでそっちの全力を出させないと、平嶋さんたちがデータを採る意味がないんだよ」

ほとんどの試合、多田と岩佐は1ピリで交代なのだ。
控えがいるとはいえ、ここから4ピリまでのフル出場を頭に入れておかなければならない指原、玲奈とは体力の使い方が違う。

ボールを受け取った玲奈が岩佐と対峙する。
先ほど完全に読み切られて止められたシーンは、頭に焼き付いている。
それでも玲奈は仕掛ける。
(データか何だかは知らないけど……私が下手なせいで、十桜の試合が終わっちゃうのだけは……無理)
ボールを1度強くつき、体を小さく浮かせる。
(スキップドリブル……その技は知ってる! 左から右!)
岩佐の読み通りに、玲奈は左手から右手へとボールをチェンジする。
読んでいた方向に岩佐が飛び出し、玲奈のドライブを受ける。
しかし、玲奈はさらに外側へのドライブを敢行する。
(知ってるけど……速っ!)
岩佐の左脇をすり抜ける。
一気にフロントコートまで突き進む。
ちょうどフリースローライン上で仲川が待ち構える。

「来い! 松井玲奈!」

玲奈は止まる。
前が空いててもスリーポイントを狙う。

「出た……松井玲奈の不意打ちスリー!」

しかしそのボールにチェックの腕が伸びる。
仲川が間合いを詰めて来ていた。

「これも読んでいたか、渡廊高校!」

次の瞬間玲奈の手からボールが消える。
シュートフェイクからのパスだった。
珠理奈がローポストでボールを貰う。
さらに、飛んでくる小森のチェックを見て、フリーの秋元へ。
流れるようなパスでゴール下が決まる。

「ナイスパス! 玲奈、珠理奈!」
「よしよし、試合はこっからだぞ。ディフェンス1本集中!」

秋元、宮澤の声で、十桜は本来の積極的オフェンス、ディフェンスを見せる。
渡廊のデータを駆使した隙のないバスケに食らいつく。

「十桜も緊張がほぐれてきましたね」
「これでやっと渡廊と戦えるとこまで来たか」

渡廊のオールコートディフェンスは、玲奈のドライブで突破する。
突破してしまえば、アウトナンバーになる。
あとは外と中、どこからでも十桜は攻められる。
最後は玲奈のスリーポイントが決まり、第1ピリオドが終了する。
スコアボードには17対18とわずか1点差で都立高校が追いすがるスコアが刻まれた。

続く

試合中審判はユニフォームの色関係なく「青」と「白」でチームを示すのが一般的です。
今回は分かりにくいので、赤いユニフォームの十桜が「赤」ということにしました。
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

Secre

待ってました☆笑
お疲れ様です\(^-^)/
おもしろくて続きが気になります(^^)/
更新頑張ってください!

更新お疲れ様です! 

ツインタワーは流石ですね。安定感があります。

ここから、どういった試合になるのか楽しみです。

それではこれからも、更新頑張って下さい!

Re: タイトルなし

> ちゅうさん

コメントありがとうございます。
ホントに更新が遅くてすいません。
必死で書いてますので、どうかお待ちください。
頑張ります。

Re: タイトルなし

> ゆうさん

コメントありがとうございます。
やはり3年生が頑張らないとですよね。
チームKを引っ張る2人ですから。
どういった試合になるのか、楽しみにしていてください。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。