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「スラムダンクはできないけれど」第5話

第5話「推し決定」

田中は、少し不機嫌だった。
日曜日という大事な休日に、わざわざ体育館に足を運ばなければならなかったからだ。
そしてその指示を出した斉藤が、遅刻をしたからだ。

バスケットボール雑誌の記者である田中が体育館に足を運ぶ理由は、当然取材である。
インターハイは高校バスケットボールの主要な大会の1つだ。
記事として大きくなるのは当たり前で、その取材が重要であることも田中は分かっていた。
しかし、地区予選の1回戦、2回戦から取材に駆り出されることには納得がいかなかった。
先輩記者の斉藤曰く、「地区予選の初戦を見て、どこが全国で活躍するのかを見極める」とのことだ。
言っている意味は分からなくはないが、田中と斉藤の担当する東京地区は、正直、1強だ。
2位から下は確かに変わるが全国レベルでは大した成績は残せない。
逆に1位はいつも一緒で、全国でもある程度勝ち進む。
どこが全国で活躍するかなんて疑問は必要なくて、その1強である高校を取材すればいいだけの話なのだ。

ベスト4の強豪が出てくるのは、3回戦からで、1回戦、2回戦は良くてもベスト8止まりの高校だ。
全国で活躍するような高校が見つかるわけがない。
そんな田中の話を無視して、斉藤が出した指示は、「都立十桜の試合」だった。
都立高校ながら、毎年悪くない成績を残し、春の大会はベスト8まで残った。

「悪くは無いけど……ベスト8止まりじゃなあ……」
斉藤から事前に受け取っていた春までのデータを見て、呟く。
3年生の2枚の170センチ越えの選手が注目らしい。
公立高校の快進撃、なんて記事が書ければ面白いのだが、流石に難しい。
選手を集めて、練習時間をいくらでも確保できる私立のバスケ強豪校に比べたら、限界を感じる。

試合前のアップが始まる。
やはり十桜の部員は少ない。
多少を背の高い選手が入ったみたいだが、ベンチはもちろん、ベンチに入れなかった選手が応援席を埋めるような高校に比べたら、地味だ。
ベスト8まで進んだだけ快挙だった、と言ってもいいのかもしれない。

不満ばかりが頭を埋め尽くすが、試合を記録するスコアシートを準備する。
さすがに先輩の指示を完全に無視するわけにはいかない。

「うわっ、十桜でけえ」

どこからか聞こえてきたその言葉を鼻で笑う。
確かに170センチの女子は大きいだろうが、全国レベルでは当たり前だ、と。
たった2枚170センチがいるだけでは、驚かない。
そんな田中の心の声が聞こえているのかのように、また声がした。

「2枚どころじゃねえな。6番以外は170以上あるぞ、ありゃ」

ちょうどスタメンを記録するところだったが、その言葉を聞いて、猛スピードでコートに目を移す。
確かに、4人背の高い選手がいる。
4番、5番、は去年からチームの中心で活躍していた選手だ。
6番も春の大会の時点で完全にレギュラーだった。
驚くべきは、10番と11番だ。
春の大会までのデータには載っていない。
つまり、4月から入った1年生である。
弱小高校相手では身長が違いすぎる。まるで子供と大人であった。

(デカい1年が2人も入ったのか)

いきなり驚かされたところで試合がスタートする。
ジャンプボールは余裕で十桜ボールになる。
まずは、5番から面を張った4番にパス。
そのままいとも容易くゴール下を押し込む。
十桜が先制した。

(やっぱり今年も4番5番のコンビが得点源だな)

4番、センター秋元、5番、パワーフォワード宮澤。
ベスト8の立役者とされる2人は、中学時代から同級生で、そのコンビネーションから「ツインタワー」と呼ばれている。
秋元は、176センチとセンターとしては決して身長が高いわけではない。
しかし、その女子離れしたパワーでチームを引っ張ってきた。
宮澤は、登録身長が174センチとされているが、明らかに背が伸びている。
秋元と変わらぬ身長で、鋭いカットイン、ミドルシュート、ゴール下、全てこなす。
この2人の選手は、全国レベルでもおかしくない。

