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「スラムダンクはできないけれど」第13話

第13話「珠理奈の確信」

「やっぱ広い体育館はいいな!」
「宮澤さん、それ先週も言ってませんでした?」
「今日の方がもっと広いだろうが!」

先週、とは決勝リーグ第1戦、湘陵高校との試合のことだ。
十桜高校バスケ部は、20点差をつける危な気ない勝利を飾っていた。
そして、今日は第2戦。

「勝てば……全国か」
2勝すれば全国大会出場はほとんど決まる。
自分で「3勝が目標だ」と言いはしたが、意識せざるを得ない。
「あんまり入れ込みすぎんなよ、才加」
宮澤はそんな秋元の小さな声を聞いていた。
さっきまで指原とじゃれ合っていた宮澤がすぐ隣にいたことに多少驚く。
「分かってる。でもさ、勝てば全国、相手は東京最強。力が入らない方がおかしい」
「それは、あたしも同じだけど」

プロの試合も行われるこの体育館には控室がある。
選手はそこで着替え、またミーティング等を行うことができる。
学校の廊下や教室に荷物を置いていた今までの試合とは違う。
アリーナも学校の体育館とはレベルが違う。
天井は高く、観客席の数も桁違いだ。
テレビで見るバスケの試合が行われるような場所で、試合をすることになる。

「何、珠理奈ちゃん、意識してんの? 麻友を」
珠理奈は試合開始までまだまだ時間があるというのに、すでに汗をかいていた。
試合前に疲れないでね、と高柳が珠理奈のスポーツドリンクを渡す。
「流石にするって。一応中学時代はライバルだと思ってたし」
「へーそうなんだ。知らなかった」
「ガードだろ? それくらい感じてくれよ」
麻友より点を多くとる、と勝手に競い合っていた中学時代を思い出す。
実際、向こうもその意識はしていたのではないかと思う。
珠理奈が点を取ると、むきになって点を取りに行っていた場面も沢山あった。
良く知る相手だけに、気合が入る。

「もうポカリ無くなった。買ってくる」
「飲みすぎちゃだめだよ」
「分かってるって」

空のペットボトルを揺らしながら、珠理奈は控室から出て行った。
1人になった高柳が周りを改めて見回してみる。
まさに各々が各々の時間を過ごしていた。
秋元はずっとボールを右手から左手へと行ったり来たりさせているし、さっきまで騒いでいた宮澤は音楽を聞いている。
玲奈に至っては呑気にメロンパンの袋を開け始めた。
そんな中で指原が、珠理奈がいないことを確認して、高柳に聞いた。

「珠理奈と、その渡廊の渡辺麻友ってのは仲いいの?」
高柳は、うーん、と言葉を詰まらせながらも答える。
「仲は普通にいいですよ。ただ、バスケのことになると2人とも熱くなります。2人は、言ってしまえば、考えるタイプと感じるタイプなんです。コートの中で上手くいってるときは凄い噛み合うんですけど、ひとたび意見が割れるといつまでたっても決着がつきません。目指す場所は一緒でも途中が全然違うからなんですかね」
「へえー。なるほど」
「何でそんなこと聞くんですか?」
「単純に疑問だった」

ここまで話して、また場は沈黙する。
玲奈はメロンパンを半分ほど食べ終えていた。
そこでまたも指原が口を開いた。

「何で、珠理奈は十桜に来たのかな」

何を今さら、と睨む北原に弁明する。
「いやこれも単純な疑問だよ? あれだけ上手かったら他の私立からいくらでも声が掛かるだろうしさ」
たしかに、と北原も頷きはする。
「そりゃ、本人に聞かなきゃわかんないけどさ、普通に考えたら、即戦力としてすぐに試合に出られる高校選んだんじゃない? 強い学校に入るよりも強い学校を倒したいってよく言うじゃん」
漫画とかアニメの話だけど、と北原は付け加えた。


「全然ないなー」
意外と見つからない自販機に、珠理奈はイライラしていたところだった。
ミーティング等が始まってしまったら困る。
さっさと控室に戻っておきたかった。

よそ見をしながら歩いていると、不意に何かとぶつかった。
そこにあるはずのない壁があり、尻餅をつく。
同時に、目の前に伸びる足を見て、人とぶつかってしまったことに気付く。
すいません、と立ち上がりながら慌てて謝った。
大丈夫ですか、と心配する相手の顔は、珠理奈より上にあった。
珠理奈が驚愕するまで時間はかからなかった。
180センチはあるその身長の持ち主は、声、そして姿からして明らかに女子であった。
相手は珠理奈の顔を見て、何かに気付いた。

「あ、松井珠理奈だ」

自分の名前を知っているこの女子のジャージには、間違いなく『渡廊』の文字が入っていた。
(でけえ……渡廊高校の奴か)

「なになにー? 小森の知り合い?」
「いやいや、麻友の知り合いだよ」

(やっぱり渡廊のセンター小森か。後ろから出てきた奴は確か仲川ってのだ)
小森の大きさに口を開けて驚いているうちに、後ろからゾロゾロと渡廊高校の選手がやってくるのが分かった。
ちょうど固まって移動中だったようだ。
ガード平嶋に、自分のマッチアップになるであろう菊地の姿も見えた。
そしてその間を縫って現れたのは、1人しかいない。

「おお、珠理奈ちゃん! 久しぶり」
「麻友……元気そうじゃん」

後輩の友人の登場に空気を読んでか、渡辺の後ろにいる先輩は自然と他のことで時間をつぶし始めた。
しかし2人の会話に興味が無いわけではないようで、聞き耳を立てていることは分かった。

