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「スラムダンクはできないけれど」第9話

第9話「諦めるな」

第2ピリオドも相変わらず佐藤はタイトなディフェンスをする。
コート内を駆け回り、自分のマークマンからヘルプディフェンス、そしてすぐにマークマンに戻る。
圧倒的な運動量を見せつける。
ディフェンスでチームを鼓舞する、とはこういうことだ。
しかし、佐藤の活躍は、ディフェンスだけでは留まらない。

「なんだ、あたしにはフェイスガード無しか」

玲奈が交代し、赤須のボックスワンのディフェンスは普通のマンツーマンに変わっていた。
当然佐藤にも、玲奈ほどのチェックは来ない。

「亜美菜さん!」

珠理奈が佐藤のマーク木下にスクリーンをかける。
それをうまく使い、佐藤はフリーになる。
すかさず指原がパスをさばく。

「舐められたもんだ!」

佐藤のスリーポイントは、見事にリングを打ち抜いた。
十桜にとってはこの試合初のスリーポイントだ。
チーム全体が盛り上がる、1本だ。

「やり返してやる!」

すぐに木下がドライブを仕掛ける。
佐藤は一気にゴール下まで押し込まれた。
その身長差故、シュートを構えてしまえば、あとはフリーで打たれてしまう。
(もらった!)
木下がシュートを狙う。
しかし、シュートを構える直前の一瞬の隙を突き、ボールを手から弾き落とす。
(何!?)
(シュートを打つ直前にボールが無防備になる癖は把握済み)

ボールを一度指原に預け、佐藤は右サイドを走る。
左サイドを走る珠理奈にパスが渡り、そのままドリブルでディフェンスを引き付ける。
フリーになった佐藤にパスが通り、スリーポイントが決まる。

「9番すげえぞ。早くも2本目だ」

ベンチの選手の活躍に、会場も沸く。

「凄いですね、佐藤亜美菜……流石は中学全国行ってるだけはある」
「いや、確か中学時代の佐藤は全くスリーポイントを打たない選手だ。ひたすらドライブで点を取るタイプだった」
「え、そうなんですか」
「165センチという身長は中学なら中の選手でも十分通用する。しかし、高校ではそうもいかないことを痛感したんだろう」
「じゃあ、あのスリーポイントは高校で身に付けた武器……」
「相当練習したんだろうな」

第2ピリオド終了を告げるブザーが鳴る。
このピリオド佐藤は、スリーポイント3本、スティール2本の活躍だった。
「うーん、しかし佐藤の活躍にしては差はあまり縮まらなかったですね」
田中は、39対48というスコアを見ながら言った。
「やはり赤須の速攻が超強力だ。松井玲奈無しでハイスコア勝負は厳しい」

「ナイスプレイっす、亜美菜さん!」
ベンチに戻ってくれる佐藤に、すぐに高柳が水を渡す。
佐藤は息を切らしながら、ありがと、と小さな声で返事をし、それを受け取った。
第2ピリオド、ひたすらに佐藤のミスマッチを狙う相手に対し、何とか7点に抑えるディフェンスで、かなり体力を消耗していた。
「大丈夫か、亜美菜」
同じ2年生の、北原、大家、指原が心配そうに声を掛ける。
「10分休めるから……大丈夫」
その言葉は明らかに空元気だった。

(亜美菜さん、あんなに頑張ってんだぞ……早く戻ってこいよ玲奈)
バッシュのひもを結びなおす珠理奈はベンチで1人下を向いている玲奈を見つめていた。
ギュッと硬くひもを結び、足にバッシュがフィットしたのを確認すると、シューティングをしに立ち上がった。

すると立ち上がってすぐにベンチの方から「玲奈」と誰かの声がした。
声には聞き覚えがあり、今の状況で玲奈に話しかけられるのは1人しかいなかった。
玲奈の元チームメイト平田が玲奈のすぐ隣まで話しかけに来ていた。

「玲奈、いつまでそうしてんの? もうあの事故のことは忘れていいんだよ?」
笑いながら話しかける平田の言葉に玲奈は黙ってうつむいたままだ。
「もう足は大丈夫だって言ってんじゃん。ほら、あたしのせいであんたのチームにまで迷惑かけてるみたいで気持ち悪いからさ」
そう言いながら肩に置かれた平田の手を、玲奈は振り払った。
そして勢いよく立ち上がった。