インサイドで圧勝することは分かっている。
あとはどれだけ十桜に攻撃力があるかだ。
(さあて、何点獲るのか)
しかし、田中の期待は大きく外れ、ある意味裏切られることとなった。


田中には、悪いことをしたと思っている。
でも少し電車の時間を読み違えただけだ。
まだ試合は始まって間もないはず。
斉藤は、走ったことにより、薄く汗をかきながら体育館の扉を開けた。
田中がすぐに見え、手を振っている。
試合はちょうどピリオドごとのインターバルだった。

「斉藤さん、凄いですよ」

怒っているだろう、という斉藤の予想とは反して田中は別のことで興奮していた。
得点板に目をやる。
32対7、という負けている方からしたら絶望的なスコアが刻まれている。
しかし、十桜がこれだけ圧勝することは分かっていたことだ。
むしろ前半を終えて32点という得点は少ない。

「何だよ、もう前半終わったのか」
「違うんですよ! 1年が凄いんです!」

田中は興奮していて、何から話していいのか分からない様子だった。
下を向き、頭の中を整理する仕草が見られた。

「まず、前半はまだ終わってないです」

何を言っているのかよく分からなかった。
タイマーは残りの休憩時間を示し、その時間は0へと近づいている。
どう見てもちょうどピリオドが終わったところだ。

「何を言ってる?」
斉藤は、自分の目に間違いがないことを確認して、聞き返した。
田中はそんな斉藤の言葉に自慢げに笑みを浮かべながら言った。

「これ、第1ピリオドですよ」

インターバルが終了し選手が出てくる。
残り3ピリオド、田中と全く同じように、斉藤も驚かされることとなった。


「強かったですね、十桜」

田中と斉藤は、体育館を後にし、駅へ向かうところだった。
結局、都立十桜は、100点ゲームで圧勝した。
春ベスト8の強豪ならば、それは当たり前かもしれない。
しかしそれでもその内容には大きな意味があった。

「10番と11番。あの1年生2人の存在で、まるで別のチームになった」

10番、松井珠理奈、11番、松井玲奈。
偶然にも同じ苗字を持つ1年生2人が、先ほどの試合、それぞれ35得点、29得点と大活躍した。

「まず、11番のスリーポイント。あれは凄いですよ」

ディフェンスが少しでも間合いを開ければ、躊躇なく打つ。
かなりのクイックリリースだが、フォームは綺麗で、高確率で決めていた。
あのシュートをモノにしているなら、相当な武器になる。

「10番は早かったですね。ボディーバランスも良かったし、1対1かなり強いですよ」

松井玲奈とは打って変わって、ドライブの選手。
ディフェンスの間を切り裂いて、ファウルを貰う。
それだけかと思いきや、フェイドアウェイなどの外のプレーも器用にこなしていた。

秋元と宮澤は全国レベルの選手。
そして新たな得点源の1年生2人も、化けるかもしれない。
そしたら、かなり力のあるチームになる。

「決まりだ」

斉藤は呟いた。
何がですか、と聞き返す田中に、次の試合のスコアシートを渡す。

「俺達は今大会、都立十桜を推す。いいな」

試合を見て田中も何か感じ取ったのか、「はい」という返事がすぐに返ってきた。

続く

「これでもAKB小説だよ」と言い張るために「推し」という言葉を使ったことは言うまでもないです。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Secre

すごいこの小説面白いです\(^-^)/
最後まで頑張って下さい(*・ω・)/

Re: タイトルなし

>ちゅうさん

コメントありがとうございます。
完結できるように頑張ります。
プロフィール

ウロマム

Author:ウロマム
どうも、ウロマムです。
AKB48さんの小説を書いてます。

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