「今日は、よろしく」
「うん、いい試合しよう」

珠理奈は大して話すことが無かった。
かと言って渡辺の先輩が移動を促したりすることもせず、何もできずにお互い黙ってしまう。
妙に気まずい元チームメイトとの沈黙。

「……驚いたよ」
口を開いたのは渡辺だった。
え、と珠里奈は中途半端に反応する。

「まさか、珠理奈ちゃんが都立高校なんかを選んだこと。そしてここまで勝ち上がってきたこと」
「何だよ、それ。挑発?」
にしては安いな、と珠理奈は笑って受け流した。

「何で、十桜を選んだの? 必ずレギュラーが取れるから?」
その言葉には珠理奈も穏やかではない。
「違うし、必ずレギュラーが取れるなんて甘い先輩たちじゃない」
「じゃ、何でよ? 全国制覇を本気で目指すってのは諦めたの?」

確かに渡辺とは話したことがあった。
高校でも本気で全国制覇を目指すと。
お互い全国の舞台で戦おうと。
それを考えれば、都ベスト8だった都立高校に珠理奈が入学したことは、渡辺にとって相当驚きだったのかもしれない。
渡辺が渡廊高校に入学したことを知った珠理奈と高柳以上に。
そんな渡辺に対して、珠理奈は笑いながら答えた。
「分かってないなあ、麻友。しばらく会ってないうちにあたしの性格まで忘れちゃったのか?」


「珠理奈ちゃんは、そんなに考え甘くないですよ」

高柳が、少し言葉強めに言った。
怒っているというほどではないが、いつもの様子とは違う高柳に、多少なりとも指原も北原も、控室にいる全員が驚いた。

「彼女は自分で決めた目標達成のためには、妥協はしないんです。それが全国優勝と言う大きな夢でもです。確かに、強豪校からの声も沢山掛かってます。実績だけなら十桜よりもいい学校もあったと思います」
「じゃ、何で? 妥協しないならそれこそ、そういう超強豪校に行くべきだ」
「実績だけじゃ決めないんです。実際に練習を何度も見学するんです。声の掛かった学校、全て」

近くても、地方でも、無名でも有名でも関係ない。
珠理奈は自分が考える、全国制覇の可能性のある学校全てを見学していた。
「それでこの学校を決めたんです。妥協はありません。彼女は確信してるんです」


「確信してる?」
珠理奈の言葉に渡辺は眉間にしわを寄せる。

「ああ。都立十桜高校は全国優勝する」
「どういうこと? 予知能力?」
「そのまんまだよ。したいでも、させるでもなく、する。確信してる」

全くぶれることのない、珠理奈のまっすぐな言葉に、渡辺は息をつく。
そして、ははは、と笑う。

「なるほど……珠理奈ちゃんらしいや。変わってない。そういう『なんとなく』なところ」
「人の『確信』に『なんとなく』は無いだろう」

むっとする珠理奈を見て笑みを浮かべながら、渡辺は背を向けた。
それを見て、渡廊高校の選手も動き出す。

「ま、珠理奈ちゃんが渡廊に来たからと言って試合には出られないと思いますけど、都立は無いかな。もうちょっと考えればよかったって後悔するよ」

1度振り向き、それだけ言うと渡辺はもう振り向かなかった。
ずっと横で話を聞いていた、菊地が珠理奈の肩をポンポンと叩いた。

「ああは言っても渡辺はどこよりも十桜を警戒してるんだよ。楽しみだ、とも言ってた」
「分かってますよ……てかそれ言っていいんですか?」
「あ、やばいかも……じゃ、今のは忘れて」

間の抜けた姿を見せながら、菊地が集団の後ろに合流した。
その後ろ姿を見ながら、珠理奈は圧倒される。
人数でも、体格でもない、何かに。
(東京最強王者。風格ってやつを感じる)

気が付けば、そこからすぐ見える位置に自販機が合った。
スポーツドリンクを買って、控室に戻る。
「すいません、ちょっと飲み物買ってました」
もしかしたら自分待ちではないだろうかと考え、謝りながらドアを開けると、そこには涙を見せる指原と宮澤がいた。
「珠理奈、よく分かったよ。変に疑って、ごめんな」
「え、なんのことですか?」
全く話が読めずにポカンとする珠理奈の肩を抱きながら、宮澤がうんうんと頷く。
「そんな思いで、うちらとバスケしてくれてるなんて、嬉しいよ」
「だから何のこと!?」

騒がしくなる部屋。
その様子を微笑ましく見守っていた秋元が立ち上がり、声を掛ける。
選手は一斉に立ち上がり、控室を出る。
ライバルとの対決だったり、意外にも後輩に信じてもらえてたことを知ったり、実はちゃっかり友達に付いてきただけだったり、メロンパンがおいしかったり。
様々な思いが交錯する中、都立十桜高校、勝負の決勝リーグ第2戦が始まる。

続く

小森さん驚きの20センチアップ。
第2話でバスケ部員の身長だとか監督だとか諸々に驚いていたのは高柳だったということにしましょう。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

こんばんわ。
四谷さんと杉上さんのところから飛んでまいりました。ぱーぷると申します。
小説、拝見させていただきました。
すごく面白いです!
最近自分は「あひるの空」というバスケ漫画にハマっていまして…(笑)
バスケはあまり詳しくないのですが、SKEは珠理奈推しということもあり、楽しく読ませていただいています。

自分もしがない小説を書いていますが、スポーツに疎いので、ウロマムさんのような素敵な小説は書けないので尊敬します。

これからも楽しみにしています。

Re: タイトルなし

>ぱーぷるさん

コメントありがとうございます。
あひるの空、いい漫画ですよね。
面白いです。
バスケで分からない単語がありましたら、質問頂けると助かります。

ぱーぷるさんの小説も読みに行きます。
これからも頑張ります。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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