「もう嫌なんだよ! あんな思いをするのは……1人の選手の人生を変えちゃった気持ち……わかる?」

チームメイトとはいえ、親友とはいえ、事故だったとはいえ。
目の前の1人の選手が大会を諦める原因が自分であることの苦痛。
コートの中で、相手とぶつかる度に思い出される。

「やっぱり、もう私にバスケは出来ない」

玲奈の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
気持ちを吐露したことによる感情的な反応、そして1番の被害者である平田にそれをぶつけている後悔と謝罪の念。
あらゆる感情が、玲奈を襲っていた。

唇をふるわせながら感情を吐き出す玲奈を見つめる平田の表情は、笑っていなかった。
そして、強く右足を床に叩きつけた。
怪我をしている右足をだ。
ドン、という音が響いたが、コート内ではシューティングが行われているため、観客には大して聞こえていない。
近くにいる選手だけに聞こえていた。

「勝手に……勝手にあたしを諦めるな!」

その大きな声は珠理奈にも良く聞こえていた。
おそらく、ベンチ側でシュートを打っていたメンバーには、平田と玲奈のやりとりは聞こえていただろう。

「あたしは、選手として復帰することも全国大会に出場することも、諦めてない! 勝手に選手生命終わったみたいに言うな! あんなんで終わるほど弱くないわ!」

普段は温厚であった平田の強い言葉にを玲奈は何も言えずに聞いていた。

「怪我治すまではとりあえず玲奈に全国の夢を託そうと思ったけど……こんないいチームに支えられてんのに……そんなこと言ってんならもういい」

それだけ言うと、平田は体育館を出て行った。
横顔が一瞬見えた珠理奈には、平田が泣いていたことが分かった。

呆然と立ち尽くす玲奈は、今にも消えてしまいそうだった。
誰も何も言えず、ボールが床とぶつかる音だけが体育館に響いていた。
しかし、そんな玲奈の足元にボールが1つ転がってくる。

「わりい、玲奈。パス」

それは珠理奈のボールだった。
玲奈自身、あれだけの口論を見せてしまっては誰も近づいてこないと正直思っていた。
しかし驚くほどにあっさり、珠理奈のボールが転がってきてしまい、目を丸くした。
お互い、見つめ合い、気まずくなる。
そんな空気を察して、珠理奈が目線を玲奈から外して言った。

「何だその……気にすんなよ。そういうトラウマの1つや2つ誰だってあると思うし」

その言葉を聞いた玲奈は、すぐにボールを拾い珠理奈にパスを出した。
何も言わず、何も反応せず。
不思議そうに見つめる珠理奈に背を向け、玲奈は泣いた。
あんなにも身勝手な自分に、「気にするな」。
自分が情けなくて、仕方がない。
未熟すぎだ。
人前で泣くようなタイプではないと自分で思っているが、そんな姿を晒しても、自分の未熟さには遠く及ばないと思った。
声が出るほど、泣けた。

「……声が出てない! もっと盛り上げろ!」
玲奈が泣いていることを気遣ったのかどうかは分からない。
しかし泣き声をかき消すように、秋元が声を張り上げた。
それに合わせて、疲れている試合のハーフタイムにもかかわらず、他の部員も全力で声を出した。
その様子を見て、1人壁に向かって泣いている選手がいるなんて思う観客は誰もいなかった。

続く

佐藤亜美菜を活躍させたかったものの、させすぎると逆転してしまうことに気付いた結果、微妙な活躍。
相手のエースをミスマッチながら抑えてますよ、くらいの感覚でお願いします。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

更新お疲れ様です!

ああいった感情のぶつけ合いはやっぱり良いですね。

そして、さりげない優しさを見せた才加は、どことなくゴリを感じさせていてとても良かったです。

それではこれからも、更新頑張って下さい!

Re: タイトルなし

>ゆうさん

コメントありがとうございます。
スポーツ物はあんなシーンの繰り返しなのではないかと思っています。
今回のシーンは結構書いてて不安だったので、良かったです。
ゴリだったら、「泣くな」のシーンだったのでしょうか。
これからもよろしくお願いします。